3 DOORS DOWN『THE BETTER LIFE』(2000)
2000年2月にリリースされた3 DOORS DOWNのデビューアルバム。日本盤は海外から少々遅れ、同年6月末に発売されました。
アメリカ・ミシシッピー州エスカタウパで1996年に結成された5人組バンドの彼らは、2000年1月に先行リリースされたデビューシングル「Kryptonite」が全米3位まで上昇する大ヒットを記録し、続いて発売された本アルバムも全米7位、現在までに700万枚ものセールスに達するメガヒット作となりました。なお、本作からはほかにも「Loser」(全米55位)、「Be Like That」(同24位)、「Duck And Run」といったシングルが生まれています。
いわゆるポスト・グランジの枠から登場した3 DOORS DOWNですが、聴けばわかるように特段新しいことをしているわけではありません。むしろ、90年代半ばから脈々と続く「土着的なアメリカン・ロックとグランジ以降のオルタナティヴ・ロックの融合」をセオリー通りに形にした、非常に優等生的なサウンド/楽曲がずらりと並ぶアルバムで、だからこそキャッチーでラジオ・ライクな「Kryptonite」がバカ売れしたんでしょう。
2000年というとUSロックシーン的にはLINKIN PARKやDISTURBED、PAPA ROACHといったニューメタルバンドが次々とメジャーデビューを果たしたタイミング。そのラインで捉えようとすると、3 DOORS DOWNはちょっと異質な印象を受けます。むしろこのバンドは、90年代のUSロックシーンを牽引し続けたPEARL JAMやCREEDの正統的後継者であり、『SILVER SIDE UP』(2001年)で爆発的ブレイクを迎えるNICKELBACK、のちに『LEAVE A WHISPER』(2003年)でデビューヒットを果たすSHINEDOWNらをオーバーグラウンドへと導いた次世代の先駆者だったのではないか?と捉えることができます。
先の「Kryptonite」の完璧なまでのポップネスは言うに及ばず、グランジ世代にはたまらない「Loser」や「Down Poison」、そのキャッチーなメロディが耳に残る「Be Like That」、90年代のUSロックのイメージを見事に引き継ぐ「Life Of My Own」や「So I Need You」、印象的なギターリフを持つ「The Better Life」や「By My Side」など、とにかく1曲1曲がしっかり作り込まれており、とてもデビュー作とは思えない完成度。だからこそ、本作がリリースされた当時は「出来過ぎ!」と若干敬遠気味だったことも、良くも悪くも本作らしさを物語っているのではないでしょうか。
海外と比べ、日本では決して知名度の高いバンドとは言えませんが、だからこそ本作がなぜいきなりメガヒットを果たしたのか、実際に聴いてその理由を確認してもらいたいところです。
▼3 DOORS DOWN『THE BETTER LIFE』
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