VICIOUS RUMORS『CELEBRATION DECAY』(2020)
2020年8月21日にリリースされたVICIOUS RUMORSの13thアルバム。日本盤は同年8月19日に先行発売。
結成から40年以上、アルバム『SOLDIERS OF THE NIGHT』(1985年)でのデビューから数えても今年で35周年という記念すべき年に発表された、前作『CONCUSSION PROTOCOL』(2016年)から4年ぶりの新作。今作からニック・コートニー(Vo)という新メンバーを迎え、節目のタイミングに極力なパワーメタルアルバムを届けてくれました。
……なんて書きましたが、前作リリース時から初期メンバーのジェフ・ソープ(G, Vo)、ラリー・ハウ(Dr)以外の3人が入れ替わっているんですけどね(笑)。ちなみに、現メンバーはニック、ジェフ、ラリーのほかロビン・ウトブルト(B/2020年加入)、ガンナー・デュグレイ(G/2017年加入)の5人。ロビンは本作完成後に加入したのか、アルバムにはゲストプレイヤーとしてグレッグ・クリスチャン(B/ex. TESTAMENT)が参加しています。久しぶりに聞いた名前ですね(笑)。
さて、筆者はこのバンドを80年代後半から90年代初頭まで……アルバムでいうと2nd『DIGITAL DICTATOR』(1988年)から4th『WELCOME TO THE BALL』(1991年)まで、つまりカール・アルバート(Vo/1995年逝去)しか知りません。その耳で(約30年もの月日を飛び越えて)いきなりこの新作と接したわけなので、予備知識はほぼないといってもいい状態。そんな自分が聴いても、素直にカッコいい、気持ち良いヘヴィメタルアルバムだと思いました。
まず、ニック・コートニーというシンガーが非常に“現代的”であること。パワーメタルを歌うには十分すぎるほどのディストーションボイスの持ち主で、声域も適度にハイトーンが出るといった程よさが備わっており、同時に説得力も持ち合わせている、なかなかの逸材ではないでしょうか。80年代にもこういうタイプのシンガー、たくさんいたもんね。故デヴィッド・ウェイン(ex. METAL CHURCH)とか。“現代的”というのは、デスメタルやメタルコア以降のスタイルも随所から感じられることを示しており、それらを前面に押し出すのではなく味付け程度に散りばめる。これなら従来のVICIOUS RUMORSリスナーも安心して楽しめるのではないでしょうか。
だからこそ、ジェフ・ソープがリードボーカルを務める「Darkness Divine」と「Collision Course Dissaster」は無駄にがなりすぎていいて、多少耳障りにも感じられる。特に「Darkness Divine」は展開含めてなかなかの仕上がりなだけに、ニックが全編歌うバージョンで聴いてみたかったかな。その重苦しい「Darkness Divine」のあとに、いかにもなハーモニーワークを多用した「Long Way Home」が流れてきたときの安心感といったら……(笑)。
「Death Eternal」などなかなかの良曲は多数見つけられるものの、突出したキメの1曲は残念ながら見当たりません。が、全体的には平均点以上の高品質作品だと思います。この手のサウンドが好きなオールドリスナーにも満足してもらええる内容ですし、かつ適度なモダンさもあるので、この手のバンドに疎い若いリスナーにも触れやすい1枚ではないでしょうか。これを聴いて、久しぶりに過去の諸作品にも手を出したくなりました……そんな効力を持つ、なかなかの良盤です。
▼VICIOUS RUMORS『CELEBRATION DECAY』
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