BILLIE JOE ARMSTRONG『NO FUN MONDAYS』(2020)
2020年11月27日にリリースされた、GREEN DAYのビリー・ジョー・アームストロング(Vo, G)によるカバーアルバム。
GREEN DAYとしては今年2月に13thアルバム『FATHER OF ALL...』(2020年)を発表したばかりですが、その直後に新型コロナウイルスのパンデミックにより海外ではロックダウンに突入。ツアーはもちろん中止になり、それぞれ自宅にこもる自粛期間に入るわけですが、ビリーは3月からカバー曲を定期的に発表し始めます。これがのちに、“自身の人生のサウンドトラック”をテーマにしたカバーアルバムへとつながっていくわけです。
過去にもノラ・ジョーンズとのコラボ・カバーアルバム『FOREVERLY』(2013年)を制作していますが、今回はビリーらしいポップパンク/パワーポップ色の強いアレンジを軸に、ほぼすべての楽器を自身で演奏。3曲のみドラムをエンジニアのクリス・ドゥーガン、「Kids In America」でベースをビル・シュナイダー、ギターをGREEN DAYサポートのジェイソン・ホワイトが担当しています。
選曲的にも自分と同世代のビリーらしく、ティファニーのカバーで80年代後半に大ヒットした「I Think We're Alone Now」や、プリンスがTHE BANGLESに提供した「Manic Monday」、キム・ワイルドのヒット曲「Kids In America」、映画『すべてをあなたに』の劇中バンドTHE WONDERSによる「That Thing You Do!」(今年4月、コロナの影響で亡くなったアダム・シュレンジャーの書き下ろし曲)など馴染み深いものから、ジョニー・サンダース「You Can't Put Your Arms Around A Memory」、スティーヴ・ベイターズ「Not That way Anymore」、ジョン・レノン「Gimme Some Truth」といった伝説的ロッカーたちの名曲、パンクファンやパワーポップマニアなら一度は名前を目にしたことがあるであろうマニアックな存在までかなり幅広くピックアップされています。個人的にも初めて耳にする楽曲も少なくなく、新鮮な気持ちで接することができました。
また、「That Thing You Do!」を素直にカバーしたり、ニューウェイブ以降のサウンド/曲作りの延長線上にある「Kids In America」をストレートなポップパンク/パワーポップ風に味付けするあたりに、ビリーの根っこの部分が強く伝わってくるような気がしたのは僕だけでしょうか。どの曲も「GREEN DAYでそのまま取り上げても違和感ないよね?」と思えるようなアレンジで、ビリーの音楽ルーツを追体験することでGREEN DAYのベースの部分を再確認できるだけではなく、アレンジャーとしてのビリーの力量も改めて実感できる、非常に重要な1枚のような気がします。
個人的にはまるで初期のTHE CLASHがカバーしたかのような「Gimme Some Truth」や、そのTHE CLASHもカバーした「Police On My Back」が1枚のアルバムに収まっているところに好感を持ちました。あとは「Kids In America」かな。改めて原曲を聴き返したら、やっぱりいい曲だったし(サウンドはアレですが)。
昨日のポール・マッカートニーの新作もそうですが、コロナ禍でなければ制作されることのなかった作品がこうやってたくさん耳にすることができた2020年。決して悪いだけではなかったような気もしてきました(ライブをまったく楽しめなかったのは別として)。
▼BILLIE JOE ARMSTRONG『NO FUN MONDAYS』
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