MEW『FRENGERS』(2003)
2003年4月7日にリリースされたMEWの3rdアルバム。日本盤は同年10月22日発売。
MEWは1995年に結成されたデンマーク出身のロックバンド。結成当時のメンバーはヨーナス・ビエーレ(Vo, G)、ボウ・マドセン(G/2015年脱退)、ヨハン・ウォーラート(B/現在はH.E.R.O.と掛け持ち)、スィラス・グレイ(Dr)の4人で、1997年に1stアルバム『A TRIUMPH FOR MAN』にて本国デビューを果たします。
日本デビュー作となったこの『FRENGERS』はEpic Recordsと契約して最初の作品(前作から引き続き、自主レーベルEvil Officeと併記)。本国では最高2位を記録しましたが、本格的な海外デビュー作ということもあってノルウェーでは6位、フィンランドでは36位と北欧諸国でもランクインしたほか、イギリスでも最高102位という数字を残しています。
Sony系列の手腕もあり、プロデューサーにリッチ・コスティ(SIGUR ROS、MUSE、BIFFY CLYROなど)を迎えて制作。全10曲中6曲が過去2作からの再レコーディングでしたが、海外ではほぼ無名だったこともありこの試み自体はまったく問題なし。むしろ、海外に向けた名刺がわりの1枚としては最適な内容ではないかと思います。
オープニングを飾る「Am I Wry? No」を筆頭に、往年のプログロックを下地にしつつもポストロックやオルタナティヴロック、シューゲイザー、あるいはハードロックの手法をバランスよく配合した北欧のバンドらしくひんやりしたアレンジに、透明感の強いヨーナスのボーカルが乗ることにより独特の緊張感を生み出している。かと思えば、「Symmetry」や「Behind The Drapes」のように伸びやかな楽曲も存在し、その緩急に飛んだ楽曲群で聴き手を最後まで惹き付け続けます。
本作リリース当時、僕はこのバンドを新たなポストロック勢というよりは、MUSEなどのような“オルタナ側からHR/HMシーンへの回答”あるいは“21世紀ならではのHR/HMの新解釈”と捉えていた記憶があります。それこそ時期的にも、THE MARS VOLTAなどと同じ枠で捉えていたような気もしますし、「MUSEほどヘヴィではないし、MANSUNほど奇妙ではないけど、こういう表現もアリだよね」と好意的に受け入れてヘビロテしていたような……とにかく好きな1枚であったことに間違いありません。
また、「Symmetry」や「Her Voice Is Beyond Her Years」のように女性ボーカルを効果的にフィーチャーしたアレンジでは、上に挙げたバンドとは異なる威力を発揮していましたし、ピアノやオルガン、ブラスなどを取り入れつつ音響系的な空気も漂わせている点からはHR/HM勢にはない個性が伝わりました(あくまでHR/HM観点からの話ね)。
今振り返ると、この頃の自分はオーソドックスなヘヴィメタルに対して若干の苦手意識(というか嫌悪感かな)を持ち始めていた時期で、新しい音を求めていたのかもしれません。そういった意味では、MEWは僕にとってかなりど真ん中に近いものがあり、このアルバムで表現されている楽曲/音はストレートに響いたわけです。
来年でリリースから20周年ですが、サウンドや表現、手法など含めまったく古びていない本作、オルタナ経由のメタルが何周かした今こそ再評価すべき傑作であり、HR/HMを中心に聴く層に触れていただきたいなと。ヨハンのH.E.R.O.加入もあり、今がそのタイミングではないでしょうか。
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