COVET『TECHNICOLOR』(2020)
2020年6月初頭にリリースされたCOVETの2ndアルバム。
このバンドはギタリストとしてもその卓越したプレイで注目を集めるイヴェット・ヤング(G)と、デヴィッド・アデアミック(B)を中心に結成された3ピース・インストゥルメンタル・バンド。2018年にフォレスト・ライス(Dr)が加入すると、同年に1stアルバム『EFFLORESCE』をリリースし、POLYPHIAとともにジャパンツアーを行い、好評を博しました。
前作から約2年ぶりに届けられたこの2ndアルバムでも、基本的なスタイルはそのままに、プレイヤーとしてもバンドとしてもさらに進化した姿を届けてくれています。いわゆるヘヴィメタル的なバンドとは異なるので、ディストーション系のギターが中心というわけではありませんが(それでも前作より多めにフィーチャーされていますが)、ラウドロック的な色合いはほのかに感じられるかもしれません。かつポストロックやマスロック、あるいはプログレやフュージョンなどの要素もミックスされており、例えばMOGWAIやEXPLOSIONS IN THE SKYなどを好むHR/HM、ラウド系リスナーなら十分に受け入れられる内容かと思います。
今作での大きな冒険といえば、初めてボーカルナンバーが収録されたことでしょう。「Parachute」でいきなり飛び込んでくるイヴェットの歌声は、意外にも可愛らしいさがにじみ出ており、楽曲が持つムーディーな世界観と見事にマッチ。本作における強烈なフックとなっております。
楽曲も1分半程度の短尺なものから7分近い大作までバラエティ豊かで、よくある「インストで6、7分の曲が続くアルバムって最後まで飽きずに聴けるの?」という不安は一切感じることなく、最後まで聴き通すことができます。というのも、やはりタイトで縦横無尽に変化するリズム隊と、色彩豊かでメロディアスなイヴェットのギタープレイが、テクニカルなのに鼻につかないのが大きいのかなと。BGMとして流し聴きもできますし、楽器経験者が聴けば各パートの技量に驚かされて夢中になってしまう。そういった意味でも、やっているジャンルのわりに幅広い層にアピールできる良作と言えるのではないでしょうか。
個人的なお気に入りは、「Parachute」や「Farewell」といったボーカルナンバーと、「Nero」「Ares」などテクニカルさを存分にフィーチャーした長尺ナンバー。これ、ライブでどう表現するんだろうな? ぜひ一度観てみたいな……そう誰もが思うのではないでしょうか。特に変拍子を巧みに取り入れた「Aries」は、生で観たら圧巻だろうなあ……。
日本盤には「Predawn」と前作収録の「Shibuya」の、各アコースティック・バージョンを追加収録。こちらも味わい深い仕上がりなので、ぜひCDで日本盤を購入して聴いていただきたいところです。
▼COVET『TECHNICOLOR』
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