SILVERSTEIN『A BEAUTIFUL PLACE TO DROWN』(2020)
2020年3月初頭にリリースされたSILVERSTEINの10thアルバム。日本盤未発売。
SILVERSTEINは今年で結成20周年を迎える、カナダ・オンタリオ州出身の5人組ポストハードコア・バンド。キャリア的にはもはや大御所の部類に入り、2006年には初来日を果たしています。
Victory Records、Hopeless Records、Rise Rocordsとポストハードコア/スクリーモ系の名門レーベルを渡り歩いてきた彼らですが、本作から新たにオーストラリアのパンク/メタルコアレーベルUNFDと契約。流通や宣伝の影響もあったのか、これまで全米トップ50入りすることの多かった彼らも、今作では最高122位と低迷。新型コロナウイルスの影響も多少なりともあるのかな。
昨日のDANCE GAVIN DANCEに続き、「名前はよく知っているけどアルバムにも一度も触れてこなかったバンド」シリーズ第2弾。過去の諸作品には触れず、最新作を聴いて好きか否かを確かめているのですが、SILVERSTEINはさすが大御所といいますか1曲1曲の安定感が強いですね。この手のサウンドで20年も活動していると、あるタイミングでスクリームを排除してしまったり、スピードやヘヴィさを抑え始めたりするものですが、本作は適度なスピード感も重さも備わっており、メロディもしっかり練り込まれ要所要所にスクリームも取り入れている。痒いところに手が届くアルバムとでも言えばいいのかな。ベテランならではのバランスに優れた1枚だと思いました。
ゴリゴリというよりはしなやかさが目立つサウンドメイクは、「All On Me」のようにエレクトロの要素を取り入れるなどモダンさも垣間見え、ちゃんと時代と向き合っていることも伺える(この曲、途中でサックスソロがフィーチャーされているのにはクスッとしてしまいましたが)。こだわり続け守る部分と、時代の流れを読む柔軟さのバランスがしっかり取れているからこそ、ここまで長く続いているんでしょうね。そんなことを強く感じました。
また、本作の興味深いポイントは多彩なゲストをフィーチャーした楽曲が多いこと。オープニングを飾る「Bad Habits」には同じカナダ出身のインスト・プログレメタルバンドINTERVALSが参加。続く「Burn It Down」にはBEARTOOTHのケイリブ・ショーモ(Vo)、「Infinite」にはUNDEROATHのアーロン・ギレスピー(Vo, Dr)、「Madness」には女性ラッパーのプリンセス・ノキア、「Take What You Give」にはSIMPLE PLANのピエール・ブーヴィエ(Vo)がそれぞれフィーチャリング・シンガーとして名を連ねています。20周年&10作目のお祝いにふさわしい豪華さですね。もちろん、こういったゲストがなくても楽曲自体の出来はどれも優れているので、ちょっとしたおまけ感覚で(あるいはスパイスとして)楽しめたら最高ですよね。
全体を覆うキャッチーさと“ウェル・メイド”な安定感もあってか、ポストハードコアというよりはエモやメロディックパンクのカラーが強いアルバムかな。全12曲で37分というトータルランニングもあって、非常に聴きやすい内容だと思います。ほかのアルバムを聴いていない分際で断言するのも気が引けますが、このバンドの入門編に打ってつけな1枚ではないでしょうか。それくらい初心者にも優しい内容だと思います。
▼SILVERSTEIN『A BEAUTIFUL PLACE TO DROWN』
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