OCTAVISION『COEXIST』(2021)
2021年3月24日にCDリリースされたOCTAVISIONの1stアルバム。
OCTAVISIONはギタリスト&コンポーザーとして活躍するホヴァク・アラヴェルディアンを中心とした、プログレッシヴメタル・プロジェクト。2016年に動画配信サイトに公開された、9分半にもおよぶインスト大作「Three Lives」が一部界隈で注目を集めました。同曲にはジャズ/フュージョン界で知られる超絶ベーシスト、ヴィクター・ウッテンが参加していたことでも反響を呼び、このプロジェクトの全貌を求める声は日々高まっていきました。
そして、2020年12月には各種配信サイトにて本アルバムをデジタルリリース。これに続き、日本のみで本作のフィジカルリリースが今年3月に実現したわけです。
このアルバムにはホヴァクやヴィクターのほか、MR. BIGやSONS OF APOLLOなどで活躍するビリー・シーン(B)、Roman Lomtadze(Dr)、Murzo(Key)、Avo Margaryan(Blul/アルメニアの伝統的なフルート)といったプレイヤーたちが参加。さらに、タイトルトラック「Coexist」と「Apocalyptus」にはジェフ・スコット・ソート(Vo/SONS OF APOLLO、SOTOなど)もゲスト参加しております。
全体的に各プレイヤーの技巧的プレイを大々的にフィーチャーした、クラシカルな要素とモダンヘヴィネス以降のヘヴィメタルを融合させたサウンドが特徴。ベーシックな部分は“DREAM THEATER以降”と言えますが、随所に仰々しいクワイアなども取り入れられている。しかし、このプロジェクトの魅力はそこというよりは、むしろアルメニアの伝統的な管楽器Blulや中東のミステリアスな旋律を織り交ぜた「Mindwar」や「Three Lives」のような楽曲にこそ独特の個性が表れている。そういった旋律をホヴァクのテクニカルなソロプレイで、あるいはキーボードとのユニゾンプレイで表現されており、そういったところで独自性を強くアピールしています。
さらに、デジタルエフェクトも効果的に用いられており、「Mindwar」のような楽曲では2000年代以降のモダンテイストも伝わってくる。そういったところでも異色さや独特の個性も、しっかり醸し出せているのではないでしょうか。
それにしても、Blulをフィーチャーしたプログレッシヴメタルというのは、なんとも新しい。フルートなどを取り入れた旧世代のプログレは過去にも存在しましたが、音圧の高いメタリックなサウンドにこうした管楽器が取り込まれるのは、なんとも不思議なものが感じられます。一方で、ジェフのボーカルをフィーチャーした2曲は彼のパワフルな歌声と相まって、一聴した限りではSONS OF APOLLOを彷彿とさせるものがあります(こればかりは仕方ないですね)。ただ、メロディの運びや旋律は確実に差別化ができているので、聴いているうちに別モノだと理解できる。特に10分にもおよぶ超大作「Apocalyptus」は、その構成美/構築美含め圧倒的な個性を放っています。
とはいえ、やはりこのプロジェクトの魅力はインストゥルメンタルパートでの多彩さ/テクニカルさ/非凡さにあるので、歌モノはおまけといったところかな。全7曲で54分というボリュームは、この手の作品としては比較的程よいものなので、初心者でも意外と楽しめるのではないでしょうか。DREAM THEATERやSONS OF APOLLOを筆頭に、昨今のプログミュージック/プログレッシヴメタルに多少なりとも興味があるリスナーなら、触れておいて損はしない1枚です。
▼OCTAVISION『COEXIST』
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