PALLBEARER『FORGOTTEN DAYS』(2020)
2020年10月23日にリリースされたPALLBEARERの4thアルバム。
PALLBEARERは2008年に結成されたアメリカ・アーカンソー州リトルロック出身の4人組ドゥームメタルバンド。2010年のデモをきっかけに、先鋭的なバンドを多く輩出しているカナダのProfound Lore Recordsと契約し、『SORROW AND EXTINCTION』(2012年)を筆頭に3枚のアルバムを制作しています。中でも3rdアルバムにあたる前作『HEARTLESS』(2017年)は初の全米TOP200入り(最高187位)を果たし、知名度を上げる結果を導き出しました。
新たにNuclear Blast Recordsと契約して発表した3年ぶりの新作『FORGOTTEN DAYS』は、SUNN O)))やEARTHとの仕事で知られるランドール・ダンがプロデュースを担当。そのアルバムタイトルや、なんとも不気味さを醸し出すアートワークに関連するように、“家族(有形無形の喪失)”をテーマにした内容で、ヘヴィで引き摺るようなミドルナンバー中心で構成されています。
まさに音圧の洪水と言わんばかりのサウンドプロダクションは、重苦しくも物悲しさが強く伝わるメロディと見事にフィットしており、BLACK SABBATH期のオジー・オズボーンを思わせるブレット・キャンベル(Vo, G)の歌声と相まってより悲壮感を強く演出することに成功。また、「Stasis」や「Silver Wings」などで聴けるようなアナログシンセの効果音も、本作の世界観に見事にマッチしており、不気味さがなお一層映える結果を導いています。
大半の楽曲が6分以上(3〜4分台は2曲のみ)で、アルバム中央には本作のクライマックスと言える12分超の大作「Silver Wings」が配置されています。この曲のドラマチックさもまた最高の一言で、ひたすらダーク&ヘヴィに喪失感を表現しています。ギタリストが2名所属していますが、この手のバンドにありがちな2本でのユニゾンで“音の壁”を作ることだけに執着するのではなく、いろいろ工夫したアンサンブルを楽しめるのもこのバンドの魅力であり、本作の聴きどころではないでしょうか。特に6、7分を超える長尺曲ではそういったアレンジ能力に秀でた部分が強く表出し、PALLBEARERならではの個性が最大限に発揮されています。
前作『HEARTLESS』ではもう少し多彩さの感じられる音楽性にシフトし始めていましたが、そういった実験を経た今作では(そういった経験も無駄にすることなく)原点の重要性を強くアピールした作風へと回帰。先のギターアンサンブルも多彩さもこういった実験あってこそかもしれませんね。
先鋭的な要素は少ないかもしれませんが、この(アンダーグラウンドの世界における)王道感はほかの何者にも変えがたい。まさに、PALLBEARERが4作目にして到達したひとつの“答え”と言えるのではないでしょうか。年末年始にまったり楽しむのに最適な1枚です。
▼PALLBEARER『FORGOTTEN DAYS』
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