DARK TRANQUILLITY『MOMENT』(2020)
2020年11月20日にリリースされたDARK TRANQUILLITYの12thアルバム。日本盤は同年12月23日発売予定。
ご存知のとおり、DARK TRANQUILLITYは90年代初頭から活動を続けるメロディックデスメタルの重鎮的存在。結成から数えても今年で31周年というキャリアを持ち、ここ日本にも幾度となくライブで訪れています。
そんな彼らが、本国スウェーデンでキャリア最高となる2位を記録した前作『ATOMA』から4年ぶりに届ける今作。マーティン・ヘンリクソン(G)および結成時からのオリジナルメンバーだったニクラス・スンディン(G)の脱退に伴い、2017年からサポートを務めてきたクリストファー・アモット(G/ex. ARCH ENEMY、ARMAGEDDON、BLACK EARTH)&ヨハン・レインホルツ(G/ANDROMEDA、NONEXIST、SKYFIRE)が加わった新編成で今作の制作に臨みました。
6作目『DAMAGE DONE』(2002年)で確立させた世界観の延長線上で創作活動を続けてきた彼らですが、本作もその例に漏れずといった内容でしょうか。ただ、冒頭の3曲(「Phantom Days」「Transient」「Identical To None」)でのグロウルのみで歌唱するミカエル・スタンネ(Vo)のボーカルスタイルには「おおっ!?」と驚かされるかもしれません。といっても、楽曲自体はこれまでの延長線上にあるメロディックデスメタルなので、安心して楽しめるわけですが。
ところが、4曲目「The Dark Unbroken」からクリーンボーカルを交えたスタイルへと移行。このあたりからマーティン・ブランドストローム(Key)のキーボードワークと相まって、ゴシック色が強まっていきます。個人的にはこういったテイストが大好きで、彼らに求めるものの大半がそこにあったりするので、続く「Standstill」や「Eyes Of The World」あたりでも聴けるこのスタイルは非常に好印象でした。さらに「Ego Deception」や「Empires Lost To Time」ではそこに攻撃性も備わり、聴き手としてのテンションもどんどん高まっていきます。
ギタープレイに関しても、「ああ、これはクリストファーのプレイかな?」とわかるようなものも散見されるものの、突出した色を出しまくっているというわけでもない。あくまでDARK TRANQUILLITYという歴史あるバンドのカラーに合わせたプレイをしている、そういう印象を受けます。それはヨハン・レインホルツについても同様で、クリス同様に速弾きを得意とするプレイヤーながらも、テクニックはあくまで味付けに使うのみといったレベルに留められています。そのへんは歴史あるバンドに対する敬意も大きいのでしょうか。
そういった意味でも、全体的に攻撃性と叙情性のバランス感に長けた1枚と言えるでしょう。ベテランバンドによる痒いところに手が届くような良作。若い頃のような突出したアグレッションや刺激こそ足りないものの、この手のサウンドが好きなリスナーなら安心して楽しめる内容だと思います。
なお、12月23日リリース予定の日本盤には、海外デラックス盤のDISC 2に収録された2曲(「Silence As A Force」「Time In Relativity」)に加え「There Is Nothing」の計3曲をボーナストラックとして追加。これからフィジカルでの購入を計画している方は、1ヶ月待って日本盤を購入してみてはどうでしょう。
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