カテゴリー「Vivian Campbell」の15件の記事

2020年6月 8日 (月)

DEF LEPPARD『LONDON TO VEGAS』(2020)

2020年5月末にリリースされたDEF LEPPARDのDVD/Blu-ray+CDセット作品『LONDON TO VEGAS』。昨日は本作から、単独発売もされた『HYSTERIA AT THE O2』について触れましたが、今日は『LONDON TO VEGAS』を購入しないと楽しめない『HITS VEGAS: LIVE AT PLANET HOLLYWOOD』について紹介したいと思います。

『HITS VEGAS: LIVE AT PLANET HOLLYWOOD』は2019年に“ロックの殿堂”こと「Rock & Roll Hall Of Fame」に見事選出されたDEF LEPPARDがこれを祝す形で、同年8月14日から9月7日まで12公演にわたりラスベガスのZappos Theaterにてデジデンシー公演を実施。同地区でのレジデンシー公演は2013年の『HYSTERIA』(1987年)再現ライブ以来、実に6年ぶりでした(この模様は同年発売の『VIVA! HYSTERIA』に収録)。

『HITS VEGAS』に収録されているのは、このうち9月6日と7日の模様。連日2時間近くにわたり22〜24曲を披露してきたLEPSですが、本作では日替わりで演奏された楽曲もまとめられ、全28曲/約2時間半というボリューミーな内容を堪能することができます。

映像収録スタッフがイギリスとアメリカとで異なることもあってか、先に紹介した『HYSTERIA AT THE O2』と映像の質感が異なることに最初は違和感を覚えます。『HYSTERIA AT THE O2』が映画的な質感だとすると、この『HITS VEGAS』はよりビデオ画質に近い生々しさが増しています。個人的な趣味だと『HYSTERIA AT THE O2』のほうがどこか高級さが伝わってくるのですが、メンバーの汗……特に上半身裸のフィル・コリン(G)の熱気がダイレクトに伝わるのは『HITS VEGAS』のほう。それぞれに一長一短があるわけですね。

この『HITS VEGAS』は、とにかく選曲が面白いんですよ。序盤にメガヒット作『PYROMANIA』(1983年)と『HYSTERIA』の楽曲を固め、しかも『PYROMANIA』からは「Die Hard The Hunter」や「Too Late For Love」「Billy's Got A Gun」などマニアックでヘヴィめな楽曲を立て続けに披露していく。そこから「Slang」というアメリカで大コケしたアルバム『SLANG』(1996年)の表題曲や、続く『EUPHORIA』(1999年)からの「Promises」や「Paper Sun」を演奏する構成は(こと日本ならまだしも)アメリカでは実験的と言わざるを得ないもの。

そこから「Let It Go」「Mirror, Mirror (Look Into My Eyes)」「Bringin' On The Heartbreak」「Switch 625」という2ndアルバム『HIGH 'N' DRY』(1981年)収録曲の応酬は、オールドファンならば生唾モノ。『HYSTERIA』以降しか知らないリスナーには逆に、新鮮に響くのかしら。にしても、「Bringin' On The Heartbreak」ではオープニングのツインリードが鳴り響いた途端に歓声が聴こえてくるあたり、さすが海外といいますか……これ、日本でも観たかったなあ……。

中盤にはアコースティックコーナーも用意。ここでは「Let Me Be The One」や「We Belong」というレア曲も披露されています。前者は『X』(2002年)、後者は最新作『DEF LEPPARD』(2015年)からと、当時のツアーでも披露していない貴重な代物。このコーナーではほかにも「Have You Ever Needed Someone To Bad」やお馴染みの「Two Steps Behind」も演奏されています。

後半ではさらに『X』から「Now」や『DEF LEPPARD』から「Let's Go」などもありますが、基本はヒットシングル曲が目白押しの構成。このへんは先の『HYSTERIA AT THE O2』とも重複するので割愛しますが、個人的にはアンコールの「Action」がうれしい選曲だなと。やっぱりアガリますよね、このアップチューンがあると。

80年代に重点を起きつつも、過去40年にわたるキャリアを総括するようなセットリスト。とはいえ、デビューアルバム『ON THROUGH THE NIGHT』(1980年)とメジャーからのラスト作『SONGS FROM THE SPARKLE LOUNGE』(2008年)からは1曲も選ばれていないのには、何か理由があるのでしょうか。まあ、これだけいい曲があったら、漏れてしまうのも仕方ないかな。

ここからは、話題をボックスセット『LONDON TO VEGAS』自体に移します。

昨日紹介した『HYSTERIA AT THE O2』は初心者にも優しい内容でしたが、今作を含むボックスを購入しようと思う方はそれなりにLEPS愛が強い方でしょう。そういう人なら確実に、持っていて損はしない一品です。この10年くらいで定期的にLEPSの映像作品が発売されるようになりましたが、本ボックスセットはその決定版と言える内容ではないでしょうか。国内盤は1万強と値が張りますが、対訳・字幕なしでもいいならリージョンフリーの輸入盤が7000〜8000円台でオススメです(僕は輸入盤BDを購入しました)。

音源にしても、『HYSTERIA AT THE O2』と『HITS VEGAS』とではトータル46トラック中10曲のみ(って多いか。笑)。とはいえ、重複するくらいなのでいい曲なのは間違いないので、聴き飽きることはないかもしれませんよ?

最近ボックスセット続きのDEF LEPPARDですが、来年あたりには新曲にも期待したいですね(もしくは『PYROMANIA』完全再現で来日とかね)。

 


▼DEF LEPPARD『LONDON TO VEGAS』
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▼DEF LEPPARD『HITS VEGAS: LIVE AT PLANET HOLLYWOOD』
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2020年6月 7日 (日)

DEF LEPPARD『HYSTERIA AT THE O2』(2020)

2020年5月末にリリースされたDEF LEPPARDのDVD/Blu-ray+CDセット作品『LONDON TO VEGAS』。本作は2018年12月のロンドン公演を収めた『HYSTERIA AT THE O2』と、2019年9月のラスベガス公演を収録した『HITS VEGAS: LIVE AT PLANET HOLLYWOOD』の2作品をまとめたもので、このうち今回紹介する『HYSTERIA AT THE O2』のみ単独発売されています。この2作品を『LONDON TO VEGAS』としてまとめて紹介するとかなりの文字数になってしまいそうな予感がするので、ここでは『HYSTERIA AT THE O2』についてのみ触れていきたいと思います。

この『HYSTERIA AT THE O2』はタイトルからもわかるように、DEF LEPPARD最大のヒット作『HYSTERIA』(1987年)のリリース30周年を記念して実施された再現ライブの模様を完全収録したもの。『HYSTERIA』の完全再現ライブ自体は2013年前半にラスベガスにて、レジデンシー公演として実際されており、その模様を収めた映像作品『VIVA! HYSTERIA』も同年10月に発売済み。しかし、今回はリリース30周年を祝して同作の最新リマスター盤やボックスセットなども発売されたこともあり、これらをフォローする形で2018年から翌年にかけてアメリカや日本、オーストラリア、イギリスでの単独公演、ヨーロッパでのロックフェスで新たな再現ライブが行われました。

この映像に収められている内容自体は、2018年10月に行われた日本公演とほぼ同内容で、僕が観た日本武道館公演とはアンコール1曲目のみ異なるのみ(武道館では「Let It Go」が披露されましたが、名古屋公演ではこの作品と同じく「Wasted」が2013年以来5年ぶりに演奏されています)。つまり、ほぼ完璧な形で1年半前の来日公演を高画質&高音質で追体験できるわけです。

ロンドンTHE O2は2万人を集客する大規模アリーナで、日本でいうところの横浜アリーナやさいたまスーパーアリーナに似た構造。それもあって、映像自体はどこか既視感があるものと言えるのではないでしょうか(まあLEPS自身は両会場でライブしたことないですが)。

演出なども日本公演から日が経っていないこともあり、ほぼ一緒。「そうそう、オープニングからこうだったね!」と記憶をたどりながら楽しみました。なので、「Gods Of War」開始前に紹介されるスティーヴ・クラーク(G)の映像や、「Hysteria」演奏中スクリーンに映されるスティーヴ在籍時の秘蔵写真などを目にすると、やはり込み上げてくるものがあります。

あ、当時のレポートには記載されていませんでしたが、「Hysteria」のエンディングでジョー・エリオット(Vo)がデヴィッド・ボウイ「Heroes」の一節を口ずさむ場面があるのですが、あれって日本でもやっていましたっけ? ちょっとうろ覚え。そういえばこの演出、過去にもやっていましたよね(だから記憶に残っているのかな)。

『HYSTERIA』収録曲はシングル/非シングル曲問わず、終始大合唱する英国民。もちろんアンコールの「When Love And Hate Collide」や「Let's Get Rocked」でも同じく大きな声で歌い続けます。って、思えばこの2曲は本国で最高2位という記録を残しているので、「おなじみの曲」というポジションなのかな。後者は納得ですが、前者に関してもそこまで認知されているんだと驚きました。

『VIVA! HYSTERIA』よりも映画っぽい質感の映像も良い感じなので、同作を持っている人でも楽しめる内容かと。ライブCDに関しては言うまでもなく、名曲しか収録されていないので、本作購入後は移動中ずっと聴きまくってます。

まあ……ここまで書いておいてアレですが、今さら僕が書くまでもなく、名曲しか入っていないライブ作品なので(もちろん、彼らの代表曲はまだまだたくさんあるので、これは氷山の一角でしかないのですが)、DEF LEPPARDのライブ初心者にもうってつけのパッケージだと思います。

 


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2020年6月 6日 (土)

RIVERDOGS『RIVERDOGS』(1990)

1990年5月にリリースされたRIVERDOGSの1stアルバム。日本盤は『荒野の呼び声』というなかなかアレな邦題を付けられ(笑)、同年6月に発表されています。

WHITESNAKEを脱退後、ルー・グラム(ex. FOREIGNER)の2ndソロアルバム『LONG HARD LOOK』(1989年)にゲスト参加するなどして音楽活動をつないでいたヴィヴィアン・キャンベル(G)。そんな彼が1989年にバンド活動を再開させたのが、このRIVERDOGSでした。

アートワークからもわかるように、当時のメンバーはヴィヴィアンのほかロブ・ラモース(Vo)、ニック・プロフィ(B)の3人。ドラマーはセッションメンバーが参加し、本作完成後にマーク・ダンゼイセン(Dr)が加入しています。

マイケル・モンロー『NOT FAKIN' IT』(1989年)などで知られるマイケル・フロンデリをプロデューサーに迎えて制作された本作では、適度にレイドバックしたアメリカン・ハードロックが展開されており、ロブの声質や歌唱法もあって、どこか80年代前半〜半ばのWHITESNAKEを彷彿とさせるものがあります。しかし、当時のデヴィッド・カヴァーデイルほど高音でシャウトすることなく、ロブの中音域を中心とした歌唱は非常に心地よいものがあり、そのブルージーな楽曲と相まって非常に聴きやすく仕上げられています。

「Toy Soldier」や「Holy War」「America」などキャッチーな楽曲も多いものの、全体的には比較的地味な印象。ヴィヴィアンのギタープレイも非常に適材適所といいますか、無駄に弾きすぎずにボーカルを立てることに徹している。このへんは、翌年にリリースされたSHADOW KING唯一のアルバム『SHADOWN KING』(1991年)や、その後加入するDEF LEPPARDでの活動にも通ずるものがあり、彼が何をしたくて音楽活動(バンド活動)を続けていたのかが垣間見えるのではないでしょうか。

もちろん、ギタリストとしての見せ場も豊富に用意されています。「Big House」では比較的長めで派手なギターソロもフィーチャーされていますし、この押し引きのバランス感こそがヴィヴィアンの個性と言えなくもありません。DIOやWHITESNAKEで見せた派手さには敵いませんが、これはこれで彼らしいのではないでしょうか。なにより曲調やアルバムの雰囲気にぴったりですしね。

……と、ここまで書くと、いかに彼は曲作りに力を入れてきたのかと思われるでしょう。しかし、ヴィヴィアンの本作におけるソングライターとしての貢献度はそこまで高くなく、10曲中4曲に共作者としてクレジットされるのみ。ロブ中心で曲作りが行われていることから、ロブのバンドにヴィヴィアンが加入したと見るのが正しいのかもしれません。そう考えると、ヴィヴィアンが中心となって動くバンドってほとんどないんですよね(SHADOW KINGはルー・グラムのソロ延長ですし、LAST IN LINEもちょっと違うし)。そのエゴの弱さこそがヴィヴィアン・キャンベルそのものなんでしょうけどね。

にしても、リリースから30年経っても色褪せることのない、本当に良いアルバムです。発売されてから数年ずっと聴きまくっていたし、「こういうバンドをやりたい」と思わせてくれた、僕にとって非常に重要な1枚です。

 


▼RIVERDOGS『RIVERDOGS』
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2018年12月20日 (木)

VIXEN『VIXEN』(1988)

80年代後半に活躍したアメリカの女性4人組バンド、VIXENが1988年に発表したデビューアルバム。「Edge Of A Broken Heart」(全米26位)、「Cryin'」(同22位)のシングルヒットも手伝い、アルバム自体も全米41位まで上昇しました。

当時は空前のHR/HMブームで、レーベルもメディアも「第二のBON JOVIMOTLEY CRUEは誰だ?」「次世代のDEF LEPPARDWHITESNAKEを探せ」と躍起になっていた頃。そんな状況でしたが、女性HR/HMバンド/アーティストに日の目が当たる機会はかなり少なく、HEARTは別格として、それ以外ではドイツのWARLOCK、イギリス生まれながらもアメリカで活躍した元THE RUNAWAYSのリタ・フォードが目立ったヒットを飛ばした程度でした。

そんな中、VIXENが契約したのはManhattan Recordsという、当時EMI(現Universal Records)傘下の新興レーベル。すでにGLASS TIGERやロビー・ネヴィル、リチャード・マークスといったロック/ポップス系アーティストがヒットを飛ばしていましたが、本格的にHR/HM系アーティストを手がけるのはドイツのZENO以来。ここでハズすわけにはいきません。

そこで投入されたのが、当時すでに“時の人”となりつつあったリチャード・マークス。リードトラック「Edge Of A Broken Heart」では彼が楽曲制作を担当したほか、プロデューサーとしても名を連ねています。さらに、そのリチャード・マークスやボブ・シーガーなどのアメリカンロックを担当してきたデヴィッド・コール、QUIET RIOTW.A.S.P.、KING KOBRAなどを手がけたスペンサー・プロファーも参加し、曲のテイストごとにプロデューサーを替えています。

このほか、M-5「Desperate」には当時WHITESNAKEでブイブイ言わせていたヴィヴィアン・キャンベル(現DEF LEPPARD)がギターソロでゲスト参加。デビュー作にこれだけ力を入れてるあたりからも、彼女たちに社運を賭けてるるんじゃ?と思えるほどの気合いが感じられます。

実際、どの楽曲も本当によく作り込まれたものばかりで、BON JOVIやHEARTあたりを気に入っているライト層を引き込むには十分魅力的な内容と言えるでしょう。おそらくハードめの曲はスペンサー・プロファーあたりが、ポップめのソフトナンバーはデヴィッド・コールが手がけているんでしょうね。そのへんの色分けもわかりやすいし、HR/HMという色眼鏡なしでも存分に楽しめるロックアルバムだと思います。だって、当時も今も、これくらいハードでもHR/HMの範疇に含まれないアルバム、たくさんありますものね。これもあの時代故。

とにかくシングル2曲のクオリティが飛び抜けているところが、特筆すべきポイント。もちろん他の曲がダメというわけではなく、平均的に良質なロックチューンの中に2曲だけ職業作家による上品で高品質な楽曲が混ざっちゃったもんだから、必要以上に輝いているといいますか。なんとなくですが、レーベルはこの2曲をシングルで切ったあとのこと、あんまり考えてなかったような気もするんだけどな(「Love Made Me」あたりはその予備軍っぽいけど、やっぱり“差”を感じるわけですよ)。

まあ、そんことを書きながらも、安心して楽しめる良質なメロディアス産業ハードロックアルバムなのは間違いない事実。HEARTほど圧倒的なボーカルが楽しめるわけではないけど、あの路線が好きな方はぜひ一度お試しください。



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2018年11月 2日 (金)

DEF LEPPARD『HYSTERIA』PERFORMED IN ITS ENTIRETY & MORE@日本武道館(2018年10月24日)

Img_3716もう1週間経ってしまいましたが、いまだに余韻が抜けないので改めて記録として残しておきます(ベビメタやらポール・マッカートニーやらで記憶が薄まる前に)。

DEF LEPPARD、3年ぶりの来日公演。前回は久しぶりのニューアルバム『DEF LEPPARD』(2015年)発売直後でしたが、今回は傑作『HYSTERIA』(1987年)完全再現+αというHR/HMファン歓喜の内容。そりゃ行かない理由はないですよね。

しかも、前回の来日時は自身の体調が万全ではなく(耳を患い長時間大音量が厳しい状態)、しかもライブ当日に名古屋で取材。開演に20分以上遅れるという失態を犯したこともあり、今回は最初から最後までまるまる堪能したいなと。30分前には武道館入りし、場内で延々流れるブリティッシュロック/ハードロックの名曲群に浸っておりました(ラジオDJ風で、途中「あと◯◯分でライブだよ」みたいな英語アナウンスが入る)。

ステージは非常にシンプル。後方に巨大LEDスクリーン、その前の一段高い位置にドラムセット。ステージ上にはギターアンプの類は一切なし。そういえば、前回の来日時も同じようなことで驚いた記憶が。あと、DURAN DURANのときも同じようなステージセットだったような。最近はこういう形が増えているんですかね。

予定時間から10分ほど遅れて暗転(そういえば、暗転前最後に流れたのはDEPECHE MODE「Personal Jesus」のDEF LEPPARDカバー。自分たちの曲を流すのは斬新でしたね。笑)。『HYSTERIA』収録曲をコラージュしたSEが流れる中、メンバーがステージに登場し、最後にジョー・エリオット(Vo)が現れたところでフィル・コリン(G)が「Women」のギターフレーズを奏でライブ開始。キーは半音下げでしょうか。ライブアルバム&映像作品『VIVA! HYSTERIA』(2013年)と同じキーだったと記憶しています。全体的に音量が抑えめで、ジョーの声も若干聞こえにくいような。高音が厳しいのは今に始まった話じゃないですが、こういった音響のせいもあってサビではジョーの声が聞き取りにくいったらありゃしない。まあそこは、観客の大合唱でフォローするわけですが。

ライブで久しぶりに耳にする「Women」からアルバムテイクの「Rocket」、ポップで小気味良い「Animal」へと順調に流れていき、MCは極力控えめ。4曲目「Love Bites」はさすがに半音下げでも厳しかったのか、1音下げだったのでは?(もっとかも) それでも違和感なく楽しめましたが。そしてライブ終盤の定番曲「Pour Some Sugar On Me」と、5曲立て続けにヒットシングルを演奏……冷静に考えて、なんて豪華なアルバム/ライブなんでしょう。普通のバンドだったら、ヒット曲はライブ全編に散りばめるのに、MCを挟んでさらに続く「Armageddon It」と、ここまでシングル6連発。アナログA面全曲がシングルナンバーって、それどこの『THRILLER』だよ!?って話ですよね。

ここまではライブで耳にする機会が比較的多い楽曲が続きましたが、個人的にはこれ以降が本番。マニアックな楽曲が並ぶアナログB面(M-7〜12)ゾーンに突入です。

Img_3714「Gods Of War」の前にはスティーヴ・クラーク(G/1991年死去)の在りし日の姿がスクリーンに映し出され、涙腺が刺激されます。この頃から演奏全体のボリュームが安定し、大きめになったような記憶があります。フィル・コリンやヴィヴィアン・キャンベル(G)がクールなギタープレイを披露し、リック・アレン(Dr)とリック・サヴェージ(B)がヘヴィなビートでボトムを固める。アルバムで聴ける人工的なサウンドとは異なる、生々しさがむき出しになったライブでのアレンジ、本当に良いです。

そして「Don't Shoot Shotgun」「Run Riot」と久しぶりにライブで演奏される楽曲が続くのですが……残念ながら、序盤と比べると観客のテンションが少しだけ落ちたような気が。シングル曲ではサビでシンガロングが続きましたが、このへんでは(主に自分の周りでは)ほとんどなかったような。が、「Hysteria」では会場の熱量も復活。スクリーンに映し出される過去の写真に、再び胸が締め付けられるのでした。

ライブで聴くと意外と楽しかったダンスチューン「Excitable」を経て、感動のラストナンバー「Love And Affection」へ。「Hysteria」とテンポ感が似ており、かつ曲の並びが近かったのはライブとしては残念だったかもしれません(アルバムで聴くと違和感ないんだけど)。けど、良い曲であることには違いなく、結局70分近くにおよぶ完全再現を経て、バンドは一度ステージを後にします。

12曲で本編終了と、ライブとしては若干物足りなさが残りますが、ここからは「+α」パート。つまり、『HYSTERIA』以外の代表曲のパートになるわけですが、まずいきなり「Let It Go」(2ndアルバム『HIGH 'N' DRY』収録曲)から始まるとは! これにはさすがに驚かされました(大阪や名古屋では「Action」や「Wasted」が演奏されたようですね。これも聴きたかった!)。そこから、この日演奏された楽曲の中でもっとも最新ナンバー(笑。1995年作)「When Love & Hate Collide」へと続き、「Let’s Get Rocked」「Rock Of Ages」「Photograph」と定番ナンバー連発でアンコールを締めくくりました。

全17曲、正味95分程度と最近のライブとしては比較的短いほうかもしれませんが、ヒット曲満載でこのボリュームなら納得がいくといいますか。腹八分目で「また観たい!」と思えるくらいの長さが、実はちょうどいいのかもしれません。2時間半から3時間のライブが当たり前となっていた時代もありますが、アーティストのエゴで(ファン的には不人気な)レア曲にて水増しされるよりはこれでいい気がしました。

バンドは間もなく新たなグレイテスト・ヒッツアルバム『THE STORY SO FAR: THE BEST OF』をリリースしますが、できることなら同作を携え、また来年も来日してほしいな。今回ライブに足を運んだ人は間違いなく、次も行くはずですから。


[SETLIST]
01. Women
02. Rocket
03. Animal
04. Love Bites
05. Pour Some Sugar On Me
06. Armageddon It
07. Gods Of War
08. Don't Shoot Shotgun
09. Run Riot
10. Hysteria
11. Excitable
12. Love And Affection
<ENCORE>
13. Let It Go
14. When Love & Hate Collide
15. Let's Get Rocked
16. Rock Of Ages
17. Photograph




▼DEF LEPPARD『VIVA! HYSTERIA』
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2018年11月 1日 (木)

DEF LEPPARD『RETRO ACTIVE』(1993)

1993年10月にリリースされた、DEF LEPPARD初のコンピレーションアルバム。1991年1月にスティーヴ・クラーク(G)を失い、残されたメンバー4人で5thアルバム『ADRENALIZE』(1992年)を完成させたバンドは、その直後に新メンバーとしてヴィヴィアン・キャンベル(G)を迎えます。そこでバンドは、スティーヴ・クラーク在籍時にひと区切りつけるために、過去のアルバム未収録曲や未発表曲をひとまとめにしたアルバムを作る計画を立てます。

ちょうどそんなタイミングに、映画『ラスト・アクション・ヒーロー』(1993年公開)のサウンドトラックに提供した「Two Steps Behind」がシングルヒット(全米12位)。もともとこの曲も『ADRENALIZE』からのシングル「Make Love Like A Man」に収められていたものに手を加えたもので、当然この『RETRO ACTIVE』に収録。そういう良き流れもあり、アルバム自体も純粋な新作ではないものの全米9位、全英6位という好成績を残しています。

収録曲の大半は『HYSTERIA』(1987年)および『ADRENALIZE』のレコーディングセッションから生まれたものばかりで、アルバム冒頭を飾る「Desert Song」と「Fractured Love」は『HYSTERIA』セッション時に生まれたアウトテイク。スティーヴ在籍時の貴重な音源で、『HYSTERIA』に入れるにはちょっとヘヴィ&シリアスすぎたのかなと。決して悪くはない出来で、普通にアルバムに入っていても違和感はないかも。

3曲目「Action」(ご存知SWEETのカバーで、今ではライブ定番の1曲)以降は、ヴィヴィアン加入後の音源やこのアルバム用にレコーディングされたテイクも混在。同じ曲の別テイクも複数含まれており、「Two Steps Behind」「Miss You In A Heartbeat」はそれぞれ2 バージョン、3バージョン(うち1バージョンはシークレットトラック)と「ちょっと余計じゃない?」と若干のクドさも。とはいえ、それぞれアコースティックバージョンとエレクトリックバージョンでカラーが異なるので、ファンなら楽しめるんじゃないかなと。

のちに発売された『HYSTERIA』30周年盤にも含まれている「Ride Into The Sun」「Ring Of Fire」「I Wanna Be Your Hero」は、本作収録バージョンとは若干ミックスが異なります。また、『ADRENALIZE』日本盤にボーナストラックとして収められた「She's Too Tough」と「Miss You In A Heartbeat」(エレクトリックバージョン)も新たにリミックスが加えられているので、マニアはその違いを聴き比べるのも面白いかもしれませんね。あ、「Ride Into The Sun」は『THE DEF LEPPARD E.P.』(1979年)が初出なので、聴き比べの際にはそちらもお忘れなく。

純然たるシングルコレクションとは異なり、あくまでオリジナルアルバムのアウトテイクやお遊び的楽曲が中心なので、バンドの本筋とは若干異なりますが、逆に軸にあるものがより見えやすい1枚かもしれません。そういう意味では、本作はDEF LEPPARDを語る上で欠かせないアルバムと言えるでしょう。個人的にもお気に入りの上位に入る作品集です。



▼DEF LEPPARD『RETRO ACTIVE』
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2018年10月21日 (日)

DEF LEPPARD『VIVA! HYSTERIA』(2013)

2013年10月に発売された、DEF LEPPARD通算2作目のライブアルバム(およびライブ映像作品)。前作『MIRROR BALL: LIVE & MORE』(2011年)は直近のオリジナルアルバム『SONGS FROM THE SPARKLE LOUNGE』(2008年)を携えたワールドツアー音源に3曲の新曲を追加した作品でしたが、今作はそのタイトルからもわかるようにバンド史上最大のヒット作『HYSTERIA』(1987年)を完全再現した、ラスベガスのHard Rock Hotel And Casinoでのライブを収めたものです。

ライブは『HYSTERIA』収録曲全12曲を、アルバムの曲順どおりに演奏した本編に加え、「Rock Of Ages」「Photograph」のヒットシングル2曲を披露したアンコール2曲の全14曲。2枚組CDのうち、ディスク1にこの模様がまるまる収録されています。

そして、ディスク2には近年あまりライブで演奏される機会の少なかった楽曲群……1stアルバム『ON THROUGH THE NIGHT』(1980年)期の「Good Morning Freedom」や「Wasted」「Rock Brigade」、2ndアルバム『HIGH 'N' DRY』(1981年)から「Mirror, Mirror (Look Into My Eyes)」や「Another Hit And Run」、さらに「Stagefright」や「Action」「Slang」「Promises」などを演奏した、同ライブのオープニングアクト(DEF LEPPARDがDED FLATBIRD名義で登場)のライブ音源も収録。日本盤のみ、「Now」や「When Love & Hate Collide」「Two Steps Behind」など計5曲を約8分のメドレーで披露したアコースティックセットが追加されています。

リック・アレン(Dr)が交通事故で片腕を失い、それに合わせて制作されたスペシャルなドラムセットを用いてレコーディングされた最初のアルバム『HYSTERIA』。その特徴的なドラムサウンドのみならず、何十、何百にもおよぶオーバーダビングによる重厚なサウンドがあのアルバムの特徴でしたが、ライブではそのマジックが完全再現されるわけではありません。ステージにいる5人だけで表現される『HYSTERIA』の楽曲群は、聴く人が聴けばオリジナル盤よりも薄っぺらくて、迫力が弱いものに成り下がっていると感じるかもしれません。

しかし、あの完璧に作り込まれた作品をここまで生々しくよみがえらせたという点においては、オリジナルとはまた違った楽しみ方ができるというのもあります。ドラムサウンドも1987年当時より技術的に向上しており、幾多のライブを重ねてきた彼ららしいアレンジとプレイの妙技もこの作品ならでは。2本のみで再現されるフィル・コリン(G)&ヴィヴィアン・キャンベル(G)のギターアンサンブルと、キーを半音下げながらもなるべく原曲に忠実に歌おうとするジョー・エリオット(Vo)のボーカル、さらに少ないメンバーで再現しようとするコーラスワークは、そりゃあスタジオワークの重厚さには敵いませんが、この隙間のあるアンサンブルも“ザ・ロックバンド”然としていてカッコいいではありませんか。

個人的に印象に残るのは、実はリック・サヴェージ(B)のベースプレイ。アルバムだとシンセベースに置き換えていたりするものも、ここではベースギターで演奏されているので、この低音が気持ち良かったりするんですよね。

間もなく3年ぶりの来日を果たすDEF LEPPARD。ここ日本でも『HYSTERIA』完全再現が実施されるわけですが、まずはこのライブ作品で予習するもよし。ライブを観た人はここで思い出に浸りつつ、復習するのもよし。スタジオ版とは異なるライブバンドならではの魅力を、ここから感じ取ってもらいたいです。



▼DEF LEPPARD『VIVA! HYSTERIA』
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2018年8月10日 (金)

SHADOW KING『SHADOW KING』(1991)

当時FOREIGNERを脱退したルー・グラム(Vo)が、同じくDIOWHITESNAKERIVERDOGSと渡り歩いてきたヴィヴィアン・キャンベル(G)と結成したスーパーバンド、SHADOW KING。彼らが1991年10月(日本では同年11月)に発表した、唯一のアルバムが本作になります。

バンドのメンバーはルー、ヴィヴィアンのほか、ルーの旧友でのちにFOREIGNERにも加入するブルース・ターゴン(B)、KISSのレコーディングセッションに参加したり、のちにCINDERELLAなどに加入するケヴィン・ヴァレンタイン(Dr)の4名。キース・オルセン(FOREIGNER、オジー・オズボーン、WHITESNAKE、HEARTなど)をプロデューサーに迎え制作されたこのアルバムは、非常にクオリティの高い産業ハードロック/メロディアスハードロックの隠れた名盤です。

全10曲中、ヴィヴィアンが作曲に関わっているのはラストの「Russia」のみ(ルーとの共作)。それ以外のすべてがルーとブルースの共作で、ある意味ルー・グラムのソロアルバムやルー復帰後のFOREIGNERにも通ずる世界観が展開されています。いや、むしろこれ、80年代後半、『INSIDE INFORMATION』(1987年)以降のメロディアスハードロック路線のFOREIGNERじゃん。

ギターは要所要所で、確かにヴィヴィアンらしいプレイ(主にソロ)を楽しめますが、本作における最大の武器は良質のメロディとルーのパワフルなボーカル。WHITESNAKEでシンガーとギタリストのバトルに懲りたのか、はたまたRIVERDOGSでバランス感を学んだのか、ここでのギタープレイはかなり後ろに引いたものになっていて、そこだけは若干不満が残るかなと(ヴィヴが参加しているとわかっているから、余計に)。とはいえ、曲の良さやアルバムの完成度を前にすると、実はギターがそこまで重要ではないことに気づかされるわけですが。

この湿り気のあるマイナーキーと、要所要所に挿入されるシンセ。強く主張せず、バッキング(パワーコードやアルペジオなど)に徹するギター。それってもう、本当にFOREIGNERなんですよね。これを聴いたあとに、ルー復帰作となる『MR. MOONLIGHT』(1994年)を手にすると、あら不思議。同じバンドのように思えてくるのですから……。

ってくらい、このジャンルが好きな人なら絶対にハマる1枚。当時まったく話題にならなかったし売れもしなかったので、バンドはすぐに解散。翌1992年に入るとヴィヴはDEF LEPPARDに加入。ルーとブルースはFOREIGNERに加わり、ケヴィンはCINDERELLAへ……。なんだ、みんなこのバンドを踏み台にしてるんじゃないか(笑)。

そんな不運のバンド、この機会に触れてみてはいかがでしょう。

 


▼SHADOW KING『SHADOW KING』
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2017年12月 7日 (木)

DEF LEPPARD『SLANG: DELUXE EDITION』(2014)

というわけで、昨日のDEF LEPPARD 『SLANG』(1996年)レビューからの続きとなります。今回は前回以上に長いテキストとなっておりますので、そのつもりでお読みください。

本作は2014年初頭、バンドが自身のレーベルから発表した2枚組アルバム。当時はすでに、それまで在籍していたメジャーレーベルの「Mercury / Island」から離れており、彼らの旧譜をバンドが思ったような形で再発できない(例えばiTunes StoreやSpotifyなどの配信/ストリーミングサービスに、自由に提供できないなど)という問題が生じていた時期で、そんな中2012年後半にこの『SLANG』のマスター音源および当時録音したアウトテイクが彼らの手元に戻ることになった。そういう紆余曲折を経て、オリジナル盤発売から18年を経て『SLANG』セッションの全貌がここに明らかにされたわけです(ちなみに、今年リリース30周年を迎えた名盤『HYSTERIA』のデラックス盤は、原盤権を持つUniversalからのリリース。要はカタログとして売れる/売れないかの判断で『SLANG』を手放したんでしょうね)。

上記のような経緯を経て、バンドとしては久しくオリジナルアルバムがリリースされない時期に突如発表された『SLANG』のデラックスエディション。当然、発売されてすぐに手に入れましたが、いやぁこれが……聴き応えたっぷりで、オリジナル盤を持っている人でも間違いなく楽しめる1作なのです。

ディスク1にはリマスタリングされた『SLANG』本編に、1996年当時の日本盤ボーナストラックだった「Move With Me Slowly」、『SLANG』からのシングルにも収められた「Truth? (Original Version)」や「Burn Out」、ベストアルバム『VAULT: DEF LEPPARD GREATEST HITS (1980-1995)』(1995年)のボーナストラック「Can't Keep Away From The Flame」、7thアルバム『EUPHORIA』(1999年)からのシングルに収められた「World Collide」を追加収録。本編以降の楽曲はすべて『SLANG』セッションから生まれたもので、特に「Truth? (Original Version)」はデジタルテイストの強いアルバム本編の「Truth?」とは異なり、よりグランジ色が強い作風であることに驚かされます。また「Burn Out」は演奏スタイルこそ『SLANG』的ですが、楽曲の持つテイストは『ADRENALIZE』(1992年)以前の作風に近い。かと思えば、「World Collide」は変拍子を用いたミディアムスローのヘヴィチューンで、SOUNDGARDENあたりからの影響が伺えます。「Can't Keep Away From The Flame」はギター弾き語りの小楽曲なので、これは90年代前半にヒットしたシングル曲「Two Steps Behind」の延長線上で制作したものなんでしょう。

で、問題はディスク2。こちらには『SLANG』オリジナル盤収録曲のデモバージョンが満載なのです。「Turn to Dust (Phil Verse Vocal)」はデジタル的な味付けを省いた、より生々しさが前面に打ち出されたバージョン。歌詞や節回しが一部異なっているほか、ボーカルの一部をフィル・コリン(G)が担当しています。普通にロックバンドの楽曲としてカッコイイと思いませんが、この曲?

続く「Raise Your Love」はタイトルだけでは気づきませんが、これこそアルバムタイトル曲「Slang」のデモバージョン。ヒップホップ的手法のアレンジが施される前の、ワイルドなロックアレンジもこれはこれでカッコ良いし、何よりもサビがまったく異なる。正式発表された「Slang」はタイトさが目立ちますが、この緩やかさとダイナミックさを兼ね備えたアレンジも悪くないのですよ。

「All I Want Is Everything (1st Draft)」は比較的原曲に近く、初期の段階からほぼ完成形だったことが伺えます。まあこの曲、正式版自体がシンプルそのものですからね。続く「Work It Out (1st Draft)」も「Breath A Sigh (Rough Mix)」「Deliver Me (Rough Mix)」も同様。アルバム序盤のエキセントリックな楽曲と比べたら、このへんの楽曲は最初から完成形が見えていたってことなんでしょうね。

で、見慣れないタイトルの「Black Train」。こちらは「Gift Of Flesh」のデモバージョンで、ハードロックバンド的なダイナミックさが加えられた「Gift Of Flesh」よりもラフでユルい雰囲気が漂っています。また、サビ前からサビのメロディが完成版とは異なり、このシンプルさこそ当時の彼らが目指していたものなのだと理解できははずです。以降は「Blood Runs Cold (Rough Mix)」「Where Does Love Go When It Dies (1st Draft)」と再び完成版に近いテイクが続き、最後の「Pearl Of Euphoria (Rough Mix)」では過剰なエフェクトが加えられる前の生々しさを体感でき、改めてこっちのバージョンもいいなと思ったり。

ディスク2はまだまだ続き、ヴィヴィアン・キャンベル(G)のペンによる未発表曲「All on Your Touch (2012 Revisit)」や、「Deliver Me」の初期バージョン「Anger ("Deliver Me" 1st Draft)」(サビメロや歌詞が異なる)、ヴィヴィアンによる未発表デモトラック「Move On Up」、「Gift Of Flesh」のフィル・コリンVoバージョンなど貴重なテイクがたっぷり収められています。

こうやって完成した『SLANG』から通して聴くと、好き放題やり尽くしたと思われた『SLANG』というアルバムも実は最終的に“従来のDEF LEPPARDらしさ”を残そうとして微調整していたんだな、という事実にも気づかされます。もちろん「Truth?」や「Slang」のように過剰に突き抜けた楽曲もあるにはあるのですが、全体的にはやっぱり「DEF LEPPARDのアルバム」なんだと。その一言に尽きると思います。

こういうアウトテイク集って作品によってはまったく面白くなかったりするのですが、『SLANG』みたいな実験作および問題作だとやっぱり面白いもんだなと再確認できたので、このリリースの意味は非常に大きいものがあると思います。もし『SLANG』というアルバムに多少でも興味を持っていたら、迷わず手にしてみることをオススメします。



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2017年12月 6日 (水)

DEF LEPPARD『SLANG』(1996)

1996年5月にリリースされた、DEF LEPPARD通算6枚目のスタジオアルバム。前作『ADRENALIZE』(1992年)から4年ぶりの新作となるわけですが、その4年間に新曲+シングルBサイド集アルバム『RETRO ACTIVE』(1993年)やベストアルバム『VAULT: DEF LEPPARD GREATEST HITS (1980-1995)』(1995年)のリリースを挟んだので、意外と久しぶりという気がしなかったことを今でもよく覚えています(まあ、それも「彼らにしては」という大前提が入りますが)。

『ADRENALIZE』リリース後にスティーヴ・クラーク(1991年逝去)の後任としてヴィヴィアン・キャンベルが加入した彼らが最初に制作したスタジオアルバムがこの『SLANG』になるわけですが、本作は当時からいろんな意味で問題作として紹介されてきました。

まず、完全にロバート・ジョン・マット・ラングの手を離れ、すべての楽曲をメンバーのみで制作。プロデュースも基本はセルフプロデュースという形に近く(パートナーに以前から携わるエンジニア、ピート・ウッドロフを迎えている)、完全に「当時やりたかったことを試した」実験作と言える内容。時代背景的には『ADRENALIZE』発売前後から勃発したグランジムーブメントを経て、1995年前後のOASIS vs BLURなどのブリットポップムーブメントという、完全にHR/HMが時代遅れとして扱われたタイミングなわけで、当のDEF LEPPARDも完全に“過去の遺産”的扱いを受けていました。

そんな彼らが、純粋に「グランジ、シンプルでカッコいいじゃん!」「ブリットポップ、わかるよ。だって俺らもイギリス人だし!」と感じたことをそのまま音に反映させた。つまり、元来持ち合わせているポップセンスはそのままに、オーバープロダクションが持ち味だった彼らのスタイルを180度真逆の「無駄を削ぎ落としたシンプルさ」「人工甘味料を排除し、素材をそのまま生かした味付け」へと昇華させたのがこの『SLANG』だったのです。

グランジやブリットポップのみならず、当時流行り始めていたインダストリアルロックのテイストまで取り入れた「Truth?」に、まずリスナーはびっくりしたことでしょう。「え、NINE INCH NAILS?」と苦笑いしつつ、“LED ZEPPELIN+インダストリアルロック”な「Turn To Dust」、ヒップホップの香りがするポップチューン「Slang」、グランジ的なシンプルな構成とモノトーンな味付けの「All I Want Is Everything」、グランジというよりもU2に近いものを感じる「Work It Out」、どこか当時流行のR&Bバラードに通ずるものがある「Breathe A Sigh」と、とにかく前半は驚きの連続。「Photograph」「Pour Some Sugar On Me」「Love Bites」を求める従来のファンを、まるで拒絶するかのような楽曲の数々に、そりゃあ虚説反応を示したくもなりますよね。

しかし後半になると、音は完全にグランジだけど彼ららしいメロディを持つ「Deliver Me」やもっとも従来のDEF LEPPARDに近い(けど味付けは現代的)「Gift Of Flesh」を筆頭に、音数に少なさに改めて驚かされるバラード「Blood Runs Cold」、サウンド的には『ADRENALIZE』以前の作品に入っていたとしても許容範囲ないなスローナンバー「Where Does Love Go When It Dies」、そしてドゥーミーなツェッペリン的ミディアムヘヴィナンバー「Pearl Of Euphoria」と、作風こそ現代的ですが意外と従来のDEF LEPPARDに近いものが感じられる楽曲たちが並びます。

そう考えると、序盤に新たな挑戦を並べて旧来のファンを振り落としていき、進めば進むほど彼らが本来持ち合わせるカラーへと戻っていく……そんな「聴く者を試す」1枚となっているのではないでしょうか。それくらい、当時の彼らは以前の自分たちの色を払拭させたかった、偏見なしに音で評価してほしかったのかもしれません。それがやりすぎだったとしても……。

ちなみに僕、当時からこのアルバムに関しては両手を上げて絶賛する派です。本作を携えた来日でも、武道館公演を複数観てますし、ジョー・エリオット(Vo)がライブでNIRVANA「Come As You Are」やOASIS「Live Forever」の弾き語りをしたのを観て微笑ましい気持ちになったことも、昨日のことのように覚えています。

なお、DEF LEPPARDは2014年に本作『SLANG』のデラックスエディションを自身のレーベルから発表しており、そこには『SLANG』収録曲の未発表バージョンなどが多数含まれています。正直、このバージョンだけでエントリー1本分語れるので、次回は続編としてこのデラックス版について紹介したいと思います。



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