THE ACACIA STRAIN『SLOW DECAY』(2020)
2020年7月24日にリリースされたTHE ACACIA STRAINの9thアルバム。日本盤未発売。
THE ACACIA STRAINは2001年に結成された、アメリカ・マサチューセッツ州出身の5人組メタルコア/デスコア・バンド。メンバーチェンジの非常に多いバンドで、現在結成時からのオリジナルメンバーはヴィンセント・ベネット(Vo)のみ。2016年に現在の編成に落ち着き、8thアルバム『GRAVEBLOOM』(2017年)、コンセプトEP『IT COMES IN WAVES』(2019年)と2つのまとまった作品集を発表しています。
『IT COMES IN WAVES』から数えれば約7ヶ月ぶりの新作、フルアルバムとしては約3年ぶりとなる本作は、ウィル・パットニー(THE GHOST INSIDE、KNOCKED LOOSE、PIG DESTROYERなど)のもとを離れ、新たにランディ・ルブーフ(KUBLAI KHAN、LEFT BEHIND、GIDEONなど)がプロデュースを担当。今春より『D』『E』『C』『A』『Y』と題した5枚の2曲入り7インチシングルを発表し続けたバンドは、それらの全収録曲10曲に2つの未発表新曲を加えたこの『SLOW DECAY』が集大成的作品として発表するわけです。
過去作でも毎回ゲストミュージシャンを複数迎えてアルバム作りを続けてきた彼らですが、今作には4名のボーカリストがフィーチャリングアーティストとして参加。「Seeing God」にはJESUS PIECEのアーロン・ハード、「The Lucid Dream」にはMORTALITY RATEの紅一点ジェス・ニックス、「I breathed in the smoke deeply it tested like death and I smiled」にはLEFT BEHINDのザック・ハットフィールド、そして「One Thousand Painful Stings」には元IWRESTLEDABEARONCE、現SPIRITBOXのコートニー・ラプランテがそれぞれ華を添えています。
「Seeing God」や「One Thousand Painful Stings」のようなアップチューンもあるものの、このバンドの場合はミドル/スローテンポを中心としたドゥーミーな楽曲こそ本領発揮する傾向が強く、そのへんのスタイルは90年代のPANTERAやSEPULTURA、MACHINE HEADなどのグルーヴメタルにも通ずるものがあるような気がします。だから、デスコアと言われてしまうと個人的には「?」と首を傾げてしまうのですが(実際、メンバーもそう呼ばれることを嫌悪しているらしく)、その要素がゼロかというとそんなこともないのかな。ただ、直接的な表現はほとんどないものの、どこかサイケデリックさが秘められた作品だなとも感じました(それが『SLOW DECAY』というタイトルにもつながるのかな)。
「ゆっくり腐敗していく」「静かに朽ち果てる」などの意味を持つタイトルが非常にぴったりなテンポ感を持つヘヴィな作品集で、どこか儚さを感じさせるアルバムジャケットとのつながり含め、聴き終えたあとにある種の余韻を持たせる良作だなと思いました。決して何度もリピートできるような作風ではありませんが、一度聴き終えたあとはその世界観をしっかり噛みしめて次に臨みたい。そんなことを思わせてくれる不思議な1枚です。
▼THE ACACIA STRAIN『SLOW DECAY』
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