DEF LEPPARD『MIRROR BALL: LIVE & MORE』(2011)
2011年6月3日にリリースされたDEF LEPPARD初のライブアルバム。日本盤は同年7月20日発売。
本作リリース当時、すでにバンドとしてのキャリアは30年を超えていたDEF LEPPARD。ライブ映像作品は過去に『LIVE: IN THE ROUND, IN YOUR FACE』(1989年)を発表していたものの、1本のライブをまるまる収めた作品はこれが初となります(先の映像作品は実際のライブから4曲ほどカットされているので)。かつ、『SONGS FROM THE SPARKLING LOUNGE』(2008年)以来となる新曲3曲(「Undefeated」「Kings Of The World」「It's All About Believin'」も追加収録された、非常にお得な内容となっています。
メインとなるライブ音源は、当時の最新アルバム『SONGS FROM THE SPARKLING LOUNGE』を携えた2008〜9年のワールドツアーから厳選されたもの。オープニングを飾る曲が「Rock! Rock! (Till You Drop)」と踏まえると、ベースになっているのは2009年のツアーのようで(2008年は「Rocket」から始まることが多かったので)、そこに2008年のみ披露された楽曲などを組み込んだ、実際のセトリとは異なる選曲となっています。
最新作『SONGS FROM THE SPARKLING LOUNGE』からの楽曲は「C'mon C'mon」「Nine Lives」「Bad Actress」の3曲のみ。そのほかは3rdアルバム『PYROMANIA』(1983年)、4thアルバム『HYSTERIA』(1987年)からのヒットナンバーが大半を占め、前21曲のライブトラック中11曲がこの2作からの選曲となります。そりゃそうなるわな。そのほか、2ndアルバム『HIGH 'N' DRY』(1981年)から2曲、5thアルバム『ADRENALIZE』(1992年)から2曲、コンピレーションアルバム『RETRO ACTIVE』(1993年)から2曲、カバーアルバム『YEAH!』(2006年)から1曲。1stアルバム『ON THROUGH THE NIGHT』(1980年)、6thアルバム『SLANG』(1996年)、7thアルバム『EUPHORIA』(1999年)、8thアルバム『X』(2002年)からは1曲も選ばれておりません。仕方ない。でも、「Promises」くらいは選んでほしかったな。
なもんで、セトリの若干の偏りは生じてしまっています。ですが、大方のファン(主にライト層)が求める“DEF LEPPARD像”はしっかり表現できているのではないでしょうか。だって、多くのそういったリスナーが求めるイメージって、『PYROMANIA』と『HYSTERIA』、そこに「Let's Get Rocked」とか「Two Steps Behind」でしょ? だったら問題ないと思います。それに、真の意味でのベスト選曲ライブアルバムを聴きたかったら『LONDON TO VEGAS』(2020年)を聴けばいいわけだしね。そういった点を加味しても、初のライブアルバムとしては上出来な内容ではないでしょうか?
個人的ハイライトはオープニングからの3曲(「Rock! Rock! (Till You Drop)」「Rocket」」「Animal」)と、「Two Steps Behind」から始まるアコースティックパート。続く「Bringin' ON The Heartbreak」はギターソロ前までがアコースティック、ジョー・エリオット(Vo)の〈No, No, No〜〉からバンド演奏でそのままインスト「Switch 625」へと続くアレンジはアルバムのまんま。やっぱりこの2曲は続けて演奏しないとね。もちろん、「Armageddon It」から「Let's Get Rocked」まで続くヒット曲のオンパレードなクライマックスも聴きどころ。オマケとして付け加えられた「Action」と「Bad Actress」も悪くないです。
続いて、オリジナル新曲について。「Undefeated」は「Pour Some Sugar On Me」タイプの、ギターリフとヘヴィなリズムを軸にしたミドルナンバー。音の質感的には『SONGS FROM THE SPARKLING LOUNGE』の延長線上にあるように感じますが、ヘヴィさが復調しているかな。「Kings Of The World」はQUEEN的ハーモニー/コーラスワークが多用されたスローバラード。もちろん多重コーラスはDEF LEPPARDの武器でもあるんだけど、この曲に関してはQUEEN的と表現したほうが正しい気がします。コードの使い方含めて、そういったルーツが強く打ち出された良曲のひとつです。そして、「It's All About Believin'」はグルーヴィーなギターリフを用いたポップロック。タイプ的には『X』と『SONGS FROM THE SPARKLING LOUNGE』の間っぽいような。そう考えると、3曲とも同じバンドだけどアレンジの軸にしている時期が異なるような。それだけ歴史の長いバンドだという事実が、この3曲からもしっかり伝わってくるのではないでしょうか。
このアルバムから、それまで30年にわたり所属してきたMercury Recordsを離れて独立した彼ら。となるとオリジナルアルバムもすぐに聴けるのでは?なんて淡い期待を寄せたものの、そこはやはりDEF LEPPARD(笑)。結局『SONGS FROM THE SPARKLING LOUNGE』から7年、この『MIRROR BALL: LIVE & MORE』からも4年という歳月を経てセルフタイトルアルバム『DEF LEPPARD』(2015年)が届けられることになるのでした。
▼DEF LEPPARD『MIRROR BALL: LIVE & MORE』
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