SLEEPING WITH SIRENS『WITH EARS TO SEE AND EYES TO HEAR』(2010)
2010年3月にリリースされたSLEEPING WITH SIRENSの1stアルバム。日本盤未発売。
アメリカ・フロリダ州オーランド出身の5人組(現在は4人組)スクリーモ/ポストハードコアバンドのSLEEPING WITH SIRENSは、全米3位を記録した3作目の『FEEL』(2013年)やEpitaph移籍後の4作目『MADNESS』(2015年)が代表作になるのかもしれませんが、原点と言える本作もなかなか捨てがたい魅力満載の1枚ではないでしょうか。
適度なデジタル処理を擁するサウンドは、ピコリーモやエレクトロニコアと言い切るには少々物足りなさを感じますし、それよりは同じ年の秋に発表されることになるBRING ME THE HORIZONの『THERE IS A HELL BELIEVE ME I'VE SEEN IT. THERE IS A HEAVEN LET'S KEEP IT A SECRET.』(2010年)の手法に近い印象を受けます。2000年代のバンドらしくブレイクダウンを含む曲構成からは手慣れたものを感じますし、重心高めのスクリームもピコピコシンセの音色に不思議とマッチしている。かつ、フロントマンのクリーンボーカルのハイトーンぶりが中性的で、実は日本人の完成にフィットするものではないかという魅力も伝わる。
楽曲自体も非常にメロウなものが多く、タイトルからして素晴らしいオープニングトラック「If I'm James Dean, You're Audrey Hepburn」を筆頭としたメタルコア的なものからシンフォニックなミディアムナンバー「Let Love Bleed Red」、デジタル色濃厚な「Don't Fall Asleep At The Helm」とそれに続くアンセミックなタイトルトラック「With Ears To See, And Eyes To Hear」など、緩急に富んだアルバム構成で、楽曲の1つひとつがかなり個性的。そこにケリン・クイン(Vo, Key)という唯一無二のボーカリストの声が乗ることで、ほかの同系統バンドと一線を画する存在感を強めている。そりゃあデビュー作の時点にして早くもブレイクの可能性を感じさせるはずです(しかも、名門Rise Recordsからのデビューですからね)。
彼らの国内盤リリースは5作目の『GOSSIP』(2017年)まで待たねばなりませんが、この頃から日本人好みの音をほぼ完成させていたんですね。かつ、ケリンのルックスも男前ですし。初来日は2015年の『MADNESS』リリース後、ONE OK ROCKの幕張公演オープニングアクトとしてでしたが、この組み合わせもなるほどと納得できるものがあります。全10曲で31分というコンパクトな内容なので、腹八分目なボリュームで最後までスルッと聴けてしまうはず。ここで「もっと!」と思った方は、ぜひ2作目、3作目と聴き進めて彼らの進化ぶりを確かめてみてはどうでしょう。その意味でも、この原点から聴き始めるのは大切かなと思います。
▼SLEEPING WITH SIRENS『WITH EARS TO SEE AND EYES TO HEAR』
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