XIBALBA『Años En Infierno』(2020)
2020年5月末にリリースされたXIBALBAの4thアルバム。日本盤は同年6月初頭に発売。
日本語読みで「シバルバ」「ジバルバ」と表記されることの多いこのXIBALBAというバンド名は、「恐怖の場所」を意味するキチェ族のマヤ神話における冥界の名とのこと(Wikipedia情報)。日本のレーベル表記では「ジバルバ」となっております。バンドのほうのXIBALBAはカリフォルニア出身のブルータルハードコア・バンドで、バンド名からも伝わる非英語圏要素とスペイン語を用いた歌詞、デスメタルからの影響を強く感じさせながらも軸足はあくまでハードコアというスタイルで人気を博しています。ここ日本にもすでに4度も来日するほどの親日家で、それもあってここ日本でも一部で高く評価されています。
EP『Diablo, Con Amor... Adios.』(2017年)を挟みつつ、前作『Tierra y Libertad』(2015年)から実に5年ぶりのフルアルバムとなる本作。プロデューサー&エンジニアにアーサー・リズク(POWER TRIP、SACRED REICH、DEATH OF LOVERSなど)を迎え制作したそのサウンドは、ハードコアバンドらしいスピード感とスラッジや初期デスメタルにも通ずるスロー&ヘヴィさを変幻自在に操る、非常にブルータルなものに仕上がっています。ドゥーミーなスローパートはパーカッシヴさが強調されており、そういった攻撃性とダンサブルさを併せ持つスタイルがブラジル出身のSEPULTURAやSOULFLYにも通ずるものがあると感じています。
実際、本作は特にトライバルなリズムが強化された印象を受けますし、ミドル&スローなヘヴィさに特化したその作風はどこかSEPULTURAの名作『ROOTS』(1996年)にも通ずるものがあります。「デスメタルなのか、それともハードコアなのか?」という論争もあるようですが、そのへんは聴く人それぞれが判断すればいいだけのことであり、僕個人は本作のヘヴィで残虐なのにパーカッシヴでダンサブルという作風は、90年代後半以降のモダンメタルを引き継ぎつつ、現代的に消化した最新型のエクストリームメタルと解釈しています。
この手のバンドの場合、低音や歪みに気を取られすぎてミックスがぐちゃぐちゃになるケースも少なくないのですが、本作は何気に聴きやすくミックスされているのが印象的。だからなのか、通して聴いてもまったく耳が疲れないんですよね。これって非常に稀有なことで、トータルで全8曲/35分前後(日本盤はボーナストラックを含む全9曲約40分)という適度な長さもあって、気づけばリピートしている自分がいるんです(終盤2曲を除き、1曲1曲が2〜4分程度というのも大きいのかな)。これって、この手のバンドのアルバムにしては(自分にとって)本当に珍しいこと。それくらい、出している音やバンドスタイルと相反して(笑)、聴きやすい良作ではないでしょうか。
この手のバンド/サウンドに苦手意識を持っているビギナーにも、ぜひ一度試してもらいたい1枚です。
▼XIBALBA『Años En Infierno』
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