THE OCEAN『PHANEROZOIC II: MESOZOIC/ CENOZOIC』(2020)
2020年9月25日にリリースされたTHE OCEANの8thアルバム。日本盤未発売。
THE OCEANは2000年に結成されたドイツはベルリン出身のプログレッシヴメタル/スラッジメタルバンド。日本ではそれほど知名度は高いとは言えず、国内盤も過去に2度(2007年の『PRECAMBRIAN』と2018年の前作『PHANEROZOIC I: PALAEOZOIC』)発売されたのみ。僕自身、前作の日本盤リリースを機に知った存在でした。
そのタイトルからもわかるように、本作は前作『PHANEROZOIC I: PALAEOZOIC』から連作という形で制作されたコンセプトアルバム。この手の濃い内容のアルバムはなかなか売り上げに苦戦することも多いですが、本国ドイツでは前作での41位を超え、最高9位という高記録を樹立しています。
全8曲/約50分という、コンセプトアルバムのわりにはコンパクトにまとめられた感のある本作ですが、冒頭2曲「Triassic」「Jurassic / Cretaceous」の濃厚さ、情報量の多さにいきなり圧倒されるのではないでしょうか。なにせ前者が8分半、後者にいたっては13分半という、アルバムのほぼ半分を締めるボリューミーさですから。通常こういった長尺の楽曲はアルバムの中盤や終盤(アナログ盤でいうところのA面ラストやB面ラスト)に配置されることが多いですが、いきなり冒頭にアルバム1、2を争う長尺ナンバーを置くあたりに、彼らがリスナーに忖度することなく「自らのコンセプトに忠実に、やりたいことをやり通す」強い姿勢が伺えます。
でもね、この長尺2曲が非常に心地よいんです。プログレメタルのそれというよりは、MASTODONあたりにも通ずるスラッジ感の強いプログレ感や、近年のOPETH、あるいはDEFTONESにも通ずるゴシックな世界観にいつの間にか浸っている自分がおり、気づけば2曲聴き終えていた……というより、曲のつなぎ目を意識することなくアルバム全体を楽しめている自分に気づくのです。
そんなだから、4〜6分前後の楽曲で構築された3曲目以降も自然な流れに沿って楽しむことができるし、M-3「Palaeocene」以降も気づいたら次の曲へ移行していた、なんてことがしばしば。それくらいナチュラルな流れが意識されており、曲単位ではなくてアルバム単位でじっくり楽しめる良作だなと思いました。
適度な電子音楽要素も散りばめられており、それこそノルウェーのLEPROUSあたりにも通ずる世界観を見つけることができるのではないでしょうか。もはやプログレッシヴロックという言葉自体が死語に近いですが、このTHE OCEANはジャンルとしてのプログレを良質な形で現代的に進化させ続けている稀有な存在だなと、本作を聴いて実感させられました。うん、これは年間ベストレベルで推したい1枚です。
なお、本作には前作から引き続きKATATONIAのヨナス・レンクセ(Vo)が「Jurassic / Cretaceous」、スウェーデンのポストハードコアバンドBREACHのトマス・ハルボン(Vo)が「Palaeocene」にそれぞれゲスト参加。デジタル盤やフィジカル(CD)には本編のインストゥルメンタル盤を付属した2枚組仕様も用意されているのですが、ボーカルなしでも十分に楽しめる作品なのでこちらもあわせてチェックしてもらいたいです。
▼THE OCEAN『PHANEROZOIC II: MESOZOIC/ CENOZOIC』
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