ARCH ECHO『STORY I』(2020)
2020年10月2日にリリースされたARCH ECHOの最新EP。
ARCH ECHOは2016年にバークリー音楽大学出身メンバーを中心に結成された、ツインギター/ドラム/ベース/キーボードの5人組インストゥルメンタルバンド。資料によると「DREAM THEATER、ANIMALS AS LEADERS、PERIPHERYなどのプログレッシヴメタルの影響を受けながらも、ジョージ・ベンソンからもレコメンドされるようにジャズ〜フュージョンの要素も取り込んだ新世代テクニカルバンド。全編インストゥルメンタルの楽曲を高速リードや複雑なリズム&変拍子、そしてめまぐるしく変わる展開も難なくこなしながらもテクニカル一辺倒ではなく、エモーショナルなメロディを聴かせるサウンドスタイル」と紹介されており、実際音を聴いてみるとなるほどと頷けるものがありました。
僕はこのEPと、国内盤で同時リリースとなった1stアルバム『ARCH ECHO』(2017年)の2作品を同じタイミングに聴かせてもらったのですが、リードトラック「To The Moon」からもわかるように、いわゆるプログレメタル的なヘヴィ&複雑な展開を含みつつも、とにかく(リードギターが奏でる主旋律的)メロディを大事にした楽曲作りが印象に残り、個人的にも好印象を受けましたリリース前に資料をいただいてからここ1ヶ月強、特にこのEPはかなりの頻度でリピートしています。
「Strut」あたりにはPERIPHERYをはじめとするジェント勢からの影響も見え隠れしますし、その中にはEDMの要素も散りばめられている。だけど、単なる複雑展開とテクニカルなバンドプレイを重視したメタルでは済まされない、フュージョン的な心地よさもしっかり存在しているから、リラックスしながら聴いていても聴き流せそうで聴き流せない個性を放っている。簡単な言葉ですが、すごく個性的な(クセの強い)バンドだなと思いました。
プログレやフュージョン流れというと、どうしても1曲が長い印象を受けてしまいがちですよね(そんなこともない?)。しかし、本作はラストを飾る「Measure Of A Life」こそ7分15秒と長尺ですが、日本盤ボーナストラックを除く全4曲のうち3曲が4〜5分台、最長でも5分ちょうどくらいというコンパクトさ。これも演奏技術を誇示することに執着するのではなく、あくまで楽曲ありき、メロディありきであることの現れなんじゃないかと解釈しています。ギターやシンセのリフやメロディも耳に残るインパクトの強いものばかりで、意外と口ずさめてしまうから不思議。それくらい、適度なキャッチーさをキープしているからこそ、こうやって何度もリピートして楽しめるんだろうなと。
この手のインストバンドはどうしても各プレイヤーの強烈なテイクにカルプレイに耳が行きがちですが、本作は楽曲の親しみやすさの中に技術力の高さを散りばめるという、本来あるべき姿を見せてくれる好印象の1枚です。
なお、日本盤のみRUSH「YYZ」のカバーを収録。そうか、RUSHなのか……と妙に納得。このRUSHカバーを中心に、上記の要素や個性がすべてつながったような気がします。そういう意味でも、ストリーミングでは聴くことができない「YYZ」カバーを含む日本盤CDでの購入をオススメします。
▼ARCH ECHO『STORY I』
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