GOD IS AN ASTRONAUT『GHOST TAPES #10』(2021)
2021年2月12日にリリースされたGOD IS AN ASTRONAUTの9thアルバム。現時点で日本盤未発売。
GOD IS AN ASTRONAUTはアイルランド出身の4人組ポストロックバンド。1stアルバム『THE END OF THE BEGINNING』(2002年)以降、これまでに8枚のフルアルバムと1枚のEPをリリースしており、今作を含めると10枚の作品集を発表していることになり、今回のタイトル『GHOST TAPES #10』はそこから取られているのかなと想像します。
本作で初めて彼らの音に触れ、そこから前作『EPITAPH』(2018年)、前々作『HELIOS / EREBUS』(2015年)とさかのぼって聴いてみたのですが、なるほどこれは気持ちいい音だなと。インスト曲のみで構成された全7曲/約37分の本作は、ドリーミーさというよりは不穏さをじわじわと感じさせるサウンドスケープ/曲構成を取っており、聴き流しができないほど惹きつけられる魅力に満ちています。
クリーントーンと空間系エフェクト、狂気を感じさせるディストーションと多彩さに満ちたギターサウンドからは、時にシューゲイザー的な側面も伝わり、それは一時期のMOGWAIを彷彿とさせるものも。また、「Burial」のようにピアノなど鍵盤系、エレクトロ系のエフェクトを効果的に取り入れている点も好印象で、実にうまい形で楽曲に緩急を付けることに成功しています。
まあ、とにかく曲が良いなと。先に挙げた不穏さはコード進行やギターのエフェクト/ハーモニー、メロディなどで見事な形で表現されており、だけどそれが不思議と嫌な気持ちにならない。要所要所でメタリックなテイストも散りばめられていることから、例えばRUSSIAN CIRCLESあたりが好きなリスナーにも引っかかるものがあるだろうし、ちょっと方向性は違うかもしれないけどNINE INCH NAILSとの共通点も見つけられる。ポストメタルと呼ばれるようなジャンルと、王道のポストロックを現代的な形で結びつけた本作は、実は幅広い層にモダンメタルを印象付ける役割を果たすための重要作ではないかと思うんです。
また、1曲の尺も適度なものがあり、最長でも1曲目「Adrift」の6分57秒。ほかに6分強が2曲に5分台1曲、4分台2曲に3分台1曲と、1曲ピックアップして聴くぶんにも通して聴くぶんにも程よい長さなんですよね。40分に満たないトータルランニングも実に現代的だし、そこも含めて手軽に触れやすい1枚ではないでしょうか。
いわゆる王道HR/HM的なクサいドラマチックさは皆無で、むしろモノトーンの中でグラデーションを付けて緩急を表すタイプの音楽ですが、間違いなくメタル/ヘヴィ系、あるいはプログレを好む耳も惹きつけられるはず。個人的には“みっけもの”の1枚でした。
▼GOD IS AN ASTRONAUT『GHOST TAPES #10』
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