WHITE STONES『KUARAHY』(2020)
2020年3月上旬に発表されたWHITE STONESの1stアルバム。日本盤は約1ヶ月遅れ、同年4月上旬にリリース予定です。
このバンドはOPETHのベーシスト、マーティン・メンデスによるソロ・プロジェクトで、メンバーは彼のほかエロイ・ボウシェリー(Vo)、ジョルディ・ファッレ(Dr)という布陣。マーティンはベースのほか、ギターもプレイしており、ソロパートのみゲストとしてOPETHのフレドリック・オーケソンが担当しています(「The One」のみBLOODBATHやKATATONIAのメンバーだったパー・エリクソンがプレイ)。
デスメタル期であった1997年にOPETH加入という、ミカエル・オーカーフェスト(Vo, G)に次ぐバンド在籍歴を持つマーティン。ウルグアイ出身の彼はOPETH加入前もデスメタルバンドに在籍しており、当時はボーカルも担当していたんだとか。そんな経歴の持ち主の彼が、OPETHの12thアルバム『SORCERESS』(2016年)に伴うツアーを終えたあと、遊びでデスメタル・ナンバーを1曲制作。その勢いで数曲完成させると、当初はそれらを自身で歌うプロジェクトとしてこのアルバム制作に取り掛かり始めたそうです。
が、スペインのブラックメタル/デスメタルバンドVIDRES A LA SANGのシンガーであるエロイと出会ったことで、考えを一変。彼にボーカルのすべてを任せることで、WHITE STONESの大枠が完成することになります。
本作で展開されているサウンドは、スラッシュメタルやスピードメタルの延長線上にあるデスメタルではなく、ミドルテンポ中心のドゥーミーでグルーヴィーなスタイルがメイン。ギターも思ったより歪んでおらず、そういった要素が80年代後半以降のデスメタルというよりも、さらにルーツとなるBLACK SABBATHやその周辺の“プログレッシヴな展開を信条とした、ダークな嗜好のハードロックバンド”を彷彿とさせるものとなっています。
とはいえ、エロイのボーカルはデスメタルそのもので、容赦ないグロウルが全編で展開されています。無骨なバンドアンサンブルはときにプログレッシヴな展開を見せ、それらは2000年代前半のOPETHにも通ずるものがあるのではないでしょうか。「Rusty Shell」や「Guyra」「Ashes」などで聴けるツーバス連打で突き進むパートでは、まさにそういった風景が脳内に投影されますしね。
そんな楽曲の上に、フレドリックの流麗なギターソロが乗ると世界観が一変。この切り替わりの気持ち良さがハンパないんですよ。また、アームプレイを多用したパーのプレイもなかなかのものがあり、ゴツゴツしたサウンドとの対比が非常に面白いです。
1曲1曲が4分前後というコンパクトさも本作の聴きやすさに拍車をかけており、全10曲41分があっという間に感じられるはず。OPETHが包括するいち要素をピックアップし、別の形に仕立て上げたと捉えることもできる本作は、単なるデスメタル・アルバムとして以上の意味を持つ重要な1枚と言えるでしょう。
▼WHITE STONES『KUARAHY』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3)