WAGE WAR『MANIC』(2021)
2021年10月1日にリリースされたWAGE WARの4thアルバム。日本盤未発売。
米・フロリダ州出身の5人組メタルコアバンドによる。前作『PRESSURE』(2019年)から2年ぶりの新作。ドリュー・ファルク(BULLET FOR MY VALENTINE、リル・ウェイン、MOTIONLESS IN WHITEなど)、アンドリュー・ウェイド(A DAY TO REMEMBER、THE GHOST INSIDE、HER NAME IN BLOODなど)、A DAY TO REMEMBERのフロントマンでもあるジェレミー・マッキノン(THE DEVIL WEARS PRADA、THE GHOST INSIDE、NECK DEEPなど)と複数のプロデューサーを起用するスタイルは近作同様ですが、随所にメタル/ラウド界隈以外の要素も散りばめられた非常にモダンな作りは今ならではと言えるでしょう。
グルーヴィーなリフワーク&リズムは従来の延長線上にあるものの、タイトルトラック「Manic」を筆頭に曲にDISTURBEDなど2000年前後のニューメタルを彷彿とさせる曲も含まれており、特に「Circle The Drain」などで見せるメロディアスなスタイルはバンドの新たな挑戦と受け取ることができるはずです。と同時に、こういったコテコテのメロウナンバーがモダンなメタルコアと非常にフィットしており、だからといって簡単に「ヤワになった」と言えないくらいのタフさもしっかり備わっている。
また、過去の作品よりヘヴィになった側面も随所から感じられ、メロウな要素とエレクトロな味付けとのバランス感も絶妙。クリーンで歌うメロディアスさとゴリゴリのグロウルの対比も非常に効果的で、この手のバンドが苦手な人にも入門編に最適な1枚ではないでしょうか。
「Death Roll」のギターリフからは90年代リスペクトが伝わるけど、決して古臭さは感じない。同時期のグルーヴメタル、2000年代のニューメタル、そして2000年代後半以降のメタルコアを1本の線でつなぎ、2021年ならではの質感でまとめ上げた本作は、幅広いヘヴィミュージックリスナーに愛されるべき良作だと断言しておきます。
古き良きヘヴィメタルの魅力も、ハードコアから派生したエクストリームミュージックの側面も、そしてLINKIN PARKやDISTURBEDが一時代を築いた2000年代ラウドシーンの色合いもすべて包括した、非常に万能感の強い1枚。こういう作品がしっかりとチャート上位に入るような世の中が再び訪れることを、願わずにはいられません(本作、残念ながらBillboard 200でチャートインしていないんですよ……)。
▼WAGE WAR『MANIC』
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