CREEPER『AMERICAN NOIR』(2021)
2021年7月30日にリリースされたCREEPERの最新EP。日本盤未発売。
本作は昨年7月にリリースされた彼らの2ndフルアルバム『SEX, DEATH & THE INFINITE VOID』(2020年)に続く、まとまった新曲音源集。フロントマンのウィル・グールド(Vo)の実際の人生が反映されたコンセプトアルバムだった前作の流れを引き継いだ、ストーリー的にもサウンド的にも正統的続編に当たる1枚に仕上がっています。
前作の主人公である少年ロウの死後、ヒロインのアナベルが悲しみ荒れる姿を描いた本作。ウィルによると「前作アルバム制作の過程で作ったもので今回のEPは構成されているんだ。主人公の少年ロウの死後のストーリーを余すことなく、悲劇的に物語っている。先行シングルの『Midnight』では俺とハンナ(・グリーンウッド)の声をいままでにない形で実験しているんだ」とのことで、当初から想定されていた続編のようです。
全8曲中インタールードが3曲なので、歌もの楽曲は全5曲。トータルで約19分という比較的短い作品集ではあるものの、その内容は非常に濃厚なもの。エモやポップパンク中心だった1stアルバム『ETERNITY, IN YOUR ARMS』(2017年)とは完全に一線を画する、ブリティッシュロックの歴史をなぞったクラシカルなゴシックロックが展開されています。
エモーショナルさは『ETERNITY, IN YOUR ARMS』、そして前作『SEX, DEATH & THE INFINITE VOID』にも匹敵するものがあり、ここまでの流れを好意的に受け入れてきたリスナーには満足の1枚と言えるでしょう。前作りリース後にドラマー、リズムギタリストが相次いで脱退し、レコーディングは残された4人で行ったようです(ジャケットには新加入のドラマーの姿も)。
ヒロイン視点のレクイエムということもあり、今作では紅一点のハンナ・グリーンウッド(Vo, Key)が大活躍。これまではバックボーカルに徹することの多かったハンナですが、曲によってはコ・リードボーカル的役割も果たすほか、M-4「Ghosts Over Calvary」やM-7「Damned And Doomed」ではではソロでリードボーカルを務め、各楽曲に華を添えています。
そういった変化が、結果として前作以上にバラエティに富んだ印象を与えることとなった今作。EPというポジションではあるものの、内容/ボリューム的には2.5枚目のフルアルバムと呼ぶにふさわしい重要作ではないでしょうか。この耽美で濃厚な音世界は個人的にかなりど真ん中。ここらでひとつ、日本でもブレイクしてほしいところですが、来日公演もままならない現状では難しいのかなと。
THE YELLOW MONKEYや毛皮のマリーズなど、古き良きグラムロックの影響下にあるロック/ポップスが好きなリスナーになら絶対に響くものがあるはず。騙されたと思って、ぜひ『SEX, DEATH & THE INFINITE VOID』と併せてチェックしてみてください。日本人の琴線に触れずものがたくさん詰まっていますから。
▼CREEPER『AMERICAN NOIR』
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