MIKE SHINODA『DROPPED FRAMES VOL.2』(2020)
2020年7月31日にデジタルリリースされたマイク・シノダ(LINKIN PARK)の3rdソロアルバム。
今年7月10日に『DROPPED FRAMES VOL.1』と題した2作目のソロアルバムを配信リリースしたばかりの彼ですが、そこから3週間というハイペースで届けられた今作はタイトルどおりその続編に当たる内容。コロナ禍により外出自粛期間が続く中、動画配信プラットフォームTwitchで多くのファンと交流しながら音楽とアートを制作し始めたマイクが、毎日決まった時間に動画配信を行い、視聴者らの意見も取り入れながら音楽とアートワークを作り上げ完成に至ったという、まさにファンとの共同作業で生まれた1枚です。
前作ではオープニングトラック「Open Door」のみが歌モノで、それ以外の11曲はインストゥルメンタルという実験色の強い内容でしたが、今回に関しては歌モノ皆無。前作よりもモダンなエレクトロミュージックやダンスミュージック、ダウナーなヒップホップなどの要素が強まった、より遊び心の強い1枚に仕上がっています。
どの曲も1分台から最長で3分台半ばと短尺のものばかりで、完璧に作り込まれた完成品というよりは、その完成品へと至る過程をそのまま凝縮した「ネタの宝庫」的短編集と呼ぶほうが最適な内容かもしれません。本来なら、これらを元ネタに壮大な楽曲を作り上げていくのでしょうが、このプロジェクトはそこまでが目的ではなく、あくまでファンと楽しみながらひとつの作品を作っていくことを主軸としている以上、こういったプレイリスト的な形で世に放たれるのが正解なのでしょうね。肩肘張って作り込んでいないからこそ、聴く側も緩くリラックスして楽しむことができる。このシリーズに関してはこれでいいんだと思います。
今回は「Isolation Bird」でマニー・マーク、「Astral」でイリース・トルー、前作収録曲の続編にあたる「Channeling, Pt. 2」にダン・マヨがそれぞれフィーチャーリングアーティストとしてクレジットされています。イリース・トルーはループステーションを巧みに操る女性シンガーソングライター/マルチプレイヤーで、ダン・マヨは知る人ぞ知るイスラエル出身のジャズ/エレクトロニカ系ドラマー。マニー・マークに関してはここで説明するまでもないでしょう。こういったコラボ相手の人選からも、マイクがこの企画を通して何を表現したかったかがなんとなく伺えるのではないでしょうか。
ゲーム音楽的な8ビット風ダンスミュージックから、どこかモンド風のオサレ・ヒップホップ、さらにはエレクトロニカへと通ずるエレクトロミュージックまで、幅広いように見えて実は焦点がしっかり定まっている。全12曲で30分強というトータルランニングも手伝って、スルッと聴けてしまう1枚です。
▼MIKE SHINODA『DROPPED FRAMES VOL.2』
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