YOU ME AT SIX『TRUTH DECAY』(2023)
2023年2月10日にリリースされたYOU ME AT SIXの8thアルバム。日本盤未発売。
『SUCKAPUNCH』(2021年)から2年ぶりの新作。前作はキャリア二度目の全英1位を獲得し、これまでに発表した7作中6作が全英TOP10入りという快挙を成し遂げました。そこから間髪入れずに発表された本作は、ダンスロック/ポップやモダンなR&B/ヒップホップのテイストを強めた前作よりもオルタナティヴロック色が濃厚な作風へとシフトしています。
とはいえ、ベースにある“ポストハードコアを通過した、キャッチーなポップパンク”感は本作でも健在。「God Bless The 90's Kids」なんてタイトルの楽曲が存在するように、あの頃のロックやラウドシーンを通過した方なら共感できるアンセミックな楽曲がズラリと並びます。
オープニングを飾る「Deep Cuts」は、そのリフワークがレッチリのアレを彷彿とさせたり、楽曲全体の雰囲気がBLOC PARTYのアレを思い出させたりと、2000年代前半のオルタナシーン(今となってはメインストリームでもありますが)への羨望が見え隠れしますが、先の「God Bless The 90's Kids」や「After Love In The After Hours」などからは90年代後半以降のポストグランジやポップパンクの匂いもほんのり香ってくる。時流に乗ってモダンさを強調させた前作はチャート上では成功したけど、俺たちの本流はここだぜ!と言わんばかりの姿勢は、個人的にかなり好感が持てるものです。
もちろん、前作でのトライを無しにしているわけではありません。要所要所に前作での試みが味付けとして残されており、それによって本作が単なる「自身のルーツの焼き直し」で終わっていないことがご理解いただけるはずです。ENTER SHIKARIのラウ・レイノルズ(Vo)をフィーチャーした「No Future? Yeah Right」や続く「heartLESS」あたりは、まさにその路線にある楽曲ですが、それでも軸にあるのは先にも記したアンセミックな楽曲を量産しようとするスタイル。本作は特にそこがブレていないからこそ、前作を敬遠してしまったリスナーにも響きやすいかもしれません。
前作が日本のラウドロックシーンにも浸透する可能性を秘めていたとしたら、本作はその1〜2世代上の90年代後半〜2000年代前半のギターロック/オルタナロックを通過した方々にリーチする内容かもしれません。と同時に、そういったスタイルは今の若いリスナーには新しく感じられる……かな? そうであったらいいなと思いますが、ロック自体が古臭いと言われる時代ですから、そこは過剰に期待しないでおきましょう。ただ、ある一定以上の年齢層には確実に響く1枚だと信じています。
▼YOU ME AT SIX『TRUTH DECAY』
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