DAMON ALBARN『THE NEARER THE FOUNTAIN, MORE PURE THE STREAM FLOWS』(2021)
2021年11月12日にリリースされたデーモン・アルバーンの2ndソロアルバム(オペラ『DR DEE: AN ENGLISH OPERA』のサウンドトラックとして制作された2012年の『DR DEE』を含めれば3作目)。
BLUR、GORILLAZのフロントマンとして知られるデーモンですが、ソロ作としては『EVERYBODY ROBOTS』(2014年)以来7年半ぶり。バンド時代から長らく在籍したParlophone Recordsを離れ、新たにインディーズレーベルのTransgressive Recordsからの第1弾作品として制作されました。
もともと本作はアイスランドの風景にインスパイアされたオーケストラ作品として制作予定でしたが、昨年のロックダウンを受けて脆弱性、喪失、出現、再生のテーマをさらに探求する11のトラックへと各曲を展開。結果、「自らをストーリーテラーとする曲のパノラマコレクションを完成させた」(以上、プレスリリースより)とのことです。
それもあってか、全体を覆う空気は若干重苦しいものがあり、どことなくBLURの90年代後半〜2000年代のオルタナ路線にも通ずるものがあるのかなと。ただ、ここではもっと自由度の高い、ロックに限定されないピュアな音楽が展開されているようにも感じます。ベースとなる楽曲がもともとオーケストラを意識したものだったこともあり、その片鱗も随所から伝わりますしね。
デーモン自身、本作の制作に対して「このレコードを制作している時、僕は自分自身の暗い旅(dark journey)に出ていた。そして、穢れがない源(pure source)がまだ存在するかもしれない、と信じるようになった」と語っていますが、この発言がすべてではないでしょうか。闇の中にも一筋の光が見つけられ、荘厳な中にも柔らかさや軽やかさが感じられる。この緩急の付け方、相反する要素の結合こそがデーモンの持ち味であり、そういった意味では本作もこれまでのデーモンらしさに満ち溢れた1枚と判断することもできます。
ただ、先にも書いたように、本作を語る上で2020年からの世の中の出来事は避けては通れないものであり、その影響が質感や空気感に多少なりとも影響を与えている。その上で無理をするのではなく、今できることを自然体で示した結果が本作なんでしょうね。
BLURというホームを通じてアウトプットする機会を失った今、バンドの4分の1としてBLUR的なこと、BLURでやってもおかしくなかったことを交えながらソロ活動をすることは正解だと思います。もちろん、ソロはBLURではないので、本作を『THE MAGIC WHIP』(2015年)の続きとして受け取るのはちょっと違う。だけど、少なからずつながるポイントはいくつも見つけられる。そういう点ではGORILLAZ視点で語るよりも、むしろBLUR視点で進めるほうがエラーは少ないのかなという気がしています。
まあなんにせよ、後期BLURが好きな方、デーモンがこれまで着手してきたソロワークス/コラボレーションに多少なりとも興味がある方なら間違いなく引っかかる作品だと思います。『EVERYBODY ROBOTS』はもちろん好きだけど、今の自身の感性に引っかかるという点では、本作は非常にど真ん中の1枚です。
▼DAMON ALBARN『THE NEARER THE FOUNTAIN, MORE PURE THE STREAM FLOWS』
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