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新録作品としては企画アルバム『PRIMEVAL』(2020年)以来1年4ヶ月ぶり、オリジナルアルバムとしては『SAMSARA』(2019年)から約3年ぶりとなる待望の新作。デビューから一貫して所属してきたProsthetic Recordsを離れ、今作からCentury Media Recordsへと移籍。これにより、日本でもようやく国内盤が流通することになりました。
新たなプロデューサーとしてスコット・アトキンス(CRADLE OF FILTH、GAMA BOMB、SAVAGE MESSIAHなど)を迎えた本作は、バンドにとって真の勝負作になるであろう注目の1枚。かつて『SAMSARA』のレビューにおいて、僕は「この2ndアルバムを起点にして、続く3rdアルバムで間違いなく“化ける”はずです」と記しており、続く企画盤『PRIMEVAL』のレビューにおいても新曲に対して「この2曲だけでも、VENOM PRISONがさらに進化を遂げていることが伺えるし、ますます純然たる3rdアルバムの発表が楽しみになってきました」と書き残しています。そんな期待感高めで接した今作、想像以上に“化けて”いました。
2ndアルバムではデスメタルやハードコア、グラインドコアからの影響が強い残虐なサウンドが軸になっていましたが、続く企画盤に収められた新曲(「Defiant To The Will Of God」「Slayer Of Holofernes」)からはプログレッシヴな展開を持つアレンジが強まり、かつメロディアスな側面もちらほらと見受けられましが。今作はそういった「Defiant To The Will Of God」「Slayer Of Holofernes」の流れを汲みながらも、さらにソングライティング力、バンドのアレンジ力がブラッシュアップされた、ある意味正統派ヘヴィメタルにも接近した、親しみやすさの増した作風に仕上げられています。
アルバムの冒頭を飾るイントロダクション「Born From Chaos」の時点で、抒情的な要素が強まっていることが伝わりますが、続く「Judges Of The Underworld」ではそのテイストが全開に。ギターフレーズが織りなすメロウ&ドラマチックな要素、ラリッサ・ストゥーパー(Vo)の強烈な咆哮とその後ろに重ねられたクリーンボーカルの織りなすハーモニーは、過去の作品とはタイプの異なる美しさを楽しむことができる。各楽器とボーカルのミックスバランスも非常に良好で、この手のジャンルとしては異常に聴きやすい作りになっています。なので、全10曲/約49分をフルで何度もリピートしてもまったく耳が疲れないんです。
そんな良質な楽曲群の中で、特に賛否を呼びそうなのが5曲目の「Pain Of Oizys」。ここではラリッサが思いっきりクリーントーンで歌うパートの比重が高く、そのゴシック色の強い曲調と相まった、悲しさと美しさが同居する強烈な名曲に仕上げられています。過去のアルバムや初期のEPにこそこのバンドの個性を見出していたリスナーには問題作かもしれませんが、VENOM PRISONをさらに一段高い場所へと導くためには必要な変化だと個人的には感じています。
本作には2015年に発表された2枚のEP(『DEFY THE TYRANT』『THE PRIMAL CHAOS』)に収録された全9曲に新曲2曲を加えた、原点と最新スタイルが横一列に並べられた1枚。自主レーベルからリリースされた『DEFY THE TYRANT』などは録音状態も非常にアレなので、最新の整理された録音で聴くことにより、改めてVENOM PRISONの原点を見つめ直すことができる貴重な機会となりました。
構成的にはリリース順に並べられている形で、M-1「Usurper Of The Throne」からM-5「Defy The Tyrant」までの5曲が1st EP『DEFY THE TYRANT』収録、M-6「Babylon The Whore」からM-6からM-9までの4曲が2nd EP『THE PRIMAL CHAOS』収録で、それぞれ2019年12月に前作『SAMSARA』(2019年)を手がけたトム・ドリングによりレコーディング/ミックス/プロデュースされました。楽曲の構成やBPMは大きくいじられることなく、基本的には原曲のアレンジに忠実。「Life Suffer」のアウトロが原曲より30秒くらい長く引っ張られるなどの変化も見受けられますが、そこまで大きく気になりません。
一方で、新たに制作された新曲2曲……M-10「Defiant To The Will Of God」とM-11「Slayer Of Holofernes」は前9曲とは一線を画する、完全に“2020年スタイルのVENOM PRISON”です。2曲とも複雑に入り組んだアレンジを要する楽曲で、2〜3分台が中心だった初期楽曲と比べると「Defiant To The Will Of God」なんて5分近くもある構成で、その詰め込み具合に驚かされます。また、「Slayer Of Holofernes」には暴虐さの中にもメロウなラインも挿入されており、こちらも新機軸の1曲に仕上がっている。この2曲だけでも、VENOM PRISONがさらに進化を遂げていることが伺えるし、ますます純然たる3rdアルバムの発表が楽しみになってきました。