STRAPPING YOUNG LAD『HEAVY AS A REALLY HEAVY THING』(1995)
デヴィン・タウンゼンド率いるバンド/プロジェクト・STRAPPING YOUNG LADの1stアルバム。海外では1995年4月、日本では同年7月にリリースされました。
スティーヴ・ヴァイとのプロジェクトVAI、THE WiLDHEARTSのサポート・ギタリストを経てようやくたどり着いた、デヴィンのリーダー・プロジェクト。VAIの時点でもその奇才ぶりは相当発揮していたと思いますが、実はあんなもんじゃなかった!ということを、このアルバムを通じて嫌というほど思い知らされることになります。
レコーディングではデヴィンはボーカル、ギター、キーボード、プログラミングのみならず、ミックスやエディットまで担当。ギターの一部をプロジェクト終了までデヴィンとタッグを組むことになるジェド・サイモン、ドラムをエイドリアン・ホワイトという、その後正式メンバーとなる布陣が参加しております。
『超怒級怒濤重低爆音』と名付けられた邦題に、聴く前から度肝を抜かれるかと思いますが、いざ聴いてみればそれも納得のタイトルだと気づくはずです。なんでしょうね、この爆音の壁(笑)。フィル・スペクターが手がけるサウンドに対して“Wall of Sound”なんて呼ばれていますが、さしずめ本作で表現されているのは“Wall of Heavy & Loud Sound”といったところでしょうか。オープニングの「S.Y.L.」からして、音の隙間が一切見当たらない爆音に次ぐ爆音の嵐で、そこにどこかサイケデリックでスペーシーなボーカルが乗る。むちゃくちゃヘヴィなくせして、しっかりキャッチーさが備わっているんですよね。
だから、爆音で鳴らし続けていても苦痛じゃない(いや、この手の音楽が苦手な人には苦痛以外の何ものでもないでしょうけど。苦笑)。かつ、曲と曲のつなぎが自然なので(要は音の切れ目がない)、頭から数曲はまるで組曲のようにも感じられるのです。
VAI時代からもともとギタリストとして自身をアピールしたかったデヴィン、このアルバムではものすごい音圧の“ディストーション・ギターの壁”を作っています。しかも、軸になるリズム(ドラム)もブラストビート的なすごいテンション&BPMで叩き続ける。「Cod Metal King」のように打ち込みビートを用いたナンバーも用意されていますが、これなんて“NINE INCH NAILSがデスメタルを演奏した”かのような仕上がりですし。演奏もボーカルも終始カオスの塊なのに、それでいて聴き手を飽きさせないキャッチーなメロディも随所に散りばめられている。なんでしょうね、この絶妙なバランスは。今の耳で聴いても十分にヘヴィでキャッチーな、強烈なメタルアルバムです。
デヴィン・タウンゼンドという男の才能が完璧な形で凝縮された本作。実は、その才能はさらに多岐にわたることを、その後展開される数々のプロジェクトでさらに思い知らされるわけですが、それはまた別の機会に。
なお、日本盤や海外リイシュー盤にはJUDAS PRIESTのカバー「Exciter」などを追加収録。同曲はストリーミングでも聴くことができるので、アルバム同様に『UNLEASHED IN THE EAST』(1979年)でのライブバージョンをさらにアグレッシヴにアレンジしたカバーをお楽しみください。
▼STRAPPING YOUNG LAD『HEAVY AS A REALLY HEAVY THING』
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