TOUCHÉ AMORÉ『LAMENT』(2020)
2020年10月9日にリリースされたTOUCHÉ AMORÉの5thアルバム。日本盤未発売。
TOUCHÉ AMORÉはロサンゼルス出身の5人組ポストハードコアバンド。2007年の結成以来数々のEPやライブ作品、アルバムを発表しており、過去にはDeathwishなどにも在籍していました4thアルバム『STAGE FOUR』(2016年)からはEpitaph Recordsに移籍。オリジナルアルバムとしては同作から4年ぶり、新作音源としては昨年発表した『DEAD HORSE X』(1stアルバム『...TO THE BEAT OF A DEAD HORSE』の再レコーディングアルバム)以来1年ぶりの新作に当たります。
プロデューサーを前作までのブラッド・ウッドからロス・ロビンソンへと変更し、制作に臨んだ本作。疎外感や怒り、死生観をテーマに作品を作り続けてきた彼らが、そういったテーマに最適なプロデューサーをセレクトした印象がありますが、本作にはそういった人間の暗部のみならず共感や愛情などポジティブさにも目が向けられており、よりエモーショナルさが増した印象を受けます。
純粋なポストハードコアというよりも、エモを通過したポストハードコアやメロディックハードコアの延長線上にある楽曲/サウンドは非常に聴きやすく、適度にささくれ立った棘がむしろ気持ちよく感じられるほど。ロス・ロビンソンが制作に携わったことから過激でエクストリームな内容を予想していましたが、想像していた以上に整理された内容ではないでしょうか。そういった意味では肩透かしを食らいましたが、だからといって内容が悪いわけではなく、むしろ曲が進むごとにグイグイと引き込まれていく自分がいました。
たぶん、本作は人間の内側のドロドロした部分から外側に向けて光を見出そうとする、そんな作品を目指したんじゃないかと思うんです(それは先のテーマから想像がたやすいはず)。そういった姿勢は各楽曲の節々から感じ取れるし、中でもアルバム中盤に位置する「Limelight」あたりからは眩いまでの明るい未来が伝わってくる……のは気のせいではないはずです。
で、その光を求める姿勢は曲が進むごとにどんどん強まっていき、一瞬ブラストビートが楽しめる「Savoring」(ここでのエモさ、たまらんです)、ペダルスチールをフィーチャーしたスローナンバー「A Broadcast」を経て「I'll Be Your Host」「Deflector」でクライマックスを迎える。ラストの「A Forecast」はどこかエピローグのようにも感じられ、アルバムは非常に前向きな形でエンディングを迎えられたのではないか……最後のドラムフレーズが鳴り終えひと通り聴き終えたときにそう素直に感じました。
過去の作品と比較すると若干異質に映るかもしれませんが、こういった質感のアルバムを2020年に届けるあたりに彼らが“今”とどのように向き合っているのかが伝わってきて、個人的にも好感が持てます。できることなら、歌詞をしっかり吟味しながら楽しみたい1枚です。
▼TOUCHÉ AMORÉ『LAMENT』
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