RAGING SPEEDHORN『HARD TO KILL』(2020)
2020年10月23日にリリースされたRAGING SPEEDHORNの6thアルバム。日本盤未発売。
ツインボーカル体制という特異な編成によるUK出身のスラッジコア/爆走ロックンロールバンド。過去には『SUMMER SONIC』などで複数回来日も果たしており、2008年に一度解散しているものの、2014年に再結成を果たし現在に至ります。
2000年代前半の初期数作は日本盤もリリースされていた彼らですが、再結成後第1弾となる前作『LOST RITUAL』(2016年)と今作は日本盤未発売。ですが、ストリーミングを通じて手軽に聴くことができるようになったことで、こうやって彼らの新作にも無事ありつけるわけです。本当にありがたいですね。
さて、4年ぶりの新作となる本作。ボーカリストのひとりであるジョン・ロウリン(Vo)が2019年に脱退し、新たにダニエル・クックが加入して最初のアルバムとなります(そのほかにもギタリスト2名も2018年に交代)。そういった大きなメンバーチェンジはあったものの、プロデューサーを前作から引き続きラス・ラッセル(AT THE GATES、THE HAUNTED、NAPALM DEATHなど)が手がけていることもあり、基本路線は何ひとつ変わっておらず。疾走感のあるガレージロック/パンク的スタイルと、ミドルヘヴィで引きずり倒すスラッジスタイルの楽曲が交互に並び、それらがメロディを無視したしゃがれ声のシャウトボーカルで構築されているという“まんま”のスタイルです。なのにどの曲もキャッチーに聴こえるのは、間違いなく楽器隊のアレンジによるものが大きいと思うのです。
初期のような先鋭さは若干薄れたものの、地を這うようなヘヴィさは相変わらず健在。1曲1曲が2分台から4分台とコンパクトなのでスルスル聴き進められるし、全9曲で32分というトータルランニングも程よい尺。彼らの過去の作品に少しでも引っかかるようなものを感じていたリスナーなら、間違いなく楽しめる1枚だと断言できます。
BLACK SABBATHの影響下にあるヘヴィなスラッジ感とMOTÖRHEAD直系のガレージロック的疾走感を程よいバランスで併せ持ち、かつ現代的なコンパクトな楽曲構成が備わっている。そんな中でも、アルバムラストを飾るT. REXのカバー「Children Of The Revolution」のポップ&キャッチーさがまったく浮いていないのは、他の楽曲も何気にキャッチーだからこそ。いやはや、素晴らしい構成&バランスで成立した力作だと思うのですが、いかがでしょう?
実は彼らって今もっとも求められるべきメタルバンドであり、本作はもっとも愛聴されるべき良アルバムではないでしょうか。
▼RAGING SPEEDHORN『HARD TO KILL』
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