TRIBULATION『WHERE THE GLOOM BECOMES SOUND』(2021)
2021年1月29日にリリースされたTRIBULATIONの5thアルバム。日本盤は同年2月5日に発売。
TRIBULATIONは前身バンドHAZARDでの活動を経て、2005年に結成されたスウェーデン・アルヴィカ出身のヘヴィメタルバンド。コープスペイントをしているそのビジュアルからブラックメタルをルーツに持つことが窺えるのですが、サウンド自体はゴシックメタルに近いものがあり、今回紹介する新作はボーカルこそブラックメタル的ながらも音は非常に耽美でメロディアス。ビジュアルからじゃなくて音から入って正解でした。
資料によると、本作は「神話や魔術への傾倒がこのバンドの売りの一つであるが、今回はエレメンタル・マジックに特化した内容」とのこと。「午前3時の墓場のような不気味なスタイルにはますます磨きがかかりつつ、よりヘヴィでゴージャスなサウンド作りになっているのが印象的」という説明はもはや意味不明(丑三つ時じゃなくて午前3時である必要は? 午前3時の墓場のわりにメランコリックな音だし、そもそも“村外”では笑いのタネにしかならないこういう表現が、最終的に聴き手のマイナスイメージにつながるのでは……)で、頭を抱えてしまいますが、内容は非常に良いです。
随所にメランコリックな要素が散りばめられており、ドラマチックさも伝わるそのバンドアンサンブル/アレンジは非常にクオリティが高く、ボーカル抜きだったら「こういうゴシックロック/ハードロック、いいよね」と高評価を得られそうな気がします。また、「Lethe」のようなピアノのみによる短いインストが曲間にフィーチャーされた構成も、アルバム全体のドラマチックさに拍車をかけることに成功。そこからプログレメタル的な側面も見える「Daughter Of The Djinn」へと続く流れも絶妙です。
ただ、先にも書いたように彼らはブラックメタル的スタイルがベースになっているので、ボーカルに関しては全編デス声。ゴシックメタルリスナーやデス声に対して免疫のあるリスナーなら問題ありませんが、このメランコリックさに惹かれた“メロウなHR/HMが好き”な方々には少々ハードルが高いかな……と。そこは僕がどういう言っても仕方ないので、あとは聴いて判断してもらうしかなさそうです。
僕自身はその単調なデスボイスを補って余りあるほどのバンドアンサンブル、楽曲のクオリティの高さに魅力を見出しているのもあって、最後まで楽しめました。最近のゴシックメタルバンドはクリーントーンを効果的に用いる歌唱スタイルも少なくないので、こういったオールドスタイルもたまに聴くには新鮮だなと思います。ただ、こればかりを聴くのは少々キツいですが。
ボーカルで変化をつけるタイプのバンドではないのは重々承知しているので、今後もこういったクオリティの高い楽曲と演奏で楽しませてくれたらな、と思います(そもそもこの評価が、TRIBULATIONというバンドを表すのにふさわしいものなのかは微妙ですが、こういう声もあるよということでひとつ)。
▼TRIBULATION『WHERE THE GLOOM BECOMES SOUND』
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