カテゴリー「Marty Friedman」の13件の記事

2023年2月28日 (火)

MEGADETH JAPAN TOUR 2023@日本武道館(2023年2月27日)

Img_6664 思えば、MEGADETHにとって日本武道館という場所はある種の鬼門でもありました。今から30年前の1993年3月、彼らは全米2位の大ヒット作となった『COUNTDOWN TO EXTINCTION』(1992年)を携えて4度目のジャパンツアーを行う予定でした。僕自身はマーティ・フリードマン(G)、ニック・メンザ(Dr)が加わった編成での初アルバム『RUST IN PEACE』(1990年)を提げた3度目のジャパンツアー(1991年2月)が初のMEGADETH体験だったので、1993年は2回目となる予定でした。

しかも、バンドにとって初の日本武道館公演を含むツアー。当時、METALLICAですら武道館は未経験(その代わり、武道館をすっ飛ばして先に代々木体育館や東京ドームを経験済み。彼らの初武道館は1998年)だったわけで、当時のスラッシュメタル出身バンドにとっては快挙でした。確か当時、僕はアリーナのチケットを確保していたはずで、当初の予定から一回延期になった記憶が。マーティとジュニア(デヴィッド・エレフソン)がプロモーション来日して、武道館の前で撮影した写真も当時の雑誌で目にした記憶があります。

しかし……メンバーの健康問題で来日はキャンセルに。それがデイヴ・ムステインの薬物問題が理由であることを、数ヶ月後に知ることになります(当時は今みたいにネットがないから、情報伝達がだいぶ遅れましたし)。がっかりだったんですよ。武道館で観たかったんですよ。なのに……失望です。アルバムは聴いていたけど、そこまで夢中になることはなく、続く『YOUTHANASIA』(1994年)のツアーも、1997〜98年と2度も実現した『CRYPTIC WRITINGS』(1997年)のツアーも敬遠。結局、再び彼らのステージを目にするのは10数年後の2006年10月、『LOUD PARK』初年度でのことでした。以降も何度かライブを観てきましたが、どこかネガティブな気持ちを抱えたまま向き合っていた気がします。

そんな思いに変化が生じたのが、前回の来日公演(2017年5月)。自分も大人になったからか、ちょっと許せるようになってきたのかな。その後、デイヴの咽頭癌発症(2019年)で活動が滞ったり、ジュニアがスキャンダルでバンドを解雇(2021年)とトラブルが続きましたが、そうした困難を乗り越えて完成させた約6年半ぶりの最新アルバム『THE SICK, THE DYING... AND THE DEAD!』(2022年)の出来が素晴らしかったことも大きく影響し、再びこのバンドに対してポジティブな気持ちで臨めるようになりました。なもんですから、久々の来日、しかも鬼門でもある武道館が30年ぶりに実現すると知った日には、すぐに申し込んでいた気がします。

ライブ開催1〜2ヶ月前、座席の位置が確定。なんとアリーナBブロック中央。ちょうど武道館のアリーナど真ん中くらいでしょうか。良席。しかも、30年前の罪滅ぼしかというくらい、似たような席。ああ、当日はどんな感情で彼らのステージを目撃することになるんだろう。

さらに、ライブ開催数週間前には、ゲストとしてマーティ・フリードマンがステージに立ち、数曲をセッションするとのこと。当然あの曲はやるとして……ああ、ここで30年分の清算を済ますのか。そんな気持ちで当日、武道館へと向かいました。

……以上、ここまでが前置き(笑)。本編は以下になりますよ。

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2020年7月23日 (木)

MARTY FRIEDMAN『SCENES』(1992)

1992年11月にリリースされたマーティ・フリードマンの2ndソロアルバム。日本盤は『シーンズ〜憧景〜』という邦題にて、翌1993年2月に発売されました。

マーティのソロ作品としては、1988年発表の『DRAGON'S KISS』以来、4年ぶりのオリジナル作品。前作制作時はCACOPHONYに在籍していたこともあり、はたまた相方のジェイソン・ベッカー(G)を意識してなのか、『DRAGON'S KISS』はShrapnel Records所属ギタリストらしく速弾きを駆使したメタリックな作品でした。そんな中にも、東洋音楽のフレージングやメロディが随所に散りばめられており、これがのちのMEGADETH加入につながったと言われています。

MEGADETH加入後に発表されたこの2ndアルバム、全8曲中前半4曲をかの喜多郎が、後半4曲をマーティ自身とスティーヴ・フォンタノがプロデュースを手がけるという異色の内容に。もっとも、すでにこの頃にはマーティの東洋音楽(特に歌謡曲や演歌といった日本の音楽)への傾倒ぶりは知れ渡り始めていたので、喜多郎とのコラボレーションもなるほどと納得するものがあったのは事実です。

レコーディングにはMEGADETHでの盟友ニック・メンザ(Dr)が全面参加。すべての楽曲にドラムがフィーチャーされているわけではありませんが、バンドアンサンブルが楽しめる楽曲ではニックのダイナミックなプレイを楽しむことができます……が、だからといって『DRAGON'S KISS』的メタリックな楽曲は皆無。すべてミドル/スローテンポで統一されたムーディな楽曲群を、重いヒットながらもメロディの邪魔をしない的確なプレイで支えています。

ディストーションギターよりもクリーントーンを中心としたメロウなプレイの数々は、非常にエモーショナルかつセンチメンタリズムが強調されたもので、確かに演歌的な“泣き”の要素も感じ取ることができます。しかし、完全に演歌そのものかと言われるとまったくそんなこともなく、むしろヨーロッパのバンドあたりにも通ずる“泣き”に近いものがあるのかな。日本人がそのへんの音に惹きつけられるのって、実はそのへんの感覚が非常に近いのかもしれませんね。

「Realm Of The Senses」のオープニングや曲中に日本の演歌的な女性のセリフがフィーチャーされていたり、マーティの奏でるメロディもまんま演歌だったりと(笑)、一歩間違えばズッコケ要素になりかねないのですが(1曲だけ抜き出せばそうなりかねない)、このアルバムの流れで聴けば成立するこの世界観。ハマったら抜け出せないものがあるのは確かです。

マーティのソロ作品中もっとも異質な1枚ですが、実は一番好きなギター・インストゥルメンタル・アルバムはこれなんですよね。発売から30年近く経つクラシック的作品ですが、今でもリラックスしたいときにBGMとして活用する、間違いなくマーティのベスト・ワークのひとつです。

 


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2020年7月22日 (水)

KIKO LOUREIRO『OPEN SOURCE』(2020)

ANGRA、現MEGADETHのギタリスト、キコ・ルーレイロによる5作目のソロアルバム。海外では2020年7月初旬から配信されていますが、日本では同年7月22日に、海外に先駆けフィジカル(CD)リリースとなります。

2015年にMEGADETHに加入してから初のソロ作となるこのアルバムでは、現ANGRAのリズム隊であるフェリッペ・アンドレオーリ(B)とブルーノ・ヴァウヴェルデ(Dr)がプレイ。フェリッペは前作『SOUNDS OF INNOCENCE』(2012年)に続いての参加となります。キコの卓越したリフワーク&ソロプレイが存分に楽しめる作品に仕上がっているのですが、それ以上にリズム隊の超絶アンサンブルが耳に残る作品でもあり、ギタリストのソロ作品ではあるものの、同時に各プレイヤーの個性や技量がしっかりと表現された、聴きどころの多い1枚と言えるでしょう。

全体的にはHR/HMのテイストが強い楽曲で占められますが、その随所随所にフュージョンやコンテンポラリー・ミュージック、キコの故郷であるブラジル音楽の影響が垣間見え、そのバランス感含め気持ちよく楽しめる内容かなと。個人的にギタリストのインストアルバムって、ただ弾きまくればいいってわけでもないですし、かといってそのギタリストの個性がどこまで表面化しているかも重要になってくるので、どれもが何度もリピートして楽しめるようなものばかりではないと思っているのですが、本作に関して言えばメロディがしっかりしていること、かつジェントなどを含むモダンなテキストが散りばめられていることもあり、歌がなくても十分に成り立つ“聴き応えのある”1枚と断言できます。

メタルファン、およびMEGADETHファン的に特筆すべきポイントは、3曲目の「Imminent Threat」にマーティ・フリードマン(G)がゲスト参加していることでしょうか。90年代のMEGADETHといえばこの人ありきでしたし、MEGADETHを一気にメジャー化させることに成功したのもこの人による功績がかなり大きかったはず。またキコに関して言えば、MEGADETHで過去の楽曲をプレイするときに必ず意識する人であり、悪く言えば「目の上のたんこぶ」的存在だったんじゃないかなと(笑)。そんなレジェンドとこのたび初共演を果たすことで、これまで方々に散っていた点と点がつながった。ファンとしても喜ばしい限りではないでしょうか。

なんていいながらも、そういったボーナスポイントが霞んでしまうほどに、本作はそのほかの楽曲も優れているので、マーティ参加はあくまでオマケくらいに捉えておきましょう。モダン・メタルが好きなリスナー、ジェントと聴いて反応するリスナーなら、本作は間違いなく引っかかるポイントが多く用意されている、オススメのインスト作品です。

なお、日本盤のみ「Overflow」「Imminent Threat」「Du Monde」のバッキングトラック(ソロパートのみを除いた、ギターのバッキング&リズム隊によるバック・トラック)がボーナストラックとして収録。これだけでも十分にインスト楽曲としてレベルの高さを感じ取ることができるし、かつギター弾きにはうれしい“マイナス・ワン”音源でもあるのかな。

 


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2020年7月20日 (月)

×ジャパリ団『×・×・×』(2020)

ゲーム&アニメ『けものフレンズ』シリーズから誕生したユニット、×ジャパリ団(ばってんジャパリだん)が2020年7月初頭にリリースした1stアルバム。

なぜこのアルバムを当サイトで取り上げるのかといいますと、そのサウンドと楽曲提供アーティストの豪華さから。すでにリアルサウンドさんでアーティスト分析メンバーインタビューが公開されていますが、当サイトでは改めて楽曲について細かく触れていきたいと思います。

アルバムとはいうものの、収録されているのは歌モノ5曲と、その5曲からのインストバージョン2曲の計7曲。時間にして31分とこのご時世にしては決して長いとは言えないボリュームですが、それを補って余るほど濃厚な内容だと断言できます。

オープニング曲にして×ジャパリ団のテーマソングである「ジャパリ狂詩曲〜×ジャパリ団のテーマ〜」の作曲・アレンジおよびギタープレイなどを手がけるのが、GALNERYUSのSYU(G)。SYUらしい派手なギターフレーズ&ソロと、キーボードやドラムとのユニゾンが際立つフレーズの数々、適度な転調を含むメロディラインは正統派ヘヴィメタルそのもの。これを小野正利が英詞で歌ったら、まんまGALNERYUSとして成立する、アニソン関連だからとバカにできない高品質な1曲です。

続いて、MVも制作されたリードトラック「確固不×論」は、作曲&アレンジをOUTRAGEの阿部洋介(G)&丹下眞也(Dr)が担当。レコーディングには阿部がギター、安井義博(B)がベースで参加した「ほぼOUTRAGEの新曲」なのです。静かに始まるオープニングからスラッシーなバンドサウンドへと移行する構成、思わずシンガロングしたくなる四字熟語パートとギターソロ……これもボーカルを橋本直樹の歌声に置き換えたら、まんまOUTRAGEなんですよね。カッコいいったらありゃしない。

「どきどき黙示録」は、かのマーティ・フリードマンが作曲&ギターを担当した、本作の中ではもっともポップ度の高い1曲。マーティが愛するPUFFYをHR/HMに置き換えたらこうなるんじゃないか?というパワーポップ感も散りばめられた、80’sヘアメタル的1曲と言えるでしょう。そして、本作では唯一非HR/HMソングライターの手によるミディアムバラード「絆ふぉーえばー」も、「80年代後半のハードロックにこのタイプのバラードってあったよね?」と満足のいく仕上がり。女性ボーカル効果と相まって、VIXENあたりとリンクするんじゃないかな。

ラストはCYNTIAのYUI(G)が作曲とギターで携わった、ストレートなハードロックナンバー「×レゾンデートル」。オープニングの「ジャパリ狂詩曲〜×ジャパリ団のテーマ〜」と対になる疾走チューンですが、前者がクラシカルな王道だとしたら、本曲はよりモダンな造りなのかな。同系統のようで実は起点が異なる、だからこそどの曲も個性がバラバラで面白い。非常に充実した5曲だからこそ、フルアルバム並みの充実度が味わえるわけです。

メンバー3人の歌も、決して歌い上げることなく、けど適度な熱が伝わってくるもの。これこそが、アニソンとしても通用するバランス感なのだと思うのですが、いかがでしょう。だって、これを本域で歌い上げちゃったら、それはもうただのHR/HMですからね(それが良い/悪いは別として、企画ありきのキャラソンとして制作する以上、このバランスは必要なわけで。ただのHR/HMを作りたいのだったら、この企画でやる意味がないと思うのです)。

さらに、SYUのギターとアレンジ力を存分に味わえる「ジャパリ狂詩曲〜×ジャパリ団のテーマ〜」のインストバージョンと、OUTRAGEになりきって熱唱できる「確固不×論」のインストバージョンまである。HR/HMファンなら、偏見抜きで触れていただきたい1枚です。

 


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2015年10月 5日 (月)

MEGADETH『RISK』(1999)

ニック・メンザが脱退し、ジミー・デグラッソが加入して制作された本作は、インダストリアルノイズなどの打ち込み要素を積極的に取り入れ、ポップな曲はよりポップさを追求したという意味でMEGADETH史上最大の問題作と呼ばれることの多い1枚。

1曲目の「Insomnia」で一瞬たじろぐも、続く「Prince of Darkness」「Crush 'Em」は前作までの流れを汲むミドルヘヴィチューンなので一瞬安心。しかし5曲目「Breadline」で他のアーティストとCDを間違えたんじゃないかと確認したくなることだろう。とはいえ「I'll Be There」のような不思議な魅力を放つ楽曲もあり、決して駄作とは言い切れないところも。個人的には「MEGADETHであってMEGADETHではない」アルバムという位置付けで、非常に気に入っているアルバムでもある。

実は本作、オリジナル盤と2002年のリミックス&リマスター盤とではかなり印象が異なる。もしかしたら再発盤のミックスのほうが従来のファンには入りやすい1枚かもしれない。そしてこのアルバムをもってマーティも脱退。彼がもたらそうとした変革は続くアルバムですべてひっくり返されるのだった。

 

以下、1999年9月に旧「とみぃの宮殿」にて掲載した、本作のクロスレビューを再掲。

 

* * * * * * * * * *

 

正直、この中では俺が一番MEGADETHと程遠い位置にいるんじゃないのかな、今? つうのは俺、93年に彼等と決別してるので‥‥理由は「COUNTDOWN TO EXTINCTION」における来日公演の2度に渡る延期・中止騒動。俺は初の武道館公演のアリーナチケットを持っていた。「そうか、MEGADETHもいよいよ武道館か‥‥」という感慨深い思いがあったのは事実だ。その時点で7年目のファンとして、そして最高傑作のツアーで武道館公演‥‥最高のシチュエーションだった。が‥‥知っての通り、今日現在まで彼等の武道館公演というのは実現していない。

これを機に彼等への熱は冷めた。アルバムこそチェックを入れてきたものの、傑作と言われる前作「CRYPTIC WRITINGS」でさえも、今現在手元にない。俺にとって「今のメガデス」とはその程度の存在なのだ。 正直な話、今回のアルバムにもそれまでと同様の接し方をするつもりだった‥‥そう、シングルナンバーである"Crush 'Em"を耳にするまでは‥‥

  今回の新作「RISK」には5つの「なぜ‥‥」がある。

 

・何故彼等はこの安定期に「リスク」と名のつくアルバムを制作したのか?
・何故アルバムジャケットにネズミ捕りを使ったのか?
・何故彼等は今回の新作のプロモーションに際しての露出を総合音楽誌「rockin'on」やバラエティー番組(「笑っていいとも」や「LOVE LOVE 愛してる」)と幅を広げたのか?
・何故新作のブックレットには歌詞が載っていないのか?
・何故バンドのロゴマークを変えたのか?

 

この5つの謎に対する答えを述べるつもりはない。何故なら、その答えこそ今までMEGADETHを聴いた事のなかった人達に探し出して欲しいからだ。そういう内容の作品になっていると思う。

何故俺が新曲"Crush 'Em"にドキリとしたか‥‥理由は簡単。「MEGADETHであってMEGADETHではなかった」からだ。イントロからしてインダストリアル・ノイズ、そしてディスコ調のベースライン&ギターフレーズ。デイヴのボーカルがなかったらメガデスとは気付かないのかもしれない。が、そのデイヴのボーカルでさえも彼特有のヒステリックさを抑え、むしろセクシーさすら感じさせる。大きなリズム、メロディー自体は普通の曲なのだが、今のMEGADETHがプレイすることによって生じる『うねり』のようなものを感じる。この『うねり』‥‥正直、今までの彼等に感じなかったものだ。これが何を意味するのかは判らない。が、明らかに彼等は次のフェイズに進もうとしている。最初のスラッシュ3部作を第1期とし、「RUST IN PEACE」~「CRYPTIC WRITINGS」の不動のメンバー期を第2期とすると、明らかにこの新作から次の1歩を踏み出しているのが判る。ある意味集大成的内容だった前作と比べると、今作には前作までにあった要素と新しい実験的要素が入り交じっているのが確認できる。もしかしたらこれは『次の1歩』というよりは 『過渡期』的作品なのかもしれない。

今までにない要素として、1曲目の"Insomnia"を挙げることができる。イントロのインダストリアル・ノイズ、ドラムマシン使用など。バックトラックさえ差し換えればテクノチューンとしてクラブなどでも流せるんじゃないか?と思わせる、シークエンスするギターリフ。確かにこのように攻撃的なナンバーは「COUNTDOWN TO EXTINCTION」などにも収録されていた。が‥‥明らかに質感が違う。勿論「COUNTDOWN~」の楽曲も洗練されていたが、この"Insomnia"はもっと‥‥それまでの楽曲の亜流ではなく、明らかに何か別の要素が混入した楽曲になっている。それは所謂『ヘヴィメタル以外の何か』だろう。その『ヘヴィメタル以外の何か』は"Seven"からも感じ取れる。この曲こそ南部出身のロックンロールバンド‥‥ZZ TOPのようなバンドを思い浮かべた。特に後半のシャッフル・ビートなんて往年のブギーバンドだ。昔のメガデスだったらここのアレンジ、1stの"These Boots"のような性急なビートを刻んでいただろう‥‥これを成長と呼ぶか、後退と呼ぶかで評価は変わってくるのかもしれない。

もうひとつの今までにない要素‥‥それは『メロディーの質感の変化』だろう。これが一番大きい気がする。第2期を見てみると、後期に進むにつれてデイヴ単独作曲の楽曲が減っていく。特に新作では全12曲中8曲がデイヴとマーティ・フリードマン(Gt)との競作になっている。デイヴ単独作曲は先の"Insomnia"と最終曲"Time:The End"の2曲だけだ。勿論、これだけで『メロディーの質感の変化』を唱えるわけではない。確かに今までもマーティとデイヴは競作してきた。が、今作では何かが吹っ切れたかのような開き直りを感じ取れる。その開き直りとは何か?

今作のメロディーラインで特に印象的な楽曲を3曲挙げなさい、と言われれば俺は"I'll Be There", "Ecstasy", "Time:The Beginning"を挙げる。この3曲はデイヴ/マーティの競作曲だ。とにかく、このメロウな感触、日本的ではないだろうか? 例えば演歌だったり、70年代の歌謡曲だったり。これまでにもMEGADETHの楽曲には日本を感じさせるギターフレーズが多々登場した。これは日本贔屓のマーティの趣味なのはよく判る。が、歌メロにここまであからさまに登場したのは今回が初めてだと思う。確かにヘヴィメタルというジャンルには多少演歌的要素を感じ取る事ができるが、このMEGADETHの新曲は全く別ものだ。そしてそのメロディーラインの判りやすさが『ポップさ』を生み出しているのも確か。"Breadline"なんて普通のハードロックバンドが演奏してもおかしくないし、逆に80年代のJUDAS PRIESTが演奏したとしても俺的には何ら違和感はない。

では今まであった要素はどうか? これは所謂『王道路線』と呼ばれる、典型的なMEGADETHソングを指す。例えば"Prince Of Darkness"や"The Doctor Is Calling"のようなミドルテンポのヘヴィチューン。これなどは「YOUTHANASIA」以降のメガデスが得意とするパターンだ。『王道』とは言っても一歩間違えばそれは『セルフパロディー』と化してしまう危険性を兼ね備えている。自分達の過去のヒット曲の焼き直し/水で薄めたバージョン‥‥これを連発していった結果、消えていったバンドが如何に多いか‥‥これはMEGADETH自身がよく理解しているはずだ。だからこそ上に挙げた2曲は『セルフパロディー』では終わらなかった。それは『デイヴの表現力の向上』が原因ではないだろうか? 某雑誌でアルバムリリース毎に「これでボーカルの表現力がもっとあれば‥‥」と言われ続けたデイヴ。ある種オジー・オズボーンと一緒でキャラクター勝負なところが今まであったが、今回ばかりは違う。最近のジェームズ・ヘットフィールド(メタリカのVo & Gt)がそうであったように、楽曲の幅が広がった結果、自ずと歌の表現力をのばす結果となった。あるいは逆かもしれない。今回のデイヴにも同様なイメージを受けた。時々唄い回しがジェームズを彷佛とさせる場面もあったが(笑)ここまで唄えるようになれば大したもんだと思うが。

 確かに今までの要素を含みつつも新たな道へ進もうとしているMEGADETH。このアルバムを聴いたメタルファンはもう彼等の事を『メタルバンド』とは呼ばないのかもしれない。逆にこれまでMEGADETHを『メタルバンド』と認識してきたごく一般の音楽ファンは、MEGADETHのことをどう捉えるのだろうか‥‥実はこの辺が今回一番重要なポイントになるのではないか? MEGADETHの音楽的変化。これを成長と捉えるか、裏切りと捉えるか‥‥今回のアプローチはあくまで『MEGADETHを敬遠してきた/拒絶してきた人間への挑戦状』だと僕は捉えている。なおかつ、今まで彼等を支えてきたファンにもアピール出来る楽曲‥‥何となくデイヴの構想が見えてくる。この挑戦、少なくとも俺にとっては成功したようだ。もう1度彼等に注目する機会を作ったのだから。が、刺激的か?と問われれば、残念ながらそうではない。ものすごく安心して聴ける内容になっている。ハイ・クオリティーな楽曲・演奏・歌。それまでのメタル・ファンに対してはリスクを伴う挑戦なのかもしれない。が、「リスク」というタイトル通りに本当のリスクを伴うのは次作からなのかもしれない。   

 


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MEGADETH『CRYPTIC WRITINGS』(1997)

思いつきで急遽始めたこの「MEGADETH全アルバム私的レビュー」。第1回は80年代の3作品(1st〜3rd)第2回はマーティ・フリードマン&ニック・メンザ加入後の黄金期3作品(4th〜6th)についてでしたが、続く第3回は黄金期崩壊〜マーティ脱退〜そして解散へという下り坂期の3枚(7th〜9th)です。ここに、8th後にリリースされたベストアルバム『CAPITOL PUNISHMENT: THE MEGADETH YEARS』を加えたレビューとなります。

正直、この時期のMEGADETHにはあまりいい思い出がないのですが、唯一のめり込んだ『RISK』という異色作があるので、まだモチベーション的には高かったほうかもしれません。でもこの機会にあの時期の作品を聴き返してみたら当時の記憶以上には悪く思えなかったし、逆に「あれ、そこそこいいじゃん」とも思えてきたので、この企画やってみてよかったと思いました(個人的に)。

まずは1997年春に発表された、ムステイン、エルフソン、マーティ、ニックの黄金期布陣としては最後のアルバムとなった7枚目。前作での過渡期的不調が嘘のような、ある種開き直ったと思えるほど清々しい「ポップでキャッチーなHR/HM」を聞かせる1枚。

5th『COUNTDOWN TO EXTINCTION』(1992年)から彼らが挑んできた「コンパクトでキャッチーなミドルテンポ」な作風の究極型と言えるような内容で、前作に足りなかった「She-Wolf」をはじめとするファストチューンが加わったことでそのバランス感はより際立ったものとなっている。

METALLICA「Enter Sandman」をポップにしたような1曲目「Trust」、サビの軽快なノリに思わずツッコミを入れたくなるほどドポップな「Almost Honest」など、それまでの活動を踏まえれば首を傾げたくなるような楽曲もあったりするので、個人的にはそこまでのめりこめなかった作品かも。

とはいえラスト3曲の攻めまくる構成は(曲調、構成の違いはあれど)80年代の尖った頃を彷彿とさせ、やっぱりMEGADETHだな!と納得させられてしまう部分もある。ごく私的ツボ楽曲はアグレッシヴな展開の「Use The Man」と泣きの「A Secret Place」。

 


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2015年10月 4日 (日)

MEGADETH『HIDDEN TREATURES』(1995)

1995年当初、日本のみでリリースされていた過去のカバー曲やアルバム未収録曲を集めたコンピレーションアルバム。アリス・クーパー「No More Mr. Nice Guy」やBLACK SABBATH「Paranoid」、再びSEX PISTOLSから「Problems」をカバーするなど、MEGADETHにしてはストレートな楽曲ばかりなのが面白味に欠けるかも。

その他には日本盤ボーナストラックとして既発の「Breakpoint」「New World Order」などもあり。個人的には、なかなかの出来なのにアルバム本編に収録されることのなかった映画サントラ提供曲(『ラスト・アクション・ヒーロー』の「Angry Again」、『ビルとテッドの地獄旅行』の「Go to Hell」など)をまとめて聴けるという意味で非常に重宝した1枚。

どうせなら「Anarchy In The U.K.」や「I Ain't Superstitious」といったアルバムに収録されたカバー曲も集めた、完璧なカバー&サントラ提供曲集にすればもっと価値が高まったのかも。

まあ今となってはコアなファン向けの1枚で、オリジナルアルバムを全部聴いた人が最後に揃えればいいかも(「Angry Again」あたりは後のベストアルバムにも収録されてるし)。



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MEGADETH『YOUTHANASIA』(1994)

MEGADETH通算6枚目にしてムステイン、エルフソン、マーティ、ニックという黄金期布陣で制作された3作目のスタジオアルバム。

コンパクトでメロウなミディアムテンポの楽曲が中心というアルバム構成は、セールス的に大成功した前作から引き継いだもの。実際、チャート的にも前作の2位に次ぐ4位という高順位にランクインしており、グランジ全盛だった時期にしては大健闘した記憶が。しかし、アルバムとしての印象が非常に希薄で、ファンの間でも「これがベスト!」という人は少ないのでは。

とはいえ、1曲1曲の完成度は高いものが多く、ザクザクしたリフが気持ちいいオープニング「Reckoning Day」、前曲の流れを汲むグルーヴィな「Train of Consequences」、後にリメイクもされる泣きのバラード「A Tout le Monde」、初期のニヒルさが復活しつつある「Victory」などは今聴いてもいいと思う。

ただ、やはり全体的に似たり寄ったりのテンポ感&雰囲気の曲が続くことで、1枚通して聴くにはちょっと厳しいかも。久しぶりに通して聴いたけど、やっぱりキツかったというのが本音。後に迎える大きな転換期を前にした過渡期的作品。

 


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MEGADETH『COUNTDOWN TO EXTINCTION』(1992)

1992年にリリースされた通算5作目のスタジオアルバムにして、MEGADETH最大のヒット作。前作で感じられた変革の予感が、ここで一気に開花した1枚。ビルボード2位、セールス的にも過去最高の200万枚という結果を残した作品だけど、いわゆるスラッシュメタルから脱却したことで一部ファンからは踏み絵のような1枚なのかもな、という気も。

前年にリリースされ天文学的大ヒットとなったMETALLICAの“ブラックアルバム”に対するMEGADETHからの回答というか、とにかくミドルテンポ中心で、どの曲もMEGADETHにしてはコンパクトにまとまったものばかり。中には「Sweating Bullets」のようなシャッフルリズムの変化球もある。

個人的には後半、ストレートなファストチューン「High Speed Dirt」からこれまでのように複雑な展開を持つラストナンバー「Ashes In Your Mouth」の流れ/構成がお気に入り。

良い解釈をすれば、ムステインが先細りになりつつあったメタルシーンを背負う覚悟を決めた1枚と受け取れる。実は聴く頻度の高いアルバム1位がこれ。でも……このアルバムタイミングで武道館公演が決まっていたのに結局ムステインの悪い癖で中止になってしまったことで、個人的にはあまりいい印象のない時期でもあるわけだが。



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MEGADETH『RUST IN PEACE』(1990)

思いつきで急遽始めたこの「MEGADETH全アルバム私的レビュー」。前回まではは80年代の3作品(1st〜3rd)でしたが、2回目となる今回はマーティ・フリードマン&ニック・メンザ加入後の黄金期3作品(4th〜6th)についてです。

で、全アルバムを聴き返してるうちに「これは触れておいたほうがいいな?」と思う企画盤についても、その都度触れていこうかと思いまして。なので当初の予定では14枚だったものが、15、6枚になる予定です。今回のタイミングで言えば、6thの後にリリースされた『HIDDEN TREATURES』がこれに当たるかと……といことで、今回もかなり偏ったレビューになると思いますので、まあこういう意見もあるよ程度に受け取っていただけるとありがたいです。

というわけで、1990年秋に発表された4thアルバムについて。アルバムタイトルが3作続いた『◯◯... ◯◯◯』スタイルから、一気にシンプルに(その名残か、アルバムには「Rust in Peace... Polaris」という収録曲も)。マーティ・フリードマン&ニック・メンザという黄金期メンバーがここで揃い、アルバムもインテレクチュアルスラッシュから一歩抜け出した感が強いものに。

オープニングから「Holy Wars... The Punishment Due」「Hangar 18」という後世に伝えたい名曲が続き、後半にはメロディアスな疾走メタル「Lucretia」「Tornado of Souls」が構えるなど、その後のMEGADETHのスタイルがここでひとつ確立した印象。マーティという異彩を放つギタリストの加入は、こんなにも大きくバンドのその後を左右したんだなと、その後の歴史を踏まえつつ改めて実感。最近キコ・ルーレイロを加入させたのも、結局そういうことなんだろうな、と。

ここまで名曲揃いと書いてきたものの、実は個人的にはアルバムとして今ひとつの印象を持っている。アルバムを通して聴いたときに2ndや3rdほどの凄みを感じないというか。これも個人的主観なのだが……。

 


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