'68『GIVE ONE TAKE ONE』(2021)
2021年3月26日にリリースされた'68(SIXTY-EIGHT)の3rdアルバム。日本盤は同年3月31日発売。
'68は2013年にアメリカ・ジョージア州アトランタで結成されたノイズ・パンク・デュオ。メタルコア/ハードコアバンドのNORMA JEAN(1997〜2002年)やTHE CHARIOT(2003〜2013年)で活躍したジョシュ・スコギン(Vo, G)の新たなバンドということで、一部では早くからかなり注目されていたようですが、ここで奏でられているサウンド&バンドスタイルはTHE WHITE STRIPESや、イギリスのROYAL BLOODあたりにも通ずるミニマムスタイルのハードなパンクロック。その差に驚いたという方も少なくないのかもしれません。
新たなドラマーとしてニッコー・ヤマダ(日系の方かしら?)を迎えて制作した本作は、プロデューサーにニック・ラスクリネクツ(ALICE IN CHAINS、CODE ORANGE、DEFTONESなど)を起用。過去2作を聴いていないので比較で語ることはできませんが、今作を聴く限りではベースレスの2ピースバンドとは思えないほど低音が効いており、ヘヴィなバンドアンサンブルを存分に楽しめるはずです。
ガレージパンクとサイケデリックロックをミックスしたような楽曲群は、意外にもどれもポップでキャッチーなものばかり。オープニングを飾る「The Knife, The Knife, The Knife」は冒頭こそTHE JON SPENCER BLUES EXPLOSIONを彷彿とさせますが、そのダウナーでヘヴィなギターリフ&ビートからはパンクというよりはハードロック的な香りが感じられます。うん、これは嫌いじゃないぞ……と感じたHR/HMリスナーも少なくないはずです。
続く「Bad Bite」のビート感はRAGE AGAINST THE MACHINE以降……ヒップホップを通過したガレージロックといったところでしょうか。かと思うと、「Nickels And Diamonds」の冒頭ではTHE STOOGES「I Wanna Be Your Dog」を引用してハッとさせる(もちろん、すぐに別の曲調へとシフトするのですが)。シンプルだけどグッとくるギターリフと、そのギターと一丸となってグルーヴを生み出すヘヴィだけどしなやかなドラムのアンサンブルがとにかく絶妙で、カッコいいったらありゃしない。「Lovers In Depth」あたりの緊張感あふれるプレイも、オルタナ経由のハードロックを愛聴するリスナーなら絶対に気に入ることでしょう。で、気付いたらラストを飾るサイケな「The Storm, The Storm, The Storm」にまで到達している……そんな中毒性の高い1枚だと断言できます。
細かなジャンル分けとしてはHR/HMの範疇ではないかもしれません。が、こういうバンドにもスッと入っていけるのがグランジ/オルタナを素直に経由できたHR/HMリスナーの強み。世が世なら、今年の夏はフジロックあたりに出演して話題をかっさらっていたはず。そんな想像も簡単にできてしまう、強烈なロックンロール/ハードロックアルバムです(と、あえて言わせてください)。
▼'68『GIVE ONE TAKE ONE』
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