BLUES PILLS『HOLY MOLY!』(2020)
2020年8月21日にリリースされたBLUES PILLSの3rdアルバム。
BLUES PILLSは2011年に結成された、アメリカ人&スウェーデン人混合の4人組バンド。紅一点のエリン・ラーソン(Vo)がスウェーデンからアメリカ・カリフォルニアを訪れた際に現地在住のザック・アンダーソン(G。当時はB)と前任ドラマーが出会ったことを機に、デモテープを制作。2014年には1stアルバム『BLUE PILLS』をNuclear Blast Recordsからリリースし、その半世紀前を思わせるスモーキーでソウルフル、かつサイケデリックなロックサウンドで注目を集めます。
前任ギタリストの脱退を経て、ザックがギターにシフト。新たにクリストファー・スシャンダー(B)を迎えた編成で制作された今作は、バンド初のセルフプロデュース作品。ウクライナ在住のアーティスト、ダリア・フラザトヴァが手がけたアートワークにも通ずる、いい意味で時代錯誤なロックサウンドを鳴らしています。
エリンの歌声は“ジャニス・ジョプリンの再来”と言われているようですが、確かにそれも理解できる声質/歌唱スタイルです。が、個人的にはグレイス・スリック(JEFFERSON AIRPLANE、STARSHIP)を彷彿とさせる瞬間もあるかなと。まあ、要するにあの時代(1960年代末)の香りが漂ってきそうな歌声ってことです。
楽曲のスタイル的にはソウルやブルースベースのガレージロックがベースで、そこにハードロック的なカタルシスを随所に散りばめていたり、サイケなサウンドエフェクトを多用したりと、“らしさ”を2020年に再現させることに成功しています。これ、録音状態がもうちょっとチープだったりモノラル録音だったりしたら、制作された時代がまったく読めなくなりそうですよね。
「Proud Woman」のような力強いメッセージを放つロックアンセムや、パンクにも通ずる前のめり加減がたまらないアップチューン「Low Road」、まさにジャニスっぽいロッカバラード「California」、ジャジーな香りのするスローナンバー「Dust」、サイケデリックなガレージロック「Kiss My Past Goodbye」など、楽曲の幅は思った以上に広く、さすがアルバムも3枚目とあって随所に工夫が見られるのも本作の特徴でしょうか。前作から4年というインターバルも、創作面において良い作用をもたらしたようですね。
新しい要素は皆無なスタイルですが、終始安心して楽しめる1枚。「彼らが今後のロックシーンを大きく変える!」なんてことは口が裂けても言いませんが、こういうバンドが安心して活動できるようなシーンを維持してもらいたい。本作を聴くとそんなことをぶと思ってしまいます。
▼BLUES PILLS『HOLY MOLY!』
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