DEF LEPPARD『LONDON TO VEGAS』(2020)
2020年5月末にリリースされたDEF LEPPARDのDVD/Blu-ray+CDセット作品『LONDON TO VEGAS』。昨日は本作から、単独発売もされた『HYSTERIA AT THE O2』について触れましたが、今日は『LONDON TO VEGAS』を購入しないと楽しめない『HITS VEGAS: LIVE AT PLANET HOLLYWOOD』について紹介したいと思います。
『HITS VEGAS: LIVE AT PLANET HOLLYWOOD』は2019年に“ロックの殿堂”こと「Rock & Roll Hall Of Fame」に見事選出されたDEF LEPPARDがこれを祝す形で、同年8月14日から9月7日まで12公演にわたりラスベガスのZappos Theaterにてデジデンシー公演を実施。同地区でのレジデンシー公演は2013年の『HYSTERIA』(1987年)再現ライブ以来、実に6年ぶりでした(この模様は同年発売の『VIVA! HYSTERIA』に収録)。
『HITS VEGAS』に収録されているのは、このうち9月6日と7日の模様。連日2時間近くにわたり22〜24曲を披露してきたLEPSですが、本作では日替わりで演奏された楽曲もまとめられ、全28曲/約2時間半というボリューミーな内容を堪能することができます。
映像収録スタッフがイギリスとアメリカとで異なることもあってか、先に紹介した『HYSTERIA AT THE O2』と映像の質感が異なることに最初は違和感を覚えます。『HYSTERIA AT THE O2』が映画的な質感だとすると、この『HITS VEGAS』はよりビデオ画質に近い生々しさが増しています。個人的な趣味だと『HYSTERIA AT THE O2』のほうがどこか高級さが伝わってくるのですが、メンバーの汗……特に上半身裸のフィル・コリン(G)の熱気がダイレクトに伝わるのは『HITS VEGAS』のほう。それぞれに一長一短があるわけですね。
この『HITS VEGAS』は、とにかく選曲が面白いんですよ。序盤にメガヒット作『PYROMANIA』(1983年)と『HYSTERIA』の楽曲を固め、しかも『PYROMANIA』からは「Die Hard The Hunter」や「Too Late For Love」「Billy's Got A Gun」などマニアックでヘヴィめな楽曲を立て続けに披露していく。そこから「Slang」というアメリカで大コケしたアルバム『SLANG』(1996年)の表題曲や、続く『EUPHORIA』(1999年)からの「Promises」や「Paper Sun」を演奏する構成は(こと日本ならまだしも)アメリカでは実験的と言わざるを得ないもの。
そこから「Let It Go」「Mirror, Mirror (Look Into My Eyes)」「Bringin' On The Heartbreak」「Switch 625」という2ndアルバム『HIGH 'N' DRY』(1981年)収録曲の応酬は、オールドファンならば生唾モノ。『HYSTERIA』以降しか知らないリスナーには逆に、新鮮に響くのかしら。にしても、「Bringin' On The Heartbreak」ではオープニングのツインリードが鳴り響いた途端に歓声が聴こえてくるあたり、さすが海外といいますか……これ、日本でも観たかったなあ……。
中盤にはアコースティックコーナーも用意。ここでは「Let Me Be The One」や「We Belong」というレア曲も披露されています。前者は『X』(2002年)、後者は最新作『DEF LEPPARD』(2015年)からと、当時のツアーでも披露していない貴重な代物。このコーナーではほかにも「Have You Ever Needed Someone To Bad」やお馴染みの「Two Steps Behind」も演奏されています。
後半ではさらに『X』から「Now」や『DEF LEPPARD』から「Let's Go」などもありますが、基本はヒットシングル曲が目白押しの構成。このへんは先の『HYSTERIA AT THE O2』とも重複するので割愛しますが、個人的にはアンコールの「Action」がうれしい選曲だなと。やっぱりアガリますよね、このアップチューンがあると。
80年代に重点を起きつつも、過去40年にわたるキャリアを総括するようなセットリスト。とはいえ、デビューアルバム『ON THROUGH THE NIGHT』(1980年)とメジャーからのラスト作『SONGS FROM THE SPARKLE LOUNGE』(2008年)からは1曲も選ばれていないのには、何か理由があるのでしょうか。まあ、これだけいい曲があったら、漏れてしまうのも仕方ないかな。
ここからは、話題をボックスセット『LONDON TO VEGAS』自体に移します。
昨日紹介した『HYSTERIA AT THE O2』は初心者にも優しい内容でしたが、今作を含むボックスを購入しようと思う方はそれなりにLEPS愛が強い方でしょう。そういう人なら確実に、持っていて損はしない一品です。この10年くらいで定期的にLEPSの映像作品が発売されるようになりましたが、本ボックスセットはその決定版と言える内容ではないでしょうか。国内盤は1万強と値が張りますが、対訳・字幕なしでもいいならリージョンフリーの輸入盤が7000〜8000円台でオススメです(僕は輸入盤BDを購入しました)。
音源にしても、『HYSTERIA AT THE O2』と『HITS VEGAS』とではトータル46トラック中10曲のみ(って多いか。笑)。とはいえ、重複するくらいなのでいい曲なのは間違いないので、聴き飽きることはないかもしれませんよ?
最近ボックスセット続きのDEF LEPPARDですが、来年あたりには新曲にも期待したいですね(もしくは『PYROMANIA』完全再現で来日とかね)。
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