BIFF BYFORD『SCHOOL OF HARD KNOCKS』(2020)
2020年2月21日にリリースされた、ビフ・バイフォード(SAXON)の1stソロアルバム。日本盤未発売。
ご存知のとおり、ビフは1977年から現在にいたるまでポール・クィン(G)とともにSAXONを守り続けているオリジナルメンバーのひとり。約43年におよぶキャリアの中で、初めて個人名義でのアルバムをこのタイミングに発表しました。
プロデュースはビフ自身が担当。レコーディングにはフレドリック・オーケソン(G/OPETH)、フィル・キャンベル(G/PHIL CAMPBELL AND THE BASTARD SONS、MOTÖRHEAD)、ガス・マクリコスタス(B/FUTURE SHOCKなど)、ニッブス・カーター(B/SAXON)、クリスチャン・ルンドクヴィスト(Dr/ex THE POODLES)、アレックス・ホルツヴァルト(Dr/TURILLI、LIONE RHAPSODY)、ニック・バーカー(Dr/VOICES)、デイヴ・ケンプ(Key, Sax/WAYWARD SONS)といったメンツが参加。大半の楽曲のベーシックトラックはフレドリック、ガス、クリスチャンが担当し、ビフは一部でベースもプレイしているようです。
内容的にはポップさが際立つ80年代後半以降のSAXON的ハードロックと、ここ数作で目立つアグレッシヴなSAXON的メタリックさが融合した1枚といったところでしょうか。序盤2曲(「Welcome To The Show」「School Of Hard Knocks」)がまさに前者の代表的楽曲群で、アルバム聴き始めで「なるほど、ソロではこっち側なのね」と思わせておいて、1分少々のインターバル「Inquisitor」を挟んで「The Pit And The Pendulum」「Worlds Collide」で後者路線でパワフルに攻める。
かと思えば、サイモン&ガーファンクルでおなじみの名曲「Scarborough Fair」でしっとり聴かせるスタイルも提示。序盤こそ原曲に近いアコースティックアレンジで、齢69歳のビフが渋みの増したボーカルを響かせますが、途中からバンドが加わり、フレドリックのムーディなギターソロとともに味わい深いアレンジで楽しませてくれます。
アルバム後半も、これぞというタイトルのパワーメタル「Pedal To The Metal」や「Hearts Of Steel」、トーンの落ち着いたメタルバラード「Throw Down The Sword」、アコースティック色の強い「Me And You」、目の前が開けるような壮大さのあるミディアムナンバー「Black And White」とバラエティに富んだ楽曲が並びます。要は「昨今のSAXONでのスタイルを軸に、もうちょっと幅の広いこともできるんですよ、そういう歌が歌えるんですよ」ということを提示した、バンドの延長線上のある1枚なのかな。『THUNDERBOLT』(2018年)のようなストロングスタイルのアルバムの後だけに、バンドではそのスタイルを崩すのを避け、ソロで“プラスα”に挑んだということなんでしょうかね。でも、それでいいと思います。
ビフの言葉によると、本作は彼の人生を振り返るようなものであると同時に、イングランドの歴史を踏まえた伝統的なものなんだとか。「Scarborough Fair」のような英国民謡をピックアップしたのも、その一環なのでしょう。
なんにせよ、年明けで70歳になるビフがこのタイミングに自身の半生を振り返るソロアルバムを発表したことは、NWOBHM40周年を迎えた2020年にとっては非常に重要なことではないでしょうか。非常によく作り込まれた王道ハードロックアルバム、オススメです。
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