A.A. WILLIAMS『SONGS FROM ISOLATION』(2021)
2021年3月19日にリリースされたA.A. ウィリアムズのカバーアルバム(通算2作目)。日本盤(輸入盤国内仕様)は3月24日発売予定。
A.A. ウィリアムズはロンドン出身の女性シンガーソングライターで、昨年7月に1stアルバム『FOREVER BLUE』をリリースしたばかり。そのデビュー作から1年経たずして発表された本作は2020年3月、イギリス全土がロックダウンされたことを受けてスタートしたプロジェクトで、ファンが選んだロック/ポップスの名曲群をシンプルなアレンジでカバーするというもの。ロンドン北部にある彼女に自宅でレコーディングされた楽曲その大半は、ピアノ弾き語りで表現された、まさに“孤独の歌(=SONGS FROM ISOLATION)”というタイトルに相応しい仕上がりです。
カバーされたのは、60年代から2000年代まで幅広いセレクト/ジャンルの楽曲たち(カッコ内は原曲リリース年)。
THE CURE「Lovesong」(1989年)
PIXIES「Where Is My Mind?」(1988年)
ゴードン・ライトフット「If You Could Read My Mind」(1970年)
RADIOHEAD「Creep」(1993年)
THE MOODY BLUES「Nights In White Satin」(1967年)
DEFTONES「Be Quiet And Drive (Far Away)」(1997年)
NINE INCH NAILS「Every Day Is Exactly The Same」(2005年)
NICK CAVE & THE BAD SEEDS「Into My Arms」(1997年)
THE SMASHING PUMPKINS「Porcelina Of The Vast Oceans」(1995年)
ここで取り上げられた楽曲の大半はヘヴィなギターサウンドを軸にしたロックナンバーですが、A.A. ウィリアムズは無駄をすべて削ぎ落としたアレンジを施すことで、メロディの良質さを再提示。かつ、ダークでゴシックテイストの強い、落ち着いたトーンで歌うことで全体のトーンを統一することに成功しています。基本的にはピアノのみをバックに一発録り的な作風ですが、中には「Be Quiet And Drive (Far Away)」のように若干歪んだギターに多重コーラスを被せたものもあり、こういった工夫がダークでダウナーなアルバムにおいて適度なスパイスとなっています。
また、彼女のボーカルも曲によって強弱がしっかりつけられており、「Creep」ではトム・ヨークとはまた違った高揚感が感じられるし、「Every Day Is Exactly The Same」はトレント・レズナーとも異なる気だるさ&セクシーさが伝わる仕上がり。特にピアノアレンジが施された後者は、「NINE INCH NAILSもこのバージョンで演奏すればいいのに」という親和性すら感じられる。非常にマッチしているんですよね。
そんな中で、「If You Could Read My Mind」や「Nights In White Satin」のような若いロックファンがあまり知らない楽曲(若くはないけど、自分も含む)が非常に新鮮に響きます。本作の中で原曲をまったく知らなかった2曲ですが、これらの楽曲と出会わせてもらえたことは、本作における大きな収穫と言えます。
本作での彼女のボーカルパフォーマンスやアレンジが気に入った人なら、デビュー作の『FOREVER BLUE』も間違いなく気に入るはず。個人的にも去年よく聴いたアルバムのひとつなので、今回のカバー集を機にさらに多くのリスナーに見つかってほしいアーティストのひとりです。
▼A.A. WILLIAMS『SONGS FROM ISOLATION』
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