DEEP PURPLE『TURNING TO CRIME』(2021)
2021年11月26日にリリースされたDEEP PURPLE通算22作目のスタジオアルバム。日本盤は同年12月24日発売。
前作『WHOOSH!』(2020年)から1年3ヶ月という、高齢の彼らにしては非常に短い期間で届けられた新作は、すべてカバー曲で構成された内容。過去3作から引き続き、ボブ・エズリン(アリス・クーパー、KISS、PINK FLOYDなど)がプロデュースを担当した、非常に肩の力が抜けた“お遊び感”満載の1枚に仕上がっています。
カバーの内訳は下記のとおり。
01. 7 And 7 Is [LOVE]
02. Rockin' Pneumonia And The Boogie Woogie Flu [ヒューイ・"ピアノ"・スミス]
03. Oh Well [FLEETWOOD MAC]
04. Jenny Take A Ride! [MICH RYDER & THE DETROIT WHEELS]
05. Watching The River Flow [ボブ・ディラン]
06. Let The Good Times Roll [LOUIS JORDAN & THE TYPANY FIVE]
07. Dixie Chicken [LITTLE FEAT]
08. Shapes Of Things [YARDBIRDS / JEFF BECK GROUP]
09. The Battle Of New Orleans [ジョニー・ホートン]
10. Lucifer [THE BOB SEGER SYSTEM]
11. White Room [CREAM]
12. Caught In The Act (Going Down / Green Onions / Hot 'Lanta / Dazed And Cofused / Gimme Some Lovin')
[フレディ・キング / BOOKER T & THE MG'S / THE ALLMAN BROTHERS BAND / LED ZEPPELIN / SPENCER DAVIS GROUP]
バンドとしては前作とそのツアーで活動に幕を下ろす予定だったのもの、コロナ禍に突入しツアーは延期。だったらと制作されたのが、メンバーお気に入りの曲を集めたカバー集だったわけです。初期にも「Hush」など数々のカバー曲をアルバムに収録してきた彼らですが、まるまるカバーでアルバムを作るのは今回が初めて。しかも、単なるルーツ回帰にとどまらず、同世代のバンドの楽曲も含む内容に。これらを成熟し切ったアダルトなサウンドで味付けすることで、“今のパープル”らしい1枚に仕上げています(もちろん、「White Room」みたいな完コピに近いものも含まれていますが)。
良くも悪くも“ユルさ”が際立つ昨今のパープルですが、それは今作も同様。過去数作ではそれが時に悪い方向に作用していたものの、今作ではすべてが良い方向に進んでいるのではという印象も。それこそ、出来の良い原曲をパープルらしく味付けすることで統一感も生まれるし、それがイアン・ギラン(Vo)の今のスタイルにもフィットしている。さらにイアン・ペイス(Dr)のスウィングするドラミングやドン・エイリー(Key)の流麗なピアノプレイ、そして先頃脱退を発表したスティーヴ・モーズ(G)の変幻自在なギタースタイルなど、各プレイヤーの技術や表現にも注目したくなるという、カバーだからこそ成し得た奇跡の内容ではないでしょうか。
バンドのエピローグとしては、これくらい肩の力が抜けていてもいいのかもしれませんね(どうやらイアン・ギランはもう1枚アルバムを作るつもりでいるようですが)。とはいえ、まさか先にスティーヴがバンドを離れることになるとは思いませんでしたが(理由が理由なので仕方ありませんけどね)。すべてのアルバムを真剣に聴いてきたバンドというわけではないので、今後しばらく彼らのアルバムにじっくり耳を傾けてみようかと思っています。
▼DEEP PURPLE『TURNING TO CRIME』
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