MR. BUNGLE『THE RAGING WRATH OF THE EASTER BUNNY DEMO』(2020)
2020年10月30日にリリースされたMR. BUNGLEの4thアルバム。
FAITH NO MOREやらDEAD CROSSやらいろいろ忙しいマイク・パットン先生ですが、MR. BUNGLEも約19年ぶりに再始動。この新作は『CALIFORNIA』(1999年)以来、実に21年ぶりの新作なのですが、その中身は1986年に制作したデモテープ『THE RAGING WRATH OF THE EASTER BUNNY』をプロフェッショナルなアルバムとして再レコーディングしたもの。純粋な新作というわけではないのですが、中身に触れたらそんなことどうでもなるくらい、頭も気持ちもかき乱されるはずです(笑)。
今回のMR. BUNGLEですが、メンバーはマイク・パットン(Vo)、トレイ・スプルーアンス(G)、トレヴァー・ダン(B)のオリジナルメンバーにANTHRAXのスコット・イアン(G)、元SLAYER、現在はDEAD CROSSやSUICIDAL TENDENCIESで活躍中のデイヴ・ロンバード(Dr)という最強/最狂の布陣なのですよ。なにこの「ぼくのつくったさいきょうのかいじゅう」みたいなラインナップ(笑)。
で、出してる音もですね……完全にスラッシュメタルやハードコアなんですわ。そっち寄りのサウンドはDEAD CROSSでやっていたとはいえ、まさかMR. BUNGLEでもこっちに傾倒するとは。しかもスコット・イアンまで連れてきちゃうなんて、徹底しすぎでしょう。
まあとにかく、カッコいいんですわ。オープニング「Gizzly Adams」からして初期スラッシュメタルやハードコアの作品によくあった短尺のインストナンバーで、そこから「Anarchy Up Your Anus」(てかタイトルよ!笑)で一気に爆発。「Hypocrites / Habla Español O Muere」あたりまで来ると完全に感情が麻痺して、気づけば頭を振り続けている自分に気づくことでしょう……ってこれ、知ってる曲じゃん!(笑) S.O.D(STORMTROOPERS OF DEATH)の「Speark English Or Die」のスペイン語カバーを織り交ぜているんですか。なにそのアイデア? 本家のスコット・イアンにそれやらせるの? ズルイ、ズルイわぁ……(苦笑)。
で、ここで気づくわけです。本作、スラッシュメタルと謳っているけど、どちらかというと80年代のクロスオーバースラッシュ作品、とりわけS.O.Dからの影響が相当強いんじゃないかと。楽曲自体は4〜5分台当たり前で、軸になるハードコア/クロスオーバー楽曲にスラッシュメタル的複雑怪奇な展開を交えることで、オリジナリティを確立させているような、そんな印象を受けました。
カバーといえばもう1曲、C.O.C(CORROSION OF CONFORMITY)のクロスオーバースラッシュ時代の「Loss For Words」も取り上げています。この曲が発表されたのが1985年、S.O.Dのアルバムリリースも1985年。そしてMR. BUNGLEが本作のもととなるデモ『THE RAGING WRATH OF THE EASTER BUNNY』を制作したのが1986年。時代だったんですね(笑)。
全11曲/約57分と比較的長尺作品ですが、好きな人なら無心で最後まで楽しめる1枚。これまでマイク・パットン周辺作品は苦手だったというメタル寄りリスナーも、本作やDEAD CROSSならとっつきやすいんじゃないでしょうか。入り口としても最適な1枚だと思いますよ。
▼MR. BUNGLE『THE RAGING WRATH OF THE EASTER BUNNY DEMO』
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