VANDENBERG'S MOONKINGS『VANDENBERG'S MOONKINGS』(2014)
2014年2月リリースの、VANDENBERG'S MOONKINGSデビューアルバム。
VANDENBERG'S MOONKINGSは元VANDENGERG(当時)、元WHITESNAKE、元MANIC EDENのエイドラン・ヴァンデンバーグ(G)を中心に、ヤン・ホーフィング(Vo)、セム・クリストフェル(B)、マルト・ナイエン・エス(Dr)という故郷オランダの若手ミュージシャンたちとともに結成した4人組ハードロックバンド。エイドリアンにとって自身が全面参加するスタジオアルバムはWHITESNAKEの『RESTLESS HEART』(1997年)以来17年ぶりとなります。その間にはVANDENBERGのベストアルバム『DIFFERENT WORLDS: THE DEFINITIVE VANDENBERG』(2004年)のために名曲「Burning Heart」を再録するなどありましたが、基本的にはこの期間音楽活動はほぼ行っておらず、基本的にはエアブラシの絵画アーティストとしてひっそり暮らしていたようです。
そんな彼が17年ぶりに音楽活動を再始動させ、満を辞して完成させたVANDENBERG'S MOONKINGSのデビューアルバム。展開されているサウンドは、基本的には『RESTLESS HEARTS』やMANIC EDEN唯一のアルバム『MANIC EDEN』(1994年)で聴くことができたブルース・ベースのオールドスクール・ハードロックです。ただ、曲の派手さや親しみやすさはそういった過去の作品よりも突出したものがあり、このへんは若手ミュージシャンたちから触発されたものも大きかったのでしょうか。エイドリアンのギタープレイも、気持ちフレッシュさが増しているような印象を受けます。
「Good Thing」のポップなソウルフィーリングは、MANIC EDENあたりでも感じられた要素ですが、ヤン・ホーフィングという癖の強すぎないシンガーが歌うこと、そして女性コーラス隊の厚みあるハーモニーが加わることで、かつてないキャッチーさが伝わってきます。かと思えば、「Breathing」ではVANDENBERG時代の北欧フィーリングを漂わせている。このテイストもMANIC EDENだともう少しブルース色が強かったのですが……うん、これはWHITESNAKEでいうところの「Sailing Ships」(1989年の『SLIP OF THE TONGUE』収録曲)と同じ香りですね。
で、その「Sailing Ships」も本作でセルフカバーしております。しかも、この曲限定でWHITESNAKEのデヴィッド・カヴァーデイルがボーカルを担当。「80年代は腱鞘炎でレコーディングに参加できなかったけど、本来はこういうアレンジにしたかったんだよ!」という心の叫びが伝わってきそうな、穏やかながらもエモーショナルな仕上がりはなかなかのものがあります(できれば若い頃のカヴァーデイルの声で聴きたかった……)。
その他のハードロックナンバーに関しても一長一短あるものの、ブルースロックに特化したエイドリアンが好きなリスナーなら文句なしで楽しめる内容だと思います。間違ってもVANDENBERGの幻影をここに求めてはいけません……。
2014年という時代に本作はどこまでアピールできたのか?という課題は残りましたが、普遍性の強い作風/楽曲は聴く時期を選ばず楽しめるものではないでしょうか。
▼VANDENBERG'S MOONKINGS『VANDENBERG'S MOONKINGS』
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