作品のテイスト、およびオープニング曲「The Seperation Of HAQQ From Hael」というタイトルから、今作が前作『H.A.Q.Q.』の続編、もしくは対となるような作品であることは想像に難しくありません。ブラックゲイズをベースにしつつも、デジタルエフェクトとストリングス&ブラスといった生楽器を並列したサウンドメイクはまさに前作の延長線上にあるもの。ですが、今作はアバンギャルドさと宗教音楽的な“癒し”効果が前作以上の広がりを見せており、そのタガの外れた感覚(それでいて整合感も備わっている)は、ハンターが自己解放を遂げた結果でもあるのかな……というのはこじつけでしょうか?
序盤はインストゥルメンタル中心の構成で、中盤以降からブラックゲイズ色が徐々に増していき、それに伴うようにアバンギャルドさにも磨きがかかっていく。特に大半の楽曲がシームレスになっている流れはどこか組曲のようにも感じられる。それは、特に2曲目以降の「OIOION's Birth」「Lonely OIOION」や「The Fall Of SIHEYMN」「SIHEYMN's Lament」と2曲ペアになったタイトルからも推測は難しくありません。
かつ、終盤には14分超えの大作「Appartion Of The Eternal Church」でクライマックスを迎える。この曲で展開されるアグレッションと美しさの共存は、まさにこのバンドの真骨頂と呼べるもので、KING CRIMSONを筆頭とするかつてのプログレッシヴロックが果たした役割を現代的に昇華させ、さらに数歩前進されたものと受け取ることができます。美しいったらありゃしない。
どこか残虐性を孕みながらも、全体を覆う上品さ、気高さはクラシック音楽やオペラ音楽などとの共通点も見出せるし、先の「Appartion Of The Eternal Church」のドラマチックさからはまさにそういった音楽と共通のテイストが見つけられることでしょう。だからこそ、アルバムラストを飾る「The Armstice」の、なんとなく悲哀に満ちた空気感からはエピローグと呼ぶにふさわしいものさえ伝わってくるのです。