SKID ROW『THE GANG'S ALL HERE』(2022)
2022年10月14日にリリースされたSKID ROWの6thアルバム。
新録音源で構成された2枚のEP……『UNITED WORLD REBELLION: CHAPTER ONE』(2013年)および『RISE OF THE DAMNATION ARMY - UNITED WORLD REBELLION: CHAPTER TWO』(2014年)以来ということで、実に8年ぶりの新作になるわけですが、オリジナルアルバムとなると『REVOLUTIONS PER MINUTE』(2006年)以来なわけで、なんと16年ぶり(笑)。時空が歪みます。
セバスチャン・バック(Vo)脱退後、すべてのスタジオ音源で歌唱してきたジョニー・ソーリンガーが2015年に脱退し(2021年急逝。R.I.P.)、その後はTNTのトニー・ハーネルが一時的に歌ったり、元DRAGONFORCEのZPサートがサポートから正規メンバーに昇格してと、激動の期間を過ごしてきたSKID ROWでしたが、今年の春にZPサートが突如脱退。代わりに加入したのが、2020年にH.E.A.Tを脱退したエリック・グロンウォールだというのですから、驚きです。エリック、スウェーデン版『American Idol』に出場し、SKID ROWの「18 And Life」を歌いその存在感を見事にアピールした人ですし、SKID ROWに合わないわけがない。バズの復帰が絶望的な今、ベスト中のベストな選択ではないでしょうか。
このアルバムに収録された楽曲はエリックが加入する前に完成していたものばかりで、本作からのリード曲「The Gang's All Here」が3月下旬にリリースされていることを考えると、彼がバンドに加わったのはもっと早いタイミングだったことが伺えます。なんなら、ZPサートは2021年にはバンドから離れていたのではないでしょうか。
そんなわけで、16年ぶりの新作。我々が想像する以上にSKID ROWしています。エリックの歌声や歌唱スタイルも要所要所でバズを彷彿とさせるのですが、それ以上に注目すべきなのが良質な楽曲の数々。レイチェル・ボラン(B)やデイヴ・スネイク・セイボ(G)、スコッティ・ヒル(G)といった初期からの面々が長い時間をかけて煮詰めた楽曲群は、まるで1stアルバム『SKID ROW』(1989年)の続編として制作されたんじゃないかと思えるほどに、“あの頃”がフラッシュバックしてくる。かつ、全米1位を獲得した2ndアルバム『SLAVE TO THE GRIND』(1991年)のテイストも程よく散りばめられており、多くのファンが望むSKID ROW像が完璧な形で表現されている。80年代ヘアメタルを愛好するリスナーにとって、絶対に嫌いになれない1枚だと断言しておきます。
オープニングトラック「Hello Or High Water」やリード曲「The Gang's All Here」、そして文字どおりの復活宣言となる「Resurrected」といった王道パワーチューンもあれば、「Time Bomb」や「Nowhere Fast」「Tear It Down」みたいなヘヴィ路線もあるし、「Not Dead Yet」を筆頭とするパンキッシュなスピードチューン、「October's Song」といった『SLAVE TO THE GRIND』路線のブルージーなパワーバラードもあり、足りないのは「18 And Life」みたいな正統派パワーバラードのみ。今のSKID ROWが許せるバラードは「October's Song」までということなんでしょう。
もし点数をつけるなら、96点くらいの高得点をあげたくなるほど完全無欠のハードロックアルバム。新しさや革新的な要素を求める方には前時代的なサウンドかもしれませんが、何周かまわって普遍性が強まった本作は奇跡的な1枚かもしれません。いやあ、お見事。
▼SKID ROW『THE GANG'S ALL HERE』
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