ANTHRAX『ATTACK OF THE KILLER B'S』(1991)
1991年6月下旬にリリースされたANTHRAXのコンピレーションアルバム。
タイトルからも想像できるように、本作にはシングルやEPのみで聴くことができたアルバム未収録の“B面曲”をコンパイルしたもの。ジョー・ベラドナ(Vo)在籍時の音源で構成されているのですが、その“B面曲”も完全網羅というわけではなく(SEX PISTOLS「God Save The Queen」、BLACK SABBATH「Sabbath Bloody Sabbath」とか入ってないしね)、あくまでこの当時(1990年の最新作『PERSISTENCE OF TIME』リリース後)のANTHRAXの“位置”を示す内容に限定されているようです。
それにより、例えば『PERSISTENCE OF TIME』からの「Keep It In The Family」「Belly Of The Beast」のライブテイクが収録されていたり、S.O.D.「Milk (Ode To Billy)」「Chromatic Death」のジョーイ歌唱によるセルフカバー、珍ラップ曲「I'm The Man」の“moreヒップホップ”な1991年バージョン、さらにPUBLIC ENEMYの名曲「Bring The Noise」をご本家と一緒にカバーしたりと、半分は新作/新録という気合いの入れよう。でも、この雑多な感じが当時のANTHRAXらしいミクスチャー感満載で、もはやスラッシュメタルだとかハードコアだとかヒップホップだとか、そういったジャンル分けすら無用な次元へと突入しております。
だって、最高にクールなスラッシュ/ハードコアのクロスオーバーチューン「Milk (Ode To Billy)」から勢いよく始まったかと思えば、次は王道ミクスチャーメタルの「Bring The Noise」、さらに次にはヘヴィ of ヘヴィな「Keep It In The Family」ライブバージョンですから。ジャンルで限定すると定まってないと言われてしまうかもしれませんが、これが良いんですよ。
で、この3曲の次が脱力系「Startin' Up A Posse」ですからね(笑)。最高ったらありゃしない。
完全なるお遊びであり、ガス抜き系アルバムなんですが、ANTHRAXというバンドの成り立ちや影響力を考えると、実はオリジナルアルバム以上に重要な役割を果たす1枚ではないでしょうか。本作をもってジョーイ・ベラドナがバンドを離れ、代わりにARMORED SAINTのジョン・ブッシュ(Vo)が加入。そうして完成したのがグランジ/オルタナ/モダンメタルからの影響をビンビン受けまくった『SOUND OF WHITE NOISE』(1993年)とういうことに「なるほど」と頷けてしまうのも、この異色作でワンクッション置いているのが大きいんじゃないでしょうか。
アルバムの完成度にこだわるリスナーには敬遠されてしまいがちですが、サブスク全盛の今だからこそこういう内容はウケるような気がする……と思っているのは僕だけでしょうか。こういうお子様ランチ、嫌いじゃないです。
▼ANTHRAX『ATTACK OF THE KILLER B'S』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ)