2019年12月27日という年の瀬に、突如配信リリースされたBRING ME THE HORIZONのニューEP『Music to listen to-dance to-blaze to-pray to-feed to-sleep to-talk to-grind to-trip to-breathe to-help to-hurt to-scroll to-roll to-love to-hate to-learn Too-plot to-play to-be to-feel to-breed to-sweat to-dream to-hide to-live to-die to-GO TO』(タイトル長いので入りきらない。笑)。今のところフィジカル(CD、アナログ盤)での発売予定なし。
今年1月に初の全英1位を獲得した最新アルバム『amo』(2019年)を発表したBMTH。そもそも、その前年2018年夏から同作に含まれる新曲「Mantra」からアクションは始まっていたわけで、『amo』リリース以降もアルバム収録曲のリミックストラックの配信、夏にはSpotify限定でスタジオライブ音源『Spotify Singles』があったり、11月にはPS4用ゲーム『DEATH STRANDING』絡みでトラップ調の新曲「Ludens」を突如公開したりと、とにかく1年以上にわたり常に“動いている”印象を残し続けています。
また、「Ludens」公開に伴うインタビューではオリヴァー・サイクス(Vo)が「今後アルバムを作る予定はない。来年はEPとしていくつか新作を作っていく」という趣旨の発言も残しており、2020年も新曲が聴けるんだとワクワクしていたところ、年末も年末というタイミングに不意を突かれました。
全8トラックでトータル75分超と確実にアルバムなんですけど、NINE INCH NAILSが『BAD WITCH』(2018年)を発表した際にトレント・レズナーがこの「全6曲、トータル30分」というEP形式の作品を“アルバム”と呼んだのとは逆の形なのかなと。オリヴァーの意思を無視する形になりますが、個人的には今作はアルバムと捉えたいと思います。
直近の新曲「Ludens」はゲームとの関連性や「『amo』の“次”」という重要な役目を果たしていましたが、実は『amo』と今回の新作の間に「Ludens」を挟むことは非常に大切なトピックなのではないかと、新作を聴いたあと改めて実感しました。それくらい、今回の新曲8曲は“「Ludens」以降のDTMスタイル”をさらに突き進めたものになっているからです。
「ワールドツアーで忙しい中、いつ新曲録ったんだよ!」と不思議に思われるかもしれませんが、メタルコア/ラウドロック的なバンドサウンドから現在のミニマムなDTMスタイルへと移行したことで「PCと歌を録音する環境さえあれば、どこでも新曲制作が可能」になった。と同時に、音楽提供方法もデジタル/ストリーミング主体の現在だからこそ「事前プロモーションなしで、作って即出し」が可能となった。しかも、それを日本にいても時差なく受け取ることができる。2019年の最後の最後に、この強烈な新作によって改めてそのすごさを実感させられたわけです。
全8トラック中、4〜5分台の楽曲は2曲のみ。7分前後の楽曲が3曲に10分台2曲、さらには24分という過去最長の楽曲も用意されています。どれもヒップホップ以降のモダンなトラックをベースに、ギターは聴こえたとしても味付け程度。本来なら曲の軸になるであろう歌も、あくまで「部品のひとつ」としてフィーチャーされるにとどまっています。そういった意味では、本作は非常に実験色濃厚な内容で、『amo』でBMTHに興味を持ったリスナーには若干(いや、かなり)敷居の高い作品かもしれません。
と同時に、ここで展開されているサウンドや楽曲は「2019年だからこそ」の音でもある。これは2020年に入ってからではなく、2019年のうちに出すべきだと思ったのでしょうね。それも納得のいく“旬”な内容となっています。
曲が長くなればなるほど、いわゆる“ボーカルパート”は希薄になっていく。24分におよぶ「Underground Big {HEADFULOFHYENA}」なんて、後半はもはやコラージュでしかないですから。けど、それでもドキドキしながら最後まで聴いてしまう。ダウナーなヒップホップチューン「Steal Something.」からぶった切り的エンディングにキョトンとしてしまうラストナンバー「±ªþ³§」までの75分、ものすごい集中力で楽しむことができました。
さらに、本作には豪華なフィーチャリングアーティストが多数参加。これも、データのやり取りが世界中どこにいても手軽にできるようになった今だからこそなトピックですよね。そのゲスト陣もホールジーやベクシー、LOTUS EATER、HAPPYALONE.、TORIEL、YONAKAと多ジャンルにわたる面々ばかり。LOTUS EATERってHopeless Records所属のあのバンドかしら。HAPPYALONE.といいYONAKAといい、ナイスな組み合わせですけど、彼らをフィーチャーしつつもしっかり我を通すあたりが今のBMTHらしくて微笑ましい。ホント最高。
賛否あるかと思いますが、個人的にはもう彼らはHR/HMやラウドの枠で括らなくてもいいと思うし、ジャンルレスの面白バンドってことでいいんじゃないかな。そういう意味では“メタルコアバンドのBMTH”は『amo』で完全に息絶えたってことでいいと思います。
とはいいながらも、本作には過去作のオマージュもしっかり残されている。序盤、インタールードを挟みながら進むシームレスな構成は、どこか3rdアルバム『THERE IS A HELL BELIEVE ME I'VE SEEN IT. THERE IS A HEAVEN LET'S KEEP IT A SECRET.』(2010年)を彷彿とさせるし。実はバンドとしての軸足はブレていないんじゃないか……そう思わずにはいられません。
……興奮してかなり長くなっちゃいましたが、ここ数日それくらい熱を持って接してきた新作。問答無用で2019年度ベストアルバムです。
▼BRING ME THE HORIZON『Music to listen to-dance to-blaze to-pray to-feed to-sleep to-talk to-grind to-trip to-breathe to-help to-hurt to-scroll to-roll to-love to-hate to-learn Too-plot to-play to-be to-feel to-breed to-sweat to-dream to-hide to-live to-die to-GO TO』
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