EYEHATEGOD『A HISTORY OF NOMADIC BEHAVIOR』(2021)
2021年3月12日にリリースされたEYEHATEGODの6thアルバム。日本盤は3月10日に先行発売。
セルフタイトルとなった前作『EYEHATEGOD』(2014年)制作直後にジョーイ・ラケイズ(Dr)が急逝。また、2018年にはリードギタリストのブライアン・パットンが脱退し、シングルギターの4ピースバンドとなってしまったEYEHATEGODでしたが、ここに約7年ぶりの新作を完成させました。
80年代末から活動しているバンドですが、オリジナル作は30年強の活動で6枚のみ。僕自身が彼らの作品をよく耳にしていたのも90年代前半、それこそPANTERAやDOWNからの流れだったので、今でいうところのスラッジというよりはヘヴィでドゥーミーなヘヴィメタルという感覚で触れていたと記憶しています。
実際、この新作で20数年ぶりに彼らの新作に触れてみたのですが、そういったヘヴィメタル的なテイストよりもハードコアパンク経由のスラッジという印象を強く受けました。そういったテイストはもちろん過去の作品からも感じ取れていましたが、シングルギター編成になったことも影響してか、ひとつの塊として音を表現する方向性がどこかハードコア的だなと感じたんです。
スラッジであることは間違いないのですが、もはやヘヴィメタルとは別次元の音だなあと。もちろん、これは褒め言葉ですよ。僕はこれを聴いてBLACK SABBATH云々という印象は持ちませんでしたし、それよりは80年代後半からアメリカに根付くオルタナティヴロックの流れにあるんだろうなと感じられた。かつ、そこにアヴァンギャルドな側面を加えた結果、要所要所で90年代前半のモダンヘヴィネス(PANTERAというよりはHELMETあたり)との共通点も見つけられる。そういう音が2021年に今、このアルバムでも健在という意味では、良くも悪くも「いつもどおり」と捉えることができるかもしれません(近作を聴いていないのに生意気ですが)。
あと、90年代の諸作品では“怒り”をパワーにしつつ、それらをストレートに音として表現していた印象がありましたが、今作ではその怒りにベールがかかっているようにも受け取れました。怒りの矛先が見えないというか、いろんな方向に向かって闇雲に吠えているというか。それが(良い方向で受け取れば)どこかカオスな空気を作り上げていると僕は感じたのですが、いかがでしょう。
リフメイカーとしてのジミー・バウワー(G)の仕事ぶりは相変わらず素晴らしいものがありますし、マイク・ウィリアムズ(Vo)の凄みの効いた叫びもカッコいいったらありゃしない。だけど、他者を圧倒するような“特別なもの”が感じられないのも気になるところ。そのもどかしさが、まさに上記の“怒りにベールがかかっている”という言葉にもつながるような。
でも、もしかしたらこのバンドはこれくらいのさじ加減がちょうどいいのかもしれませんね。何度かリピートしているうちに、そうポジティブに受け取れるようになりました。そんな、クセになる1枚。可能なら、ばかデカい音で聴いてもらいたいです。
▼EYEHATEGOD『A HISTORY OF NOMADIC BEHAVIOR』
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