I MOTHER EARTH『DIG』(1993)
1993年8月にリリースされたI MOTHER EARTHの1stアルバム。
I MOTHER EARTHはカナダ出身の4人組オルタナティヴロックバンド。本作はCapitol Recordsからのメジャーデビュー作で、日本でも当時「Rain Will Fall」のMVが伊藤政則氏の番組で紹介され、一部で注目を集めました。
グランジ・ムーズメント最盛期と言える1992〜93年にかけて、シアトルの外側からさまざまなポスト・グランジバンドが青田買いされましたが、彼らもその流れで世に広められた印象が強い。なので、グランジ視点で解釈すると「PEARL JAMの流れを汲む土着性の強いバンド」と捉えることもできるでしょう。
しかし、彼らの魅力はそういったリフ主体のシンプルなギターロックとは異なるところにあると思っていて、例えばアルバムでは「Rain Will Fall」の次に収録されている「So Gently We Go」で聴けるムーディーかつサイケデリック色の強いサウンドスケープからは、むしろ『BLOOD SUGAR SEX MAGIK』(1991年)あたりでRED HOT CHILI PEPPERSが展開させたスタイルとの共通点を見つけることができるはずです。
そういう見方をすれば、先の「Rain Will Fall」で聴くことができるギターリフ/カッティングもグランジというよりも、ファンクを通過したそれと捉えることができるはず。また、SOUNDGARDENあたりのサイケデリアとも一線を画するものがあり、当時ひと足先にブレイクしていたBLIND MELONあたりと同じ枠で捉えるべきバンド/アルバムではないかと気づくことでしょう。
実はこのバンド、当時にグランジシーンにおけるオルタナティヴな存在だったのかなと。かつ、BLIND MELONほどの突き抜けたポップさが足りなかったこともあり、あの時代で多くの人に見つけられないまま見過ごされてしまった。ある意味“早すぎたバンド”だったのかもしれませんね。
ワンコードで引っ張る曲構成や要所要所でパーカッションやハモンドB3オルガンを強調したアレンジ、それにより1曲5分6分超えは当たり前で、ラストの「The Universe In You」なんて8分を超えてしまう。トータル12曲で68分というトータルランニングはアナログ時代なら2枚組相当の濃さですし、一見さんにはちょっとハードルが高い内容かもしれません。しかし、レッチリほど黒人音楽からの影響をそのまま出そうとせず、あくまで白人的観点で表現したサイケデリックファンクロックの数々は、リリースから30年近くを経た今聴いても新鮮に響くはずです。
CDはすでに状態ですが、中古ショップでこまめに探せばすぐに見つけられることでしょう。また、ストリーミングサービスでは過去のカタログから本作のみ聴くことができるので、もし本作で彼らにハマった方がいたら続く2ndアルバム『SCENERY AND FISH』(1996年)もぜひ聴いてほしいな。プログレ色も強まった(RUSHのアレックス・ライフソンもゲスト参加)、よりドープな内容に仕上がっているので、間違いなく“こっち側”に戻ってこられなくなるはずなので(笑)。
▼I MOTHER EARTH『DIG』
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