TURBULENCE『FRONTAL』(2021)
2021年3月12日にリリースされたTURBULENCEの2ndアルバム。
TURBULENCEはレバノンの首都ベイルートにて、2013年に結成されたプログレッシヴメタルバンド。地中海に面し、欧州とアラブの境界に位置することで宗教的かつ民族的な多様性を持つレバノンという土地柄、メタルはそこまでメジャーではないような印象を受けますが、彼らはDREAM THEATERから多大な影響を受けており、DREAM THEATERのカバーを中心に地元ベイルートで活動を重ね、2015年に1stアルバム『DISEQUILIBRIUM』を発表しています。
そのサウンドからはDREAM THEATERのみならず、ベイルートという場所も影響してから欧州のバンド(HAKENやTESSERACTなど)からの影響も感じられ、楽器隊のテクニカルさと緻密に作り込まれた展開の多い楽曲構成などで着実に注目を集める存在へと成長していきました。
現在のバンドメンバーが揃ったところで、続く2ndアルバムの制作がスタート。世界的規模の流通網を持つイタリアのFrontiers Recordsと新たに契約し、本作をもって日本を含む地域でワールドワイドデビューを果たすこととなりました。
オープニングを飾る「Inside The Gage」から11分超えの超大作で、このバンドのキモであるテクニカルさやヘヴィ度の高いプログレッシヴメタルぶりを提示。オマー・エル・ヘイジ(Vo)の歌唱スタイルはジェイムズ・ラブリエのそれとは異なる落ち着いたトーンでソウルフル、言ってしまえばそこまでメタルっぽくない。若干ジェント的でもある「Madness Unforeseen」などではギターも低音を強調した複弦ギターを使用しているものの、そこまでエッジを効かせていないので、DREAM THEATERから影響をうけつつもそこまで“まんま”にはなっていない。むしろ、先のHAKENあたりのほうが近いような印象を受けます。
「Dreamless」のように浮遊間の強い2分強の短い曲もあるけど、それ以外はどことなくダンサブルさも感じられる新世代プログレメタル「A Place I Go To Hide」や、スリリングさと優雅さが交互に訪れる「Crowbar Case」、アルバムラストに相応しいドラマチックな「Perpetuity」など、とにかく8〜10分前後の大作ばかり。ボーカルのトーンが良い方向に作用して、プログレメタルにありがちなクドさが抑え気味に感じられるのは、本作の良い面ではないでしょうか。全8曲で60分をゆうに超える長編アルバムですが、そのテクニカルさとモダンな味付けが施されたアレンジ、ボーカルのソウルフルな歌唱法によって最後まで楽しめるはずです。
日本盤にはここに、15分にもおよぶDREAM THEATER「In The Name Of God」のカバーを追加収録。これを加えると、日本盤のみトータル9曲で80分超えの超大作となってしまいます。このカバーは今のところ日本盤CDでしか聴くことができない代物なので、ストリーミングやデジタル購入ではなく国内盤を購入して確かめてみることをオススメします。意外と良いんですよ、このカバーが。しっかり自分たちのものにしてしまっていて、さすがバンド初期にカバーで鍛えただけありますね。
▼TURBULENCE『FRONTAL』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3)