AUGUST BURNS RED『DEATH BELOW』(2023)
2023年3月24日にリリースされたAUGUST BURNS REDの10thアルバム。日本盤未発売。
前作『GUARDIANS』(2020年)から3年ぶりに発表された本作は、10枚目のスタジオアルバムというだけではなく、結成20周年のタイミングに届けられる節目の1枚。メタルコア/ポストハードコア専門レーベルのSharpTone Records移籍第1弾作品でもあり、お馴染みのプロデューサー陣(カーソン・スロヴァク&グラント・マクファーランド)とともに制作されました。
冒頭に2分前後のイントロダクション「Premonition」で緊張感を高めたかと思うと、そのまま矢継ぎ早に「The Cleansing」へと突入する流れは非常にドラマチック。かつ、その「The Cleansing」が約8分にもおよぶエピカルな作風で、従来の彼ららしさを残しつつも劇的なアレンジで聴き手を惹きつけます。さらにそこから、ジェシー・リーチ(Vo/KILLSWITCH ENGAGE、TIMES OF GRACE)をフィーチャーした「Ancestry」へと切れ目なしでなだれ込む。なにこれ、カッコいいったらありゃしない。
このバンドらしいヘヴィさや疾走感をしっかり保ちつつ、適度なドラマチックさで緩急を作り上げる構成は、どこかコンセプトアルバムのようにも感じられる。特にアルバム前半の畳みかけは圧巻で、ジェイソン・リチャードソン(G/ex. BORN OF OSIRIS、ex. CHELSEA GRIN)のテクニカルなプレイをフィーチャーした「Tightrope」からカオティックな「Fool's Gold In The Bear Trap」への流れは絶品の一言。後者は序盤のムーディーさから後半一気に捲し立てる攻撃的なアレンジに、鳥肌が立ちまくりです。
その後も曲間ほぼゼロで「Backfire」へとつなげ、緊張感を緩めることなくアルバムは進行。グルーヴィーな「Revival」を終えるとようやく静寂が訪れ、1分半程度のSE「Sevink」を境にアルバムはクライマックスへと突入します。パワフルな「Dark Divide」や「Deadbolt」で独立した世界を構築しつつ、終盤はダーク&ヘヴィな「The Abyss」、そして再び8分前後の長尺曲「Reckoning」で劇的なエンディングを迎えます。なお、前者にはERRAのJT・ケイヴィー(Vo)、後者にはUNDERØATHのスペンサー・チェンバーレイン(Vo)がゲストとして華を添えています。
M-1「Premonition」からM-7「Revival」までがほぼ組曲のような構成で圧倒されるも、「Sevink」を挟んで展開される終盤4曲はそれぞれ独立した小世界といった印象で、前半〜中盤ほどの緊張感は得られないかもしれません。そこのみがマイナスポイントですが、トータルではかなり力の入った作品集と受け取ることができます。ゲスト陣もここ20年のUSメタルコア界隈のスター選手が揃った感がありますし、そういった点でもひとつの大きな節目の作品であることが伝わります。初〜中期とはまた頃なる、円熟期にふさわしい充実の1枚ではないでしょうか。
▼AUGUST BURNS RED『DEATH BELOW』
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