DAVID BOWIE『ALADDIN SANE』(1973)
1973年4月13日にリリースされたデヴィッド・ボウイの6thアルバム。
前々作『HUNKY DORY』(1971年)を経て、よりグラマラスなサウンド&ビジュアルに特化させたコンセプトアルバム『THE RISE AND FALL OF ZIGGY STARDUST AND THE SPIDERS FROM MARS』(1972年)でひとつの答えへとたどり着いたボウイ。同作を携えたツアーでは、アルバムの主人公である架空のロックスター、ジギー・スターダストになりきってステージに立つことでカリスマ的人気を手中にします。
その勢いのまま制作に突入した今作には、前2作から引き続きTHE SPIDERS FROM MARSの面々……ミック・ロンソン(G)、トレヴァー・ボルダー(B)、ウッディ・ウッドマンジー(Dr)に加え、ジャズ方面のピアニストであるマイク・ガーソンが全面参加。THE ROLLING STONESのカバー「Let's Spend The Night Together」や「The Jean Genie」など豪快なロックンロールに、「Aladdin Sane (1913–1938–197?)」を筆頭とした排他的な空気を強めた楽曲が加わることで“何かの終焉”を匂わせる作風に仕上がっています。
全体を通して前作よりもワイルドさが強まったのは、前作のツアーで初めて実現した本格的USツアーでの経験が大きく作用したものと思われます。イギー・ポップとの出会いも、たしかこの前後(もうちょっと前?)でしたし、「Panic In Detroit」なんてタイトルの楽曲もあるくらいですから、いろいろな影響を得たのでしょう。とにかく全体を通して“バンド感”がより強まっており、全体の流れの心地よさはぶっちゃけ前作以上ではないでしょうか(それもあって、個人的にはこちらのほうがダントツに好きだったりします)。
「Drive-In Saturday」や「Time」のようにそれまでの流れを汲むドラマチックなミディアム/スローナンバーもしっかり用意されているし、王道のグラムロック「The Prettiest Star」もしっかり存在する。だけど、このアルバムでもっとも印象的な曲って、結局マイク・ガーソンのピアノを全面にフィーチャーした「Aladdin Sane (1913–1938–197?)」や「Lady Grinning Soul」なんですよね。中でも、後者の流れるようなピアノのフレーズ/メロディは圧巻の一言で、この1曲を聴くためだけに本作に手を伸ばしても損させないだけの魅力が備わっていると思うんです。
このしっかり作り込まれた傑作アルバム発売から数ヶ月後、ボウイはワールドツアー最終日にジギー・スターダストという架空のキャラクターを葬り去り、グラムロック時代に終止符を打ちます。音楽的にも臨界点を迎えたというのもあるし、借りの姿を演じることにも疲れた(というか飽きた)んでしょうね。だけど、最初のピークを経て、ボウイの新しい音楽探求の旅がここから40年以上にわたり続くことになるとは、当時は思いもしなかったでしょうけど……。
▼DAVID BOWIE『ALADDIN SANE』
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