SWEET『DESOLATION BOULEVARD』(1974)
1974年11月にイギリスで発売されたSWEETの3rdアルバム。アメリカでは翌1975年7月にリリースされています。
本国イギリスではシングルヒットこと連発させていたものの、アルバムとしては前作『SEET FANNY ADAMS』(1974年)が最高27位まで上昇したものの、以降ランクインせず。ところが、本作に関してはアメリカで最高25位を記録し、50万枚以上ものヒットにつながりました。
実は本作、本国UK盤(RCA盤)とUS盤や日本盤(Capitol盤)とでは一部収録曲が異なります。現在ストリーミングサービスで流通しているのは後者で、僕が慣れ親しんだのも後者なので、今回はわかりやすい選曲の後者について触れていきます。
いわゆるグラムロックと呼ばれるジャンルが衰退し始めた1974年前後、これと代わるようにイギリスではQUEENが人気を獲得し始めます。骨太なハードロックサウンドにグラマラスな要素を乗せることで、それ以前の旧世代ハードロックにはなかった斬新さを確立させたわけですが、このSWEETのサウンド/楽曲もその延長線上にあると言えるでしょう。
本作には「Ballroom Blitz」(全英2位/全米5位)や「Fox On The Run」(全英2位/全米5位)、「The Six Teens」(全英9位)などのシングルヒットが含まれているほか、「Sweet F.A.」や「Set Me Free」などハードロック系アーティストにカバーされる機会の多い楽曲が多数含まれています。「Ballroom Blitz」や「Sweet F.A.」なんて完全にハードロックのそれですし、「Set Me Free」の疾走感もハードロックのそれ、「Fox On The Run」なんてポップソングと呼んでも差し支えのないキャッチーさが備わっていますし。そりゃ売れますわな。
しかも、「The Six Teens」や「Sweet F.A.」などで耳にすることができる多重コーラスや、複雑なアレンジを持つ楽曲展開などはQUEENの影響下にあると言えるもの。「Into The Night」のギターオーケストレーションも、ブライアン・メイのそれですしね。サウンド的にはこれをグラムロック的と括ることはできませんが、もし初期のQUEENを(ビジュアルのみならず)グラムロックの枠に収めるのならば、このSWEETも確実にそっち側に属するということになるんでしょう。
でもね、初めて彼らの音に触れた高校生時代の自分はこのアルバムのこと、グラムロックという認識ではなくて「QUEENに影響を受けたブリティッシュハードロックバンド」と捉えていたんです。いや、もっと言えば「THE WHO始まり、QUEEN経由の英国ハードロックバンド」という認識かな。だって、そういう音じゃなですか。当時はバンドの背景とか、そのへんよく知りませんでしたもものね。今ならインターネットですぐ調べられるし、こういう個人サイトもあるし(笑)。本当便利な世の中になりましたね。
でも、それと同時にカテゴライズがより複雑になっているのも事実。やれグラムロックだ、やれハードロックだ、やれバブルガムポップだ……ぶっちゃけ、そんなのどうでもいいんですよ。聴いた人にとってどう思ったかが正解。現在の僕にとってのSWEETやこのアルバムは「グラムロックの延長線上にいるハードロックバンド」くらいの存在。それで十分ですし、だからといってこのアルバムへの評価が揺らぐことはないですからね。
SWEETの入門編としては、ベストアルバムが一番いいと思うんです(笑)。だって、ここに収録されてない(DEF LEPPARDなどのカバーでおなじみの)「Action」や、POISONもカバーした「Little Willy」、MOTLEY CRUEのあの曲の元ネタなんてささやかれた「Hell Raiser」など、名曲満載ですからね。それで気に入ったら、オリジナルアルバムとしては本作から入るのが妥当かなと思います。
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