MEGADETH『DELIVERING THE GOODS』(2023)
2023年2月17日にリリースされたMEGADETHのデジタルシングル。
この曲はJUDAS PRIESTが“ロックの殿堂”こと『Rock & Roll Hall Of Fame』に選出されたことを記念して、MEGADETHがプリーストへのリスペクトを込めてレコーディングしたもの。昨年11月にAmazon Musicなど一部配信サービスで限定公開されていましたが、このタイミングでApple MusicやSpotifyなど大手プラットフォームでも配信がスタートされました。
ご存知のとおり、「Delivering The Goods」はプリーストの5thアルバム『KILLING MACHINE』(1978年)のオープニングを飾る名曲。プリーストがヘヴィメタルバンドと呼ばれるようになるギリギリのタイミングに制作された1曲ですが、ギターリフの鋭さやヘヴィだけどしなやかなリズムワークにはその後の片鱗を存分に感じ取ることができ、これがのちの『BRITISH STEEL』(1980年)に収録されていたとしても違和感ゼロ。うん、名曲ですね。
MEGADETHによるカバーバージョンは聴いていただけばわかるように、ダウンチューニングでレコーディングされたもの。あくまで『Rock & Roll Hall Of Fame』選出を祝福するためのリスペクトカバーであるため、演奏やアレンジに関しては原曲から大きく外れておらず、サウンドからMEGADETHらしさを存分に感じられるかと言われるとちょっと微妙かな(個人的には原曲よりちょっとBPMを落としたところは減点対象)。
ただ、デイヴ・ムステイン(Vo, G)という唯一無二の個性的な歌声を持つシンガーが歌うことで、間違いなく“MEGADETHの楽曲”として成立しており、そこは安心感を持って楽しめるはず。中盤のギターソロに関しても大佐(デイヴ)とキコ・ルーレイロ(G)が弾き分けていると思いますが、正直どっちがどっちかはわかりません(原曲のメロディを尊重したプレイなのも大きいか)。
MEGADETHは初期から定期的にカバー曲を発表しておりますが、その選曲は比較的王道感の強いものばかりで、その傾向は活動後期に進むにつれて強まっている気がします。最新アルバム『THE SICK, THE DYING... AND THE DEAD!』(2022年)ではDEAD KENNEDYS「Police Truck」とサミー・ヘイガー「This Planet's On Fire (Burn In Hell)」という、だいぶわかりやすい名曲をピックアップしていますから。そういった意味でも、今回のプリーストカバーも選曲/内容含めど直球すぎやしないか?と思った方は少なくなかったはずです。
各プレイヤー陣の個性を強く反映させたカバーをセレクトするよりも、純粋に自分(=デイヴ)のルーツ、しかもそれはNWOBHMみたいなバンドとしてのルーツではなくて、デイヴ個人の音楽人生における原点を振り返るようなもので、それはそれでMETALLICAとは違って面白いと思います。もしMEGADETHがカバーアルバムを制作したら、かなりわかりやすい内容になるんじゃないかな……なんてことも想像できてしまうこの1曲。微笑ましさ満載の内容です。
▼MEGADETH『DELIVERING THE GOODS』
(amazon:MP3)