WARDRUNA『KVITRAVN』(2021)
2021年1月22日にリリースされたWARDRUNAの5thアルバム。現時点で日本盤未発売。
ほぼアイナルのソロアルバム形態で制作された前作『SKALD』(2018年)を経て、新たにメジャーのSony Music / Columbia Recordsと契約したWARDRUNA。本来ならメジャー第1弾となる本作を2020年6月に発売予定でしたが、ご存知のとおりコロナ禍の影響で半年以上もの遅延を経てようやく手元に届けられました。
アートワークが初期3作を彷彿とさせるものがあることから、やはり前作『SKALD』は特殊な1枚だったことが伺えます。アルバムタイトルの『KVITRAVN』は“白いカラス(=White Raven)”を意味するワードとのことで、ジャケットの黒はカラスの羽にて構成されています。過去の作品でも北欧に伝わる神話や土着的民謡の伝承をテーマに掲げてきた彼らですが、本作でも魔術や霊魂、北欧神話や概念などをもとに楽曲制作されています。
ノルディック・フォークやダーク・フォーク、ダーク・アンビエントを下地に、北欧に古くから伝わる古楽器を用いたアレンジで密教的な世界観を構築するスタイルは、過去の作品をそのまま踏襲したもので、彼らの作品に一度でも触れたことがある方なら一発で気にいる内容だと思います。
とはいいながら、日本デビュー作となった前々作『RUNALJOD - RAGNAROK』(2016年)あたりと比べると重厚さや冷徹さが若干薄れ、適度な温もりが伝わる音使い/アレンジになっている印象もあり、そのへんは「創生」「生長」「終末」というサイクルを描いたコンセプチュアルな初期三部作との違いかなと。聴きやすさという点においては、今回の新作のほうが初心者にも最適なんじゃないでしょうか。
実際、前々作までの作品は流し聴きするにはちょっとヘヴィすぎて、個人的には気構えないと触れられない世界だったんですが、新作はもうちょっとラフに接することができる印象が強く。ブラックメタル経由のフォーク/トラッド作品という後ろ盾が無意味なほどに、幅広いリスナーに親しんでもらいたい1枚に仕上がっていると思います。
こういった音楽は、歌詞に込められた歴史的背景を踏まえながら対訳をじっくり味わいたいところ。欧州ソニーからのリリースという大きなバックアップを受けた作品だけに、ぜひ日本盤のリリースにも期待したいところです。
▼WARDRUNA『KVITRAVN』
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