BPMD『AMERICAN MADE』(2020)
2020年6月中旬にリリースされたBPMDの1stアルバム。
BPMDはボビー・“ブリッツ”・エルズワース(Vo / OVERKILL)、マイク・ポートノイ(Dr / SONS OF APOLLO、ex. DREAM THEATERなど)、マーク・メンギー(B / METAL ALLEGIANCE)、フィル・デンメル(G / VIO-LENCE、ex. MACHINE HEAD)というメタル/スラッシュ界のスタープレイヤーたちによるスーパーバンド。70年代のアメリカン・ハードロックをカバーするプロジェクトとして立ち上げられ、このデビュー作でもおなじみのUSハードロックの名曲(や日本人には馴染みの薄い、現地では人気の楽曲)をたっぷりカバーしています。
カバーの内訳は以下のとおり(曲名後のカッコは原曲アーティスト名)。
01. Wang Dang Sweet Poontang [テッド・ニュージェント]
02. Toys In The Attic [AEROSMITH]
03. Evil [CACTUS]
04. Beer Drinkers & Hell Raisers [ZZ TOP]
05. Saturday Night Special [LYNYRD SKYNYRD]
06. Tattoo Vampire [BLUE ÖYSTER CULT]
07. D.O.A. [VAN HALEN]
08. Walk Away [THE JAMES GANG]
09. Never In My Life [MOUNTAIN]
10. We're An American Band [GRAND FUNK RAILROAD]
日本人リスナーにも馴染みがあるのはM-2とM-7、M-10ぐらいでしょうか。M-5もロックファンなら一度は耳にしたことがあるでしょうし、M-3やM-5あたりもかな。そういった意味では、当時を知らないリスナーには「70年代の大陸的なUSハードロックの名曲」を「モダンでタイトなメタルサウンド」で楽しめる、良質なコンピレーションアルバムとして機能することでしょう。
ブリッツのあの金切り声で歌われたら、そのどれもがOVERKILLのようにも聴こえてくるんだけど(もともとOVERKILLもカバー曲が多いバンドですしね)、演奏がOVERKILLとは違うぶんの新鮮さもあり、かつ楽曲からは思ったほど古臭さが感じられない。エヴァーグリーンってこういうことを言うんでしょうね。個人的には「Saturday Night Special」が驚きの1曲で、原曲にあったサザンロック臭が払拭され、完全にグルーヴィーなメタルチューンに再生されている。「Tattoo Vampire」もスピードメタルそのものだし、「D.O.A.」なんてギターのフレーズこそVAN HALENのコピーだけど、曲全体の雰囲気はパワーメタル的な要素が強まっている(デヴィッド・リー・ロスが歌わないとこうなるのか)。
一方で、「Toys In The Attic」や「We're An American Band」のような手垢の付いた王道ナンバーは原曲を超えられないのも、まあなんとなく納得といいますか。特に後者なんてアレンジ変えない限りは難しいんでしょうね。このアルバムを聴くと、カバーの楽しさと難しさの両方を改めて実感させられます。
年間ベストに選ぶような気合いの入った傑作とは言えませんが、普段気を抜いて楽しむぶんには持ってこいの1枚。カバーする側とされる側のギャップ含めて、良質な作品だと思います。
▼BPMD『AMERICAN MADE』
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