THE CROWN『ROYAL DESTROYER』(2021)
2021年3月12日にリリースされたTHE CROWNの11thアルバム。日本盤は海外に先駆け、3月10日に発売。
高評価を獲得した前作『COBRA SPEED VENOM』(2018年)から3年ぶりの新作。前作同様に往年の名作を手掛けてきたフレドリック・ノルドストローム(ARCH ENEMY、IN FLAMES、SOILWORKなど)を再度プロデューサーに迎え、さらにヘヴィ&アグレッシヴな1枚を完成させました。
僕自身、前作で久しぶりに彼らの音に触れたのですが、そのスピード感や攻めの姿勢に感銘を受けたことが非常に強く印象に残っておりましたが、今作は冒頭の「Baptized In Violence」からしてそのアベレージを軽く上回ってきます。1分少々というショートチューンに凝縮されたアグレッションこそすべて!と言わんばかりのオープニングから、6分以上にわたるスピードナンバー「Let The Hammering Begin!」へと続く構成はお見事と言いたくなるほどの気持ちよさ。同曲からはかつてのSLAYERを彷彿とさせるカラーも見え隠れし、要所要所でゾクゾクさせられます。
かと思えば、メロディックデスメタルバンドの側面が垣間見える「Motordeath」、冒頭のミドルヘヴィパートに「おおっ!?」と驚きつつも、途中からタガが外れたかのようなスピードで突進する「Ultra Faust」、パワフルなツインペダルがベースを固めるミドルヘヴィナンバー「Glorious Hades」、ストレートなスピードチューン「Full Metal Justice」など緩急に富んだ流れでまったく飽きさせません。
特に冒頭の「Baptized In Violence」や「Full Metal Justice」「Scandinavian Satan」(タイトルからして最高!)、「Devoid Of Light」のような1〜3分程度の短めなスピードナンバーからは、初期のスラッシュメタルやそれ以前のハードコアパンクの性急さも見出すことができるし、そこに90年代以降のメロデイックデスメタルの色合いが加わることで、楽曲のバリエーションに広がりが感じられる。また、ボーカルの表現力もさすがの一言で、単なるデス声の一言では済まされない、グロウルの中でも強弱や高低の付け方を変えることによって、一筋縄ではいかない個性を確立させているわけですから、恐れ入ります。
5分を超える長尺曲も4、5曲含まれていますが、そういった楽曲ではしっかりアレンジで“聴かせる”要素を増やしているし、何よりもギタープレイだけに耳を傾けてもその表現力の奥深さに圧倒される。だてに長いこと続けているわけじゃないんだなと実感させられます。
個人的にはメランコリックなテイストが強調されたラスト2曲「We Drift On」「Beyond The Frail」が、特にお気に入り。全体的にパワーゲームな内容だからこそ、こういった楽曲がより際立つわけですね。正直ジャケットを観たときはどうかと思いましたが(笑)、“外見”に騙されずぜひその“芯”に触れてみてください。
▼THE CROWN『ROYAL DESTROYER』
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