×ジャパリ団『×・×・×』(2020)
ゲーム&アニメ『けものフレンズ』シリーズから誕生したユニット、×ジャパリ団(ばってんジャパリだん)が2020年7月初頭にリリースした1stアルバム。
なぜこのアルバムを当サイトで取り上げるのかといいますと、そのサウンドと楽曲提供アーティストの豪華さから。すでにリアルサウンドさんでアーティスト分析とメンバーインタビューが公開されていますが、当サイトでは改めて楽曲について細かく触れていきたいと思います。
アルバムとはいうものの、収録されているのは歌モノ5曲と、その5曲からのインストバージョン2曲の計7曲。時間にして31分とこのご時世にしては決して長いとは言えないボリュームですが、それを補って余るほど濃厚な内容だと断言できます。
オープニング曲にして×ジャパリ団のテーマソングである「ジャパリ狂詩曲〜×ジャパリ団のテーマ〜」の作曲・アレンジおよびギタープレイなどを手がけるのが、GALNERYUSのSYU(G)。SYUらしい派手なギターフレーズ&ソロと、キーボードやドラムとのユニゾンが際立つフレーズの数々、適度な転調を含むメロディラインは正統派ヘヴィメタルそのもの。これを小野正利が英詞で歌ったら、まんまGALNERYUSとして成立する、アニソン関連だからとバカにできない高品質な1曲です。
続いて、MVも制作されたリードトラック「確固不×論」は、作曲&アレンジをOUTRAGEの阿部洋介(G)&丹下眞也(Dr)が担当。レコーディングには阿部がギター、安井義博(B)がベースで参加した「ほぼOUTRAGEの新曲」なのです。静かに始まるオープニングからスラッシーなバンドサウンドへと移行する構成、思わずシンガロングしたくなる四字熟語パートとギターソロ……これもボーカルを橋本直樹の歌声に置き換えたら、まんまOUTRAGEなんですよね。カッコいいったらありゃしない。
「どきどき黙示録」は、かのマーティ・フリードマンが作曲&ギターを担当した、本作の中ではもっともポップ度の高い1曲。マーティが愛するPUFFYをHR/HMに置き換えたらこうなるんじゃないか?というパワーポップ感も散りばめられた、80’sヘアメタル的1曲と言えるでしょう。そして、本作では唯一非HR/HMソングライターの手によるミディアムバラード「絆ふぉーえばー」も、「80年代後半のハードロックにこのタイプのバラードってあったよね?」と満足のいく仕上がり。女性ボーカル効果と相まって、VIXENあたりとリンクするんじゃないかな。
ラストはCYNTIAのYUI(G)が作曲とギターで携わった、ストレートなハードロックナンバー「×レゾンデートル」。オープニングの「ジャパリ狂詩曲〜×ジャパリ団のテーマ〜」と対になる疾走チューンですが、前者がクラシカルな王道だとしたら、本曲はよりモダンな造りなのかな。同系統のようで実は起点が異なる、だからこそどの曲も個性がバラバラで面白い。非常に充実した5曲だからこそ、フルアルバム並みの充実度が味わえるわけです。
メンバー3人の歌も、決して歌い上げることなく、けど適度な熱が伝わってくるもの。これこそが、アニソンとしても通用するバランス感なのだと思うのですが、いかがでしょう。だって、これを本域で歌い上げちゃったら、それはもうただのHR/HMですからね(それが良い/悪いは別として、企画ありきのキャラソンとして制作する以上、このバランスは必要なわけで。ただのHR/HMを作りたいのだったら、この企画でやる意味がないと思うのです)。
さらに、SYUのギターとアレンジ力を存分に味わえる「ジャパリ狂詩曲〜×ジャパリ団のテーマ〜」のインストバージョンと、OUTRAGEになりきって熱唱できる「確固不×論」のインストバージョンまである。HR/HMファンなら、偏見抜きで触れていただきたい1枚です。
▼×ジャパリ団『×・×・×』
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