カテゴリー「2021年の作品」の59件の記事

2021年4月24日 (土)

THE ARMED『ULTRAPOP』(2021)

2021年4月16日にリリースされたTHE ARMEDの4thアルバム。日本盤は同年4月21日発売。

THE ARMEDは2009年から活動をスタートさせた、デトロイト出身の実験的ハードコア/メタルコア/マスコア・プロジェクト。メンバーの名前など一切明かされておらず、構成員も流動的とのことで、デビュー作からCONVERGEのカート・バルー(G)がエンジニアとして全面的に携わっていたり、また過去の作品では同じくCONVERGEのベン・コラー(Dr)やSUMACのニック・ヤキシン(Dr)、元THE DILLINGER ESCAPE PLANのクリス・ペニー(Dr)といったエクストリーム・シーンで名の知れたドラマーたちが参加するなど、その界隈では注目の存在でした。

とはいっても、僕自身このアルバムで初めて彼らに触れたわけでして。そもそもTHE ARMEDというバンドの存在を知らないわけですから、このアートワークにアルバムタイトルで、最初は「イマドキのEDM寄りのR&B」アルバムかと思い込んでいたわけです(笑)。ところが、このアートワークを目にする場所が『Kerrang!』をはじめとする、海外のメタル/エクストリーム・ミュージック専門サイトばかり。そりゃ気になりますよね。

これまでデジタルリリース中心だったとのことで、CDでのフィジカルリリースは本作が初めて(アナログ盤の発売は過去もあり)。日本リリースも本作が初めてとのことで、改めて日本盤にて購入したわけですが……ある意味『ULTRAPOP』というタイトルに相応しい内容だな、こりゃ最高だ……と思ったわけです。そうそう、自分は今、こういう音を求めていたんだよ、待っていたんだよ……と。

アルバム内のクレジットを目にする限りでは、カート・バルーがエグゼクティブ・プロデューサーとしてクレジットされており、レコーディングにはカートやベンのCONVERGE組のほか、マーク・ラネガン、トロイ・ヴァン・リーウウェン(QUEENS OF THE STONE AGE)、ユライアン・ハックニー(ROUGH FRANCIS)、エヴァ・スペンス(ROLO TOMASSI)などが連ねておりますが、この際そういった事実は置いておいて。いやはや、とにかく楽曲やサウンド、アレンジなどすべてがカッコいいんです。

感覚的には、昨年のCODE ORANGEの新作『UNDERNEATH』(2020年)に触れたときと似たものがあるんですが、こちらはメタリックさが若干薄く、よりハードコア色が強い印象を受けました。そこに現代的なエレクトロニックな味付けが施されることで、耳や脳に刺激的なサウンドへと昇華。こう書くと、アバンギャルドな作品なのかなと思いきや、随所にキャッチーなメロディやポップな要素も見え隠れし、それが非常に気持ちよく響く。突き刺すような攻撃性と、聴き手を優しく包み込むポップさが融合することで、文字通り『ULTRAPOP』な作品が完成するわけです。このとぼけたアートワークからは想像できないような、ビビッドな内容はまさに2021年という時代を象徴する1枚と言えるでしょう。

「All Futures」のMVではメンバーが姿を現しライブパフォーマンスを披露していますが、それすらも本当に彼らなのかわかりません。アートワークやタイトルと内容との乖離/対比含め、どこまでが狙いでどこまでが素なのか。そういう匿名性も、2010年代以降ならではだなと思います。純粋なHR/HMとは異なりますが、エクストリーム・ミュージックという大きな枠で括れば間違いなく今年のベストアルバム候補だと、断言させてください。

 


▼THE ARMED『ULTRAPOP』
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2021年4月23日 (金)

LIQUID TENSION EXPERIMENT『LTE3』(2021)

2021年4月16日にリリースされたLIQUID TENSION EXPERIMENTの3rdアルバム。日本盤は同年4月14日に先行発売。

LIQUID TENSION EXPERIMENTは1997年にDREAM THEATERのジョン・ペトルーシ(G)と、当時DREAM THEATERのメンバーで現在はSONS OF APOLLOなど多方面で活躍するマイク・ポートノイ(Dr)、KING CRIMSONピーター・ガブリエルとの活動で知られるトニー・レヴィン(B, Chapman Stick)、そして本作での共演を機に後々DREAM THEATERに加入することになるジョーダン・ルーデス(Key)により結成されたインストゥルメンタル・プログレッシヴメタルバンド。1999年までに2枚のアルバムを発表しますが、ジョーダンがDTに正式加入したため「DTとの差別化が難しくなる」との理由で活動休止に。その後、2010年にはマイクがDTを脱退し、さらに再始動は難しいかと思われましたが、ここ数年はマイクとジョーダン、マイクとジョンがそれぞれ共演を果たしていることから「タイミングさえ合えば」再始動もまんざらではない、というところまで復縁できていたようです。

そして、復活の大きなきっかけとなったのが2020年のコロナ禍……海外ではロックダウンという緊急事態に陥ったことで、4人のツアーや制作スケジュールの大半が白紙に。これにより、2020年7月に4人揃ってセッションを行うことができ、実に22年ぶりの再始動が実現したわけです。

前2作はプログ・ロック名門レーベルMagna Cartaからのリリースでしたが、今作はDTが所属するInside Out Musicからの発売。CDはボーナスディスクが付いた2枚組仕様で、DISC 1がアルバム本編『LTE3』で8曲収録、DISC 2は『A NIGHT AT THE IMPROV』と題したボーナスディスクで前5曲収録。2枚トータルで13曲、117分という超大作となっています。長っ! と最初は思ったのですが、これがね、不思議とスルスル聴き進められて、気づいたら最後の曲まで到達していて2時間経過しているんですよ。

DISC 1はアルバム本編ということもあり、セッションを軸にしながらも要所要所にしっかり作り込まれた形跡も見受けられ、そういった創意工夫がアルバムの聴きやすさにもつながっている。ヒリヒリした緊張感が漲っていた過去2作と比べると、その辺のテンション感は若干薄めではあるものの、ぶっちゃけ……DTの近作よりも良いんじゃないか、と思えたほど(あまり声を大にして言いたくはないですが)。これがマイク参加による功績なのかどうかはわかりませんが。

冒頭2曲「Hypersonic」「Beating The Odds」を聴くと、ここに歌メロが乗ったら……なんて想像を勝手にしてしまうのですが、もちろん歌がなくても十分に通用するカッコよさ、気持ちよさに満ち溢れているし、ジャズでお馴染みのジョージ・ガーシュウィン作「Rhapsody In Blue」のカバーも4人の個性がしっかり感じられる、遊び心に満ちたアレンジです(この曲、13分超の大作ながらもまったくダレませんしね)。

一方、『即興の夜』と題したDISC 2はジャムセッションの中から抜き出された素材が、そのまま使用されています。なので、「Blink Of An Eye」のようにフェードインから始まるものもあるし、エンディングも締まりが感じられないテイクも存在する。音質的にもDISC 1の完成されたものと比較すると、どこか生々しさが強い。完成品にまで至らなかったものの、バンドのジャムセッションの空気感を追体験できるという点においては、非常に興味深い内容ではないでしょうか。

後世に残す完成度の高い作品性(DISC 1)と、バンド本来の即興性(DISC 2)を同時に味わえる本作。22年待たされた甲斐があるよね、ってくらいに大満足の出来。DTファンやプログ・ロックのリスナーのみならず、多少なりとも楽器をかじったことがある方にも聴いていただきたい良質な作品集です。

 


▼LIQUID TENSION EXPERIMENT『LTE3』
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2021年4月21日 (水)

ZIGGY『SDR』(2021)

2021年4月21日にリリースされたZIGGYの18thアルバム。

森重樹一(Vo)のソロユニットとして再始動してから3作目のオリジナル作となりますが、前作『ROCK SHOW』(2018年)から約2年半ぶりの新作。『2017』(2017年)から『ROCK SHOW』の感覚がちょうど1年、その間にアルバム未収録のシングル2枚(「TEENAGE LUST」「君の笑顔より美しい花を知らない」)を発表しているので、ずいぶんと感覚が空いたように映りますが……いえいえ、そんなことないんですよ(笑)。そもそもこの2年半の間に森重の喉の手術がありましたしね。で、そんな困難にも負けじと、2019年4月に「ヒカリノアメ」、同年10月に「I STAY FREE FOREVER」、2020年10月に「証」とそれぞれアルバム未収録曲のみで構成されたシングルもリリース。さらにメジャー1stアルバム『ZIGGY 〜IN WITH THE TIMES〜』(1987年)と2ndアルバム『HOT LIPS』(1988年)の再録アルバムも2020年に発表しているので、実はアイテム数でいえば再始動後最多な期間だったように思います。働きすぎです。

そんな流れを経て、ついに届けられたニューアルバム。前作『ROCK SHOW』は1980年代半ばから後半にかけてのヘアメタル/L.A.メタルを彷彿とさせるハードドライヴィン・ロック満載で、「ZIGGY完全復活!」を高らかに宣言する攻め攻めなその内容は自分を含む30数年来の往年ファンを歓喜させたことをよく覚えています。続く今作もその流れでくるのかと思いきや、そことも違うZIGGYのアザーサイドを強くアピールする力作に仕上げてきました。すげえったらありゃしない。

アルバムタイトルの『SDR』だけをストレートに受け取れば、前作からの流れで“Sex, Drug, Rock'n'Roll”的なロックンロール黄金期をイメージするかもしれません。しかし、そこは今のZIGGY=森重のこと、クリーンで健康体なロックンロールライフを示すべく“Swing, Drive, Rock'n'Roll”精神の、ハッピーでご機嫌な(広意義での)ロックンロールアルバムを届けてくれました。タイトルトラックでもある「SWING, DRIVE, ROCK'N'ROLL」や「ROCK'N'ROLL QUEEN」といった楽曲では王道のZIGGY節で聴き手のテンションを上げまくりますが、本作はそういった楽曲だけで構成されていないバラエティ豊かさが大きな特徴。『ZIGGY 〜IN WITH THE TIMES〜』でも感じられたパンクやポップスからの影響はもちろんのこと、90年代の歌謡曲チックなポップロック路線までもを飲み込んだ楽曲群からは、大人の余裕すら感じられます。

個人的にはブラスをフィーチャーしたゴージャズなミドルテンポロック「Let the good time roll」に、自分の大好きなZIGGYのイメージがぴったり重なったし、かと思えばレゲエをベースにしたピースフルな「もっと好きにやるよ」、「TOKYO CITY NIGHT」(『HOT LIPS』収録曲)がより大人になったような「数え切れないTenderness」、小気味よいビートがパンクとメタルの中間(さらに後半ではジャジーなアレンジも登場する)マイナーチューン「錆びた扉を」、ヘヴィ&ダークなアップチューン「傷痕」、90年代中期を彷彿とさせるディープなミディアムナンバー「パラドクスの庭で」など本当に楽曲の幅が広い。そうそう、ZIGGYってこういうバンドだったよね……と思い出させてくれるネタが豊富で、前作ほど焦点を絞っていないぶん散漫にも映るかもしれませんが、個人的な“ZIGGYらしさ”って実は本作のような作風だったりするので、僕の中では軽く前作超えの1枚でしたよ。

作風的には『2017』をよりブラッシュアップさせた1枚と言えなくもないけど、本作はバラードをあえてカットすることで、それともまた違った世界観が展開されている。特に『ROCK SHOW』というゴリゴリの傑作を経て、さらに初期2作のセルフカバーで原点を振り返ったことで、森重自身ZIGGYというバンドをよりフラットに捉えることができた結果なのかもしれません。また、2017年のツアーから活動を共にするバンドの面々ともより深く意識を共有することができるようになったのも、本作を傑作へと昇華させた要因のひとつと言えるのかな。

形は変わったけど、ZIGGYというバンドが今も歴史を引き継ぎつつ、常に最高な1枚を届けてくれるこの事実を、僕は素直に喜びたいと思います。個人的にも全キャリアで3本指に入る力作。ぜひ多くのロックリスナーに聴いてもらいたい!

 


▼ZIGGY『SDR』
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2021年4月20日 (火)

WHILE SHE SLEEPS『SLEEPS SOCIETY』(2021)

2021年4月16日にリリースされたWHILE SHE SLEEPSの5thアルバム。現時点で日本盤未発売。

全英21位を記録した前作『SO WHAT?』(2019年)から2年ぶりの新作。ヘヴィさと親しみやすさ、さらにはエレクトロの要素も適度にフィーチャーするなど全体的にバランス感に優れており、軽く前作超えの1枚に仕上がっています。

バンドは昨年からPatreon.comというプラットフォームを通じて、「Sleeps Society」と呼ばれるサブスクリプションサービス型ファンコミュニティを開始。アルバムはこのサービス名と同名で、収録曲「Call Of The Void」にはこのサービスの会員による歌声もフィーチャーしています。さらに、「Nervous」にはサイモン・ニール(Vo/BIFFY CLYRO)、「No Defeat For The Brave」にはデリック・ウィブリー(Vo/SUM 41)がそれぞれゲスト参加。BIFFY CLYROのニール、最近はARCHITECTSの新作『FOR THOSE THAT WISH TO EXIST』(2021年)にも参加していたけど、交友関係広いのね。

さて、先にも書いたように本作は非常にバランス感が絶妙な内容で、冒頭2曲でヘヴィさを強調したかと思えば、ハードテクノのようなデジタルリフが気持ち良い「Systematic」があったり、「Nervous」や「Know Your Worth (Somebody)」などではキャッチーなメロディで親しみやすさを与える。また、「No Defeat For The Brave」ではオーケストレーションも取り入れ壮大さをアピールし、異色のピアノバラード「Division Street」はまるで賛美歌のように聴こえる。UKメタルコアの美味しいとこ採りでバラエティ豊かな内容なんだけど、散漫さは皆無。しっかり芯が存在し、かつ豪快さの中にも適度な甘さが散りばめられており、聴いていてまったく疲れないんですよ。

作品の方向性としては確実に前作の延長線上にあるんだけど、印象に残るかどうかでいったら今作のほうがダントツ上。なぜなんでしょう……これって結局、ライブができなかった2020年を制作に費やしたことが大きかったんでしょうか。だとしたら、どのバンドもみんな良い作品になるはず(暴言)。

とにかく、すべてにおいてきめ細やかな作りで、言い方はアレかもしれませんが「メタルコア/モダンメタルの良曲プレイリスト」的な1枚と言えなくもない。ああ、だから良いのか。しかも曲順が練られていて、軸がブレていないから気持ちよく楽しめる。正直なところ、彼らのアルバムの中で1枚通してここまで「これは良い!」と思えたのは、初めてかもしれません。それくらい文句なしの1枚。先のARCHITECTSの新作同様、2021年のUKモダンメタルシーンを象徴する傑作ではないでしょうか。

ARCHITECTSは新作でついに全英1位を獲得してしまいましたが、WHILE SHE SLEEPSもこの新作でいいところまでいくんじゃないか……そう強く実感させる、問答無用の1枚です。

 


▼WHILE SHE SLEEPS『SLEEPS SOCIETY』
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2021年4月19日 (月)

GRETA VAN FLEET『THE BATTLE AT GARDEN'S GATE』(2021)

2021年4月16日にリリースされたGRETA VAN FLEETの2ndアルバム。

2枚のEPを経て発表された1stアルバム『ANTHEM OF THE PEACEFUL ARMY』(2018年)が全米3位という好記録を樹立させたGRETA VAN FLEET。2年半ぶりとなる本作は、プロデューサーにグレッグ・カースティン(FOO FIGHTERSポール・マッカートニーリリー・アレンなど)を迎えた意欲作です。

制作自体は2019年のツアー中、2回にわたるセッションで10曲を仕上げるも、2020年のロックダウンにより身動きが取れなくなったことからさらに2曲を追加レコーディングし、同年冬に作業が終了。ツアーで得た熱量がそのまま凝縮されたエネルギッシュな内容かと思いきや、全体的にはサイケデリックでムーディな空気感で覆われた、聴き応えのある作品に仕上がっています。

EPの段階ではLED ZEPPELINとの比較ばかりが取り沙汰されましたが、前作ではそれだけではない懐の深さを見せた彼ら。ジョシュ・キスカ(Vo)の歌声は「Broken Bells」や「Built By Nations」のような楽曲でのハイトーンにてロバート・プラントとの共通点を見つけることができますが、やはりそれ以上にジョン・アンダーソン(ex. YES)のほうが似ている気がする。アルバムのオープニングを飾る「Heat Above」や「My Way, Soon」ではそのサイケデリックさも手伝い、60年代末〜70年代初頭のYESやPINK FLOYDのようにも感じられるから、面白いったらありゃしない。

ぶっちゃけモダンな要素は皆無に等しいし、録音状態をモノラルっぽくしたら本当に60年代後半のサイケデリックロックバンドだと信じてしまいそうになる。それくらい、時代を超越した説得力があるし、普遍性も強い。ただ、だからこそ“今である必要”も感じられない。ロックがこれだけ低迷している海外においては、本当にこの音が10代、20代のリスナーに届くのかどうか、正直疑問でしかないんです。確実に僕みたいなオッサン世代を狙ってますよね?(もちろん、だから幅広く届くという可能性も否めませんし、それが前作の全米3位という数字に表れているんでしょうけど)

登場時こそ面白いと思ったものの、今の状況と照らし合わせると「本当にこれで正解?」と悩ましさで頭がいっぱいになる。だけど、1曲1曲の完成度/強度は文句なし。アルバムとしてもケチのつけようがない素晴らしさ。素直に「良いものは良い」でいいんだろうけど、本当にそれでいいのだろうかとやっぱり悩んでしまう。すごくいいバンドで、すごくいいアルバムだけど、これが今のUSロックシーンを牽引する存在かと問われたら、僕はそのシーンを軽蔑してしまいそうだし。う〜ん。

この禅問答が延々と自分の中で繰り返され、いまだに彼らに対する正当な扱いがわからないままですが、皆さんは余計なことを考えずに、このサウンドスケープにじっくり浸るのが一番だと思いますよ。ただ、僕の中ではZEPなどクラシックロックの旧譜に触れるのと同じ感覚で、この良作を楽しむことになりそうです。

 


▼GRETA VAN FLEET『THE BATTLE AT GARDEN'S GATE』
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2021年4月16日 (金)

THE END MACHINE『PHASE 2』(2021)

2021年4月9日にリリースされたTHE END MACHINEの2ndアルバム。

DOKKENジョージ・リンチ(G)、ジェフ・ピルソン(B)、ミック・ブラウン(Dr)に現WARRANT、元LYNCH MOBのロバート・メイソン(Vo)と結成したTHE END MACHINEは、2019年3月にデビューアルバム『THE END MACHINE』を発表。しかし、アルバム発表後にミックがミュージシャンを引退したことから、新たにミックの実弟スティーヴ・ブラウンが加入(兄弟だけあって、見た目がそっくり!)。本作は新体制での第1弾アルバムとなります。

とはいえ、前作でもソングライティングに携わっていたのはジョージ/ジェフ/ロバートの3人。この軸が変わらなければ、そのスタイルに大きな変化は生じないはず。そういう思いで接した本作、間違いなく前作の延長線上にある“80年代のDOKKENの後継的存在である正統派ハードロックアルバム”でした。

全12曲(うち1曲がオープニングSE)で55分前後という尺は前作とほぼ一緒で、1曲あたり5分前後で構築されたメロディアスなハードロックがずらりと並ぶ。メロディラインもDOKKEN時代にあった(良い意味での)煮え切らなさを若干含むもので、そういった要素が哀愁味にもつながっているように感じられる。コーラスワークもどことなくDOKKEN的で、このへんのセンスはジェフによるものが大きいのでしょうか。速い曲もミディアムテンポもパワーバラードも、すべて平均点以上の仕上がりで安心して楽しめる。

演奏に関しても、すべてにおいてそつなくこなされている感が強い。ジョージのリフやソロワークに関してですが、若干「手癖で収めてないか?」と思えるフレーズも少なくないものの、トーンなどはここ数年のジョージ関連の作風との統一感も感じられる。あえてDOKKEN的なものに寄せるのではなく、あくまで今の彼ならではのスタイルでこの80年代的王道ハードロックを奏でる。THE END MACHINEにはそういった面白味もあるのかな?と、今回改めて感じました。

ロバートが歌っていることで、LYNCH MOBとDOKKENの中間という印象も否めませんが(どっちもジョージが参加しているので間違いではないけど)、LYNCH MOBよりは全体的に“曇った”感が強いので、そういう点ではDOKKENの後継的存在というのが正解なのかも。ただ、初期DOKKENのような尖ったプレイやストロングスタイルの突出した楽曲が見当たらないのが、本作のマイナスポイント。「Blood And Money」や「Dark Divide」「Prison Or Paradise」「Shine Your Light」といった軽く平均点超えの楽曲も豊富な、高品質な1枚だけど、1曲だけでもそういう“尖り”が感じられたら、さらに印象が違ったんだろうなあ……まあ、今のジョージ・リンチにそこを求めるのは酷かもしれませんが。

……なんてことを言っているとドン・ドッケンが歌うよりはマシ」という声が脳内のどこかから聞こえてきそうですが(苦笑)、まだジョージがこういったサウンド/バンドにチャレンジしてくれる事実を、今は素直に楽しみたいと思います(そして、ありがとうジェフ・ピルソン)。

 


▼THE END MACHINE『PHASE 2』
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2021年4月15日 (木)

SAMMY HAGAR & THE CIRCLE『LOCKDOWN 2020』(2021)

2021年1月8日にリリースされた、サミー・ヘイガー率いるTHE CIRCLEの最新アルバム(スタジオ作品としては2作目)。日本盤未発売。

本作には昨年3月のロックダウン以降、「Lockdown Sessions」と題してYouTube上にて公開されたリモート・レコーディング楽曲を収録。バンドのオリジナル新曲「Funky Feng Shui」を筆頭に、ヘイガー在籍時のVAN HALENナンバーやAC/DC、BUFFALO SPRINGFIELD、THE WHO、ボブ・マーリー、リトル・リチャードなどの楽曲をカバー。昨年9月までに公開された全10曲に、新たにリモート・レコーディングされたデヴィッド・ボウイ「Heroes」を加えた全11曲が収録されています。

もともとの趣旨が「ロックダウン期間中、アーティストもリスナーも楽しめるように」という気楽なものだったこともあり、1曲1曲はフルスケールでカバーされておらず、2分前後のショートバージョンでアレンジされたものが中心。リモートで合わせていくことを考えたら、これくらいの尺が丁度いいのはわかりますし、そもそものちのアルバム化なんて想定もしていなかったでしょうからね。そこに関しては仕方ないので、文句をつけるべきではないかな。

選曲に関してですが、意外にもVAN HALENナンバーが3曲も含まれており、「Right Now」といった代表曲に加え、地味な「Don't Tell Me (What Love Can Do)」、サミー在籍時後期には演奏される機会もなかった名作『5150』(1986年)のオープニング曲「Good Enough」など意外なセレクト。前2曲はアレンジも非常に凝っていますが、キーこそ下がっているもののストレートにカバーされた「Good Enough」は、冒頭の「Hello, baby〜!」の第一声にアガるのではないでしょうか。

そのほかのカバーセレクトに関しては、AC/DCやTHE WHOなど定番曲の中にボブ・マーリー「Three Little Birds」やBUFFALO SPRINGFIELD「For What It's Worth」が含まれることで良い味を出しているなと。あと、「Keep A-Knockin'」に関してはボンゾ(ジョン・ボーナム)の息子であるジェイソン・ボーナム(Dr)にこの冒頭フレーズを叩かせたかっただけなんじゃないか?という気もしますが(笑)。

上記のほかにも、随所にほかのロック・クラシックからの引用も含まれていたりと、遊び心満載の1枚。30分にも満たない尺は腹八分目といったところで、お遊びならこれくらいのボリュームで十分かな。ただ、いざCDで購入しようかと考えると、ちょっと割高感が否めませんが。

コロナ禍がなかったら生まれなかった作品はたくさん存在しますが、本作も間違いなくその1枚。無駄な批判よりも、まずは素直に楽しむ心を忘れずにいたいです。

 


▼SAMMY HAGAR & THE CIRCLE『LOCKDOWN 2020』
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2021年4月12日 (月)

SWEET OBLIVION『RELENTLESS』(2021)

2021年4月9日にリリースされたSWEET OBLIVIONの2ndアルバム。

QUEENSRYCHE、現OPERATION: MINDCRIMEのジェフ・テイト(Vo)を中心に結成されたバンド(というかプロジェクト)。イタリアのプログレッシヴ/テクニカルメタルバンドDGMのシモーネ・ムラローニ(G, B)とタッグを組んだセルフタイトルのデビューアルバム『SWEET OBLIVION』(2019年)からほぼ2年ぶりの今作では、シモーネに代わり新たにイタリアのメロディックメタルバンド、SECRET SPHEREのアルド・ロノビレ(G)をパートナーに迎え制作しました。

アルドがプロデュースを手がけることもあり、レコーディグメンバーも一新された本作。前作ではQUEENSRYCHEの大ヒット作『EMPIRE』(1990年)を彷彿とさせるミドルヘヴィのダークな楽曲中心でしたが、今作延長線上にある作風なのは変わらず。ただ、そこに名作『OPERATION: MINDCRIME』(1988年)、もっと言えばそれ以前の『RAGE FOR ORDER』(1986年)あたりに見られた質感が復調し、若干クラシカルメタル/メロディックメタル度が増しているように感じられます。

Frontiers Recordsというイタリアのレーベルからのリリースというのも大きいのでしょうが、この2作ともにイタリアの人気メタルバンドのブレインが制作を仕切っています。シモーネもアルドも間違いなく、80年代から90年代初頭のQUEENSRYCHEは通過しているはずですし、いろいろな問題はあれどジェフ・テイトという稀代の名ボーカリストと一緒に仕事できることはうれしかったはず。つまり、自身のオリジナリティとジェフらしさ……往年のQUEENSRYCHEらしさのバランスをどう図り、それを提示するかという使命があったはず。両プロデューサーはその任務を見事に果たしたわけですが、この2ndアルバムでのアルドの仕事ぶりはジェフや我々の想像する以上のものがあるように思えます。

ぶっちゃけ、ジェフが参加した2000年以降のアルバムの中でもっとも優れているんじゃないか……そう思えてしまうほど、ここで展開されている世界観、楽曲、サウンド、ジェフのボーカルパフォーマンスすべてが「本来ファンが聴きたかったGEOFF TATE's QUEENSRYCHE」なのですから。

随所にフィーチャーされたギターのツインリードフレーズ、そしてドラマチックな展開を持つメロディとアレンジ。『EMPIRE』と『OPERATION: MINDCRIME』の中間に位置するメロディアスなメタルサウンド(そう、ハードロックではないんです)に引っ張られるように、ジェフのボーカルトーンも次第に高くなっていく。アルバム中盤、特に「Remember Me」や「Anybody Out There」「Aria」あたりの楽曲はそういった期待に応えるものが備わっているはずです。

これはうれしい誤算だったなあ。もうOPERATION: MINDCRIMEは素直に諦めて、SWEET OBLIVIONに本腰入れてくれたらなあ。毎回気鋭のアーティストとタッグを組んで、「僕の考えるQUEENSRYCHE」をジェフと一緒に表現してくれたら、それはそれで楽しいじゃないですか(主に自分が。笑)。

 


▼SWEET OBLIVION『RELENTLESS』
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2021年4月10日 (土)

CHEAP TRICK『IN ANOTHER WORLD』(2021)

2021年4月9日にリリースされたCHEAP TRICKの20thアルバム。現時点で日本盤未発売。

Big Machine(Universal流通)と契約し発表した7年ぶりの新作『BANG, ZOOM, CRAZY... HELLO』(2016年)を筆頭に、2年足らずでアルバム3作を連発した彼ら。単曲での配信はあったものの、アルバムとしては前作に当たるクリスマスアルバム『CHRISTMAS CHRISTMAS』(2017年)から3年半ぶりとなります。

今作から新たにメジャーのBMG(Warer系)と契約しましたが、制作陣はまったく変わらず。15thアルバム『ROCKFORD』(2006年)から携わるジュリアン・レイモンドが、バンドとの共同プロデューサーとして名を連ねています。というわけで、中身的にもここ数作の路線と何ら変わらず、王道のCHEAP TRICK節を轟かせております。

全13曲を収録しておりますが、うち1曲がアルバム収録曲「Another World」の別バージョン「Another World (Reprise)」、さらにジョン・レノンのカバー「Gimme Some Truth」。さらに、アルバムのオープニングを飾る「The Summer Looks Good On You」は2018年に先行配信されていた既発曲なので、純粋な新曲は10曲といったところでしょうか。ですが、そんなことはどうでもいい! だって、どれも最高にご機嫌なロックンロール/パワーポップ/バラードなんですから。

先に触れた「Another World」ですが、オリジナルバージョンはバラードスタイルのミディアムナンバーで、「Another World (Reprise)」と題した別バージョンはハードドライビングなロックアレンジ。元は同じ曲ではあるものの、何気に別モノとして楽しめるのではないでしょうか。

「The Summer Looks Good On You」は言わずもがな、タイトルからして最高な「Boys & Girls & Rock N Roll」や今作からのリードトラック「Light Up The Fire」、「Here's Looking At You」など現役ぶりをアピールするアップチューンも豊富ですし、ビートルズ・ライクな「Quit Waking Me Up」、タイトなミディアムロック「The Party」、ジミー・ホールがハーモニカで参加したブルースロック「Final Days」、音数の少ないメロウなスローナンバー「So It Goes」、どことなくサイケデリックなバラード「I'll See You Again」など、従来の“らしさ”をブラッシュアップした良曲揃い。アルバムラストを飾る「Gimme Some Truth」ではスティーヴ・ジョーンズ(SEX PISTOLS)のギターを大々的にフィーチャーしており、こちらもおまけとしては十分な1曲と言えるでしょう。

ここ10数年、リリースペースは以前と比べてだいぶ落ちているものの、そのぶん大きくがっかりさせられるアルバムが存在しない彼ら。今作も期待以上の内容でした。この先、あと何枚の新作を聴くことができるかはわかりませんが、できることならこのクオリティを保ったまま“らしい”作品を、1枚でも多く届け続けてくれることを願わずにはいられません。

 


▼CHEAP TRICK『IN ANOTHER WORLD』
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2021年4月 9日 (金)

OCTAVISION『COEXIST』(2021)

2021年3月24日にCDリリースされたOCTAVISIONの1stアルバム。

OCTAVISIONはギタリスト&コンポーザーとして活躍するホヴァク・アラヴェルディアンを中心とした、プログレッシヴメタル・プロジェクト。2016年に動画配信サイトに公開された、9分半にもおよぶインスト大作「Three Lives」が一部界隈で注目を集めました。同曲にはジャズ/フュージョン界で知られる超絶ベーシスト、ヴィクター・ウッテンが参加していたことでも反響を呼び、このプロジェクトの全貌を求める声は日々高まっていきました。

そして、2020年12月には各種配信サイトにて本アルバムをデジタルリリース。これに続き、日本のみで本作のフィジカルリリースが今年3月に実現したわけです。

このアルバムにはホヴァクやヴィクターのほか、MR. BIGSONS OF APOLLOなどで活躍するビリー・シーン(B)、Roman Lomtadze(Dr)、Murzo(Key)、Avo Margaryan(Blul/アルメニアの伝統的なフルート)といったプレイヤーたちが参加。さらに、タイトルトラック「Coexist」と「Apocalyptus」にはジェフ・スコット・ソート(Vo/SONS OF APOLLO、SOTOなど)もゲスト参加しております。

全体的に各プレイヤーの技巧的プレイを大々的にフィーチャーした、クラシカルな要素とモダンヘヴィネス以降のヘヴィメタルを融合させたサウンドが特徴。ベーシックな部分は“DREAM THEATER以降”と言えますが、随所に仰々しいクワイアなども取り入れられている。しかし、このプロジェクトの魅力はそこというよりは、むしろアルメニアの伝統的な管楽器Blulや中東のミステリアスな旋律を織り交ぜた「Mindwar」や「Three Lives」のような楽曲にこそ独特の個性が表れている。そういった旋律をホヴァクのテクニカルなソロプレイで、あるいはキーボードとのユニゾンプレイで表現されており、そういったところで独自性を強くアピールしています。

さらに、デジタルエフェクトも効果的に用いられており、「Mindwar」のような楽曲では2000年代以降のモダンテイストも伝わってくる。そういったところでも異色さや独特の個性も、しっかり醸し出せているのではないでしょうか。

それにしても、Blulをフィーチャーしたプログレッシヴメタルというのは、なんとも新しい。フルートなどを取り入れた旧世代のプログレは過去にも存在しましたが、音圧の高いメタリックなサウンドにこうした管楽器が取り込まれるのは、なんとも不思議なものが感じられます。一方で、ジェフのボーカルをフィーチャーした2曲は彼のパワフルな歌声と相まって、一聴した限りではSONS OF APOLLOを彷彿とさせるものがあります(こればかりは仕方ないですね)。ただ、メロディの運びや旋律は確実に差別化ができているので、聴いているうちに別モノだと理解できる。特に10分にもおよぶ超大作「Apocalyptus」は、その構成美/構築美含め圧倒的な個性を放っています。

とはいえ、やはりこのプロジェクトの魅力はインストゥルメンタルパートでの多彩さ/テクニカルさ/非凡さにあるので、歌モノはおまけといったところかな。全7曲で54分というボリュームは、この手の作品としては比較的程よいものなので、初心者でも意外と楽しめるのではないでしょうか。DREAM THEATERやSONS OF APOLLOを筆頭に、昨今のプログミュージック/プログレッシヴメタルに多少なりとも興味があるリスナーなら、触れておいて損はしない1枚です。

 


▼OCTAVISION『COEXIST』
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