SILVERSTEIN『MISERY MADE ME』(2022)
2022年5月6日にリリースされたSILVERSTEINの11thアルバム。日本盤未発売。
オリジナルアルバムとしては、前作『A BEAUTIFUL PLACE TO DROWN』(2020年)から2年2か月ぶりの新作。ですが、ここ最近の彼らは2019年春の初期楽曲のリテイクアルバム『REDUX: THE FIRST TEN YEARS』、2020年11月にリテイクアルバム第2弾『REDUX II』を自主レーベルから発表するなど、ほぼ“年に1枚”レベルでの新作りリースが続いています。ベテランのくせして生真面目なんですね。
さて、そんな彼らのオリジナル新作ですが、前作がコロナ禍突入タイミングのリリース(つまり、コロナ前に制作されたもの)だったのに対し、今作はコロナ禍の渦中に取り組んだ1枚。「惨めさが俺を作った」なんてネガティブど真ん中なタイトルが冠されたことからも、ダークなテーマが根底に流れていることが窺えます。
プロデュースは、前作から引き続きサム・グアイアナ(LIKE PACIFIC、BETWEEN YOU AND ME、WE WERE SHARKSなど)が担当。前作同様に多数のゲストを迎えており、「Die Alone」には同郷のCOMEBACK KIDからアンドリュー・ノイフェルド(Vo)、「Cold Blood」でシンガーソングライターのトレヴァー・ダニエル、「Slow Motion」にはTHE DEVIL WEARS PRADAのマイク・フラニカ(Vo)、そして「Live Like This」にはラッパー/シンガーソングライターのナッシング・ノーホェアが参加し、それぞれの曲に華を添えています。
サウンド的には過去のスタイルを踏襲した集大成的に感じられるもので、これまでの彼らの作品に少なからず興味を持ったことがあるリスナーならどこかしら引っかかる要素が感じられるはず。アルバムを再生すると、アンセミックな「Our Song」やアンドリュー・ノイフェルドをフィーチャーしたアグレッシヴな「Die Alone」の緩急に富んだオープニングに、まず心を奪われずことでしょう。適度にスクリームをフィーチャーしつつ、しっかり耳に残るメロディがどの曲にも用意され、モダンにバージョンアップされたバンドアンサンブルと重なることで安定感の強いポストハードコア/スクリーモサウンドを思う存分味わえる。ある意味では優等生的な作風ではあるものの、ここまでバランス感に優れた楽曲群をコンパクトにまとめることは至難の業。そういった意味でも、本作がどれだけ優れたアルバムかご理解いただけるはずです。
アグレッシヴなナンバーのみならず、「Cold Blood」や「Misery」のようなバラードタイプの楽曲も適度に配置しており、さらに「The Altar/Mary」のようにエレクトロを通過した実験性の高い楽曲も用意。この手のバンドに求める要素がすべて揃った、これぞ「痒いところに手が届く」1枚ではないでしょうか。全11曲で約37分という尺も程よいものがあり、気づくと何度もリピートしているし、かつ飽きが来ない。時代に求められた1枚ではないかもしれませんが、それでもこういうアルバムを求めているリスナーは世界中に一定数存在する。本作はそういったリスナーを心の底から満足させてくれる、エヴァーグリーンなメタルアルバムではないでしょうか。
前作のレビューで、『A BEAUTIFUL PLACE TO DROWN』に対して「このバンドの入門編に打ってつけな1枚ではないでしょうか。それくらい初心者にも優しい内容だと思います」とコメントしましたが、続くこの新作もそういった役割を十分に果たすことでしょう。最新作が常に入門編にふさわしいなんて、最高にも程がありますよ。
▼SILVERSTEIN『MISERY MADE ME』
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